InsurTechの案件で押さえる保険システムのデータ基盤とAI活用

📘 この記事でわかること
- 保険会社がInsurTechに取り組む背景と、経営計画に位置づける社が実態把握対象の7割弱にのぼること
- 散らばる部署データを一つに束ねる統合データ基盤の構築と、その先で進むAI-OCRやAPI連携などの実装
- 各社が抱える専門人材確保の課題と、リモートのフリーランス案件としてどう関わっていけるかという道筋
保険業界でデジタル化とAI活用が進み、InsurTech関連の案件が増えています。金融庁が生命保険会社24社を対象に行った実態把握でも、データ活用や専門人材の確保に動く姿が確認されました1。紙の帳票や部署ごとに散らばるデータを、どう扱いやすい形に変えていくか。積み上げてきたエンジニアリングの経験を、保険という領域でどう活かせるかを整理します。
1. なぜいま保険×IT・InsurTechの案件が増えているのか
デジタル化の広がりが、保険会社の経営課題になっている
保険会社の業務は、契約・査定・給付など、扱うデータの量も種類も多い分野です。紙とシステムが混在してきた歴史の長い会社もあります。
金融庁は2024事務年度、生命保険会社24社を対象にInsurTech及びAIの活用に関する実態把握を行いました1。その結果、InsurTechの位置づけを経営計画等で明確化している社は、対象社の7割弱にのぼりました2。
経営の言葉としてInsurTechが語られる段階に入ったということは、外部の技術者に委託できる実装の量も、これから増えていくと捉えられます。
AI活用への関心は保険業界全体に広がっている
保険に限らず、金融業界全体でデータを扱える技術者への関心が高まっています。契約や事故対応、給付など、保険会社が持つデータは特有の構造を持つため、業界の理解と技術力の両方が生きる領域だと言えます。
経営計画にInsurTechが位置づけられるということは、単発のシステム改修ではなく、継続的な投資として実装が積み重なっていくことを意味します。腰を据えて関わりを持てる案件が増えていく流れだと捉えられます。
常駐で一つの現場に張り付くことよりも、複数の現場を渡り歩きながら実装の型を磨いてきた経験のほうが、経営方針が定まりきっていないこの段階では強みになります。基盤づくりの初期から関わり、会社ごとの事情に合わせて設計を組み立てられる柔軟さが求められているためです。
経営方針が固まりきっていない段階は、裏を返せば型が決まりきっていない段階でもあります。過去にいくつもの現場で異なる事情に合わせて設計を組み立ててきた経験は、こうした段階でこそ発揮しやすいものです。
出典:金融庁「2025年 保険モニタリングレポート」(2025年7月)をもとに作成
7割弱という水準は、裏を返せば、まだ体制を整えている途中の会社が一定数あるということでもあります2。仕組みづくりの初期段階から関われる余地が、まだ残っています。
散らばるデータをどう扱うかという次の課題は、経営方針だけでは片づきません。次の章では、各社が実際にどんな基盤づくりを進めているかを見ていきます。
2. 散らばるデータを束ねる統合データ基盤という土台
顧客単位でデータを集約する取組みが広がっている
経営計画にInsurTechが位置づけられても、それだけで現場のデータが扱いやすくなるわけではありません。実際に手を動かして土台をつくる工程が、その先に控えています。
契約情報は契約管理システムに、事故対応の記録は別のシステムに、というように、部署ごとにデータが分かれて管理されている会社があります。
金融庁の実態把握では、各部署が所有するデータを顧客単位で集約・活用する統合データ基盤の構築など、データマネジメントに関する新たな取組みが確認されました3。
顧客という単位でデータをつなぎ直す作業は、既存システムの理解とデータ設計の両方が求められる仕事です。断片を一つの基盤にまとめてきた経験は、ここでそのまま活きます。
個々のシステムを深く知っていることよりも、複数のシステムをまたいでデータの意味をそろえられることのほうが、この土台づくりでは差になります。
統合データ基盤づくりに関わる業務の類型
統合データ基盤づくりは、設計から運用まで複数の工程に分かれています。次の表は、それぞれの工程で主にどんな作業が発生し、どんな経験が活きやすいかを整理したものです。工程によってリモートでの進めやすさも変わるため、自分の経験がどこに当てはまるかを確かめる材料にしてください。
| 業務の類型 | 主な作業内容 | 求められる経験 | リモート適性 |
|---|---|---|---|
| データ連携の設計 | 各部署のシステムからデータを集約する連携方式の設計 | 複数システムの仕様理解、データモデリングの経験 | 高い |
| データクレンジング | 表記のゆれや欠損値を整え、扱いやすい形に補正する | データ品質管理、業務データの背景理解 | 高い |
| 基盤の構築・運用 | 集約したデータを蓄積・提供する基盤の構築と保守 | クラウド基盤やパイプライン構築の経験 | 中〜高い |
| 活用側との橋渡し | 集約したデータを分析・営業部門が使える形に整える | 業務要件のヒアリング、資料化の経験 | 中程度 |
設計から運用まで、一連の工程を経験してきた技術者ほど、複数の工程を横断して関われる可能性が広がります。一つの工程しか知らない場合よりも、隣の工程まで見渡せることのほうが、この土台づくりでは頼りにされます。
長く運用されてきたシステムほど、仕様書に残っていない事情や、担当者の記憶だけに頼っている部分が出てきます。そうした背景を丁寧にヒアリングしながら設計を進めてきた経験は、統合データ基盤づくりでもそのまま活きる力です。
既存のメンバーだけでは手が回らない部分を、外部の技術者が期間を区切って引き受ける形も広がっています。クライアントと協議しながら、必要な範囲を見極めて進めるやり方です。
図の作成:Remogu編集部。金融庁「2025年 保険モニタリングレポート」を参考に、データ統合の取組みを整理したもので、統計データではありません
データ基盤づくりの経験を活かせるリモート案件をチェックする →
基盤ができても、そこから先の実装が伴わなければデータは眠ったままです。次の章では、各社が進める具体的な実装の中身を見ていきます。
3. 各社が進める実装 AI-OCR・データ分析・API連携
書類のデジタル化から分析、外部連携まで実装の幅が広がっている
保険の実務は今も、紙の書類とともに進む場面が残っています。申込書や診断書を一件ずつ確認する作業は、時間もかかります。
書類の情報を読み取って構造化する仕組みの活用や、集めたデータを分析に回す取組みは、統合データ基盤づくりと並行して進められています。金融庁の実態把握でも、データマネジメントに関する新たな取組みが確認されています3。
社外の企業とデータをやり取りするために、個別にAPIを構築する取組みも見られました4。業界共通の仕組みとしてではなく、まずは会社ごとの実装として進んでいる段階です。
外部と連携するAPIを設計する際は、やり取りする情報の重要性を踏まえたセキュリティ要件の整理も欠かせません。堅牢な設計を積み重ねてきた経験は、この分野でも信頼を得やすい要素になります。
書類を読み取る仕組みと、そのデータを意味のある分析につなげる仕組みは、別々に作るのではなく、つながりを意識して設計する必要があります。
保険業で進むデータ活用実装の類型
書類のデジタル化から分析、外部連携まで、実装の内容は工程ごとに性質が異なります。次の表は、代表的な実装の類型と、それぞれで求められる経験、リモートでの進めやすさを整理したものです。自分がどの工程に強みを持っているかを確かめる目安にしてください。
| 実装の類型 | 主な作業内容 | 求められる経験 | リモート適性 |
|---|---|---|---|
| 書類のデジタル化(AI-OCR活用) | 紙の申込書・診断書等を読み取り構造化する仕組みの実装 | 画像認識やOCRエンジンの実装・チューニング経験 | 中〜高い |
| データ分析基盤の構築 | 集約データを分析しやすい形に整え、可視化や集計の仕組みを作る | データ分析基盤の設計、BIツールの実装経験 | 高い |
| 外部連携API開発 | 提携企業とのデータ連携用APIの設計・実装 | API設計、セキュリティ要件を踏まえた実装経験 | 中程度 |
| 運用・保守 | 稼働後のシステムの監視、不具合対応、機能改善 | 既存システムの保守運用経験 | 高い |
一つの工程だけでなく、隣り合う工程の事情も理解している技術者は、実装同士のつながりを設計に反映しやすく、頼りにされやすい立場になります。
読み取りの精度だけを追いかけるよりも、読み取った後のデータがどう使われるかまで見据えて設計することのほうが、この領域では成果につながります。分析や連携の担当者が扱いやすい形を意識できるかどうかが、実装の質を分ける点です。
図の作成:Remogu編集部。金融庁「2025年 保険モニタリングレポート」を参考に、実装の流れを整理したもので、統計データではありません
実装が広がるほど、次に表面化するのが「誰が担うか」という壁です。次の章では、各社が共通して抱える課題を見ていきます。
4. 保険×ITに残る課題 オープンAPIの共通化と専門人材の確保
会社ごとの実装にとどまり、業界共通の仕組みには届いていない
社外連携のためのAPIは会社ごとに作られています。ただ、業界レベルで共通化されたオープンAPIについては、将来的な検討課題という意見が見られました4。
共通の仕組みがまだ無い今の段階は、各社が独自の実装を選べる自由度がある段階とも言えます。設計の裁量が大きいということです。
決まったフォーマットに沿って作業することよりも、会社ごとの事情に合わせて設計を選べることのほうが、今のフェーズでは求められています。
将来的に業界共通の仕組みができたとしても、そこに至るまでの個別実装を積み重ねてきた経験は無駄になりません。むしろ、複数の会社の事情を見比べてきた技術者ほど、共通化の議論でも意見を求められやすくなります。
専門人材の確保そのものが課題になっている
金融庁の実態把握では、InsurTechやAIを活用する上でリスク管理を含むデジタル分野に知見を持つ専門人材の確保が課題だと、各社が認識していることが分かりました5。
IT・デジタル人材やデータサイエンティストの確保に動き出した社も見られています5。課題として名指しされているのは、まさに外部の技術者が力を発揮できる領域だということです。
課題が課題のまま放置されているわけではなく、各社がそれぞれのやり方で向き合っている段階です。決まった正解がまだ無いからこそ、経験に基づいた提案ができる技術者の価値が高まります。
社内だけで専門人材を確保しようとするよりも、必要な期間だけ外部の技術者と組む形のほうが、変化の速い分野では現実的な選択肢になりやすいところです。課題として名指しされている領域だからこそ、参画できる余地も具体的に見えてきます。
図の作成:Remogu編集部。金融庁「2025年 保険モニタリングレポート」を参考に、残る課題を整理したもので、統計データではありません
課題が明確になっている領域ほど、外部から関わる余地も見えやすくなります。次の章では、リモートやフリーランスの案件としてどう関わっていけるかを具体的に見ていきます。
5. リモート・フリーランス案件でどう関わるか 実装・データ・見極め
テレマティクス保険など、データスキルが直接活きる領域がある
テレマティクス自動車保険では、車両の運行情報等のデータを取得・保存・分析・管理する高度なシステム構築に加えて、データのクレンジングや補正処理といったデジタルスキルも必要になります6。
分析だけでなく、データを整える工程にも技術力が求められる領域だということです。地道な補正処理の経験こそ、こうした案件では評価されやすいところです。
目立つ分析結果だけを見せることよりも、その手前でデータの欠けや誤りをどう補正したかを説明できることのほうが、テレマティクスのような領域では信頼につながります。地味に見える工程ほど、実は差がつきやすいところです。
車両から絶えず送られてくる運行情報を、保存・分析・管理まで一貫して支えるシステムづくりは、規模も長さもある仕事です6。腰を据えて向き合ってきたシステム構築の経験が、そのまま評価につながる領域だと言えます。
関わり方を見極める3つの視点
統合データ基盤・実装・課題という三つの切り口を踏まえると、リモートで関わりやすい工程が見えてきます。どこか一つの経験だけでも、案件を探す入口にはなります。
全ての工程に精通している必要はありません。むしろ、自分の得意な工程を一つ決めて、そこから隣接する工程へ経験を広げていくほうが、着実に関われる範囲を増やしていけます。
得意な工程がまだはっきりしないうちは、これまでのキャリアで一番長く向き合ってきた作業を起点にしてみてください。そこから見える案件の幅を確かめることが、最初の一歩になります。
関わりやすい工程と見極めのポイント
ここまで見てきた統合データ基盤・実装・残る課題を踏まえ、リモートで関わりやすい工程と、事前に確認しておきたいことを整理しました。自分の経験に近い工程を見つけたら、まずはどんな案件があるか眺めてみることをおすすめします。
| 関わりやすい工程 | 活きる経験 | 確認しておきたいこと |
|---|---|---|
| データ連携・基盤構築 | 複数システムのデータ統合、クラウド基盤構築の経験 | 既存システムの仕様がどこまで公開されるか |
| AI-OCR・分析の実装 | 画像認識やデータ分析基盤の実装経験 | 対象となる書類やデータの種類、精度要件 |
| API開発・外部連携 | API設計、セキュリティを踏まえた実装経験 | 連携先の仕様の固まり具合、更新頻度 |
| 運用・保守 | 既存システムの保守運用経験 | 対応の時間帯や範囲、クライアントとの連携方法 |
データ基盤や実装の経験を活かせる案件の傾向をチェックする →
設計の裁量が大きい今の段階だからこそ、これまでのキャリアで積み上げた強みをどこに当てはめるかを、自分で選びやすくなっています。工程ごとの適性が見えてきたところで、ここまでの内容を整理します。
6. まとめ
保険業界では、経営計画にInsurTechを位置づける会社が増えています2。そこに、散らばったデータを束ねる基盤づくりが重なって進んでいます3。
書類のデジタル化や分析、外部連携といった実装は会社ごとに広がっています。一方で、業界共通の仕組みづくりは検討課題にとどまり4、専門人材の確保も課題として残っています5。
課題が残っているということは、裏を返せば、決まりきったやり方をなぞるだけでは終わらない仕事が残っているということでもあります。場所に縛られず、これまで培ってきた設計力やデータを扱う力をどこで発揮するかを、自分で選べる働き方に近づけます。
統合データ基盤、AI-OCRやデータ分析、API連携、そして残る課題。どの切り口から見ても、外部の技術者が関わる余地は具体的に見えてきます。抽象的な将来性の話ではなく、今すぐ確かめられる選択肢として捉えてみてください。
積み上げてきた実装やデータ設計の経験は、こうした課題が残る領域だからこそ役立ちます。まずは自分の経験に近い工程を確かめ、リモートで関われる案件があるかを見てみましょう。
7. よくある質問
保険の知識がなくても関われますか
求められるのは主にデータや実装の技術力です。統合データ基盤の構築やデータの構造化は、業界知識よりもシステム設計やデータ処理の経験が土台になります。保険特有の用語や業務の流れは、案件を進めながら少しずつ理解を深めていく形で対応できます。業界特有のルールは、案件の初期にクライアントと確認しながら進めれば十分に対応できます。
どんなスキルが活きますか
複数システムを横断するデータ連携の設計や、データクレンジングを含むデータ処理の経験が活きやすい領域です3。社外連携のためのAPI設計・実装の経験も評価されやすいところです4。既存システムの制約を踏まえたうえで設計を提案できる力も、あわせて評価されやすいポイントです。
データ基盤の経験は活きますか
各部署に散らばるデータを顧客単位で集約・活用する統合データ基盤の構築は、新たな取組みとして進められている分野です3。複数システムをまたいでデータを設計してきた経験は、そのままこの領域で求められる力になります。部署をまたいだデータの意味の違いを理解し、整理し直せる視点が特に頼りにされます。
AIやOCRの実装経験は評価されますか
書類のデジタル化や分析に関わる実装は、データマネジメントの取組みの一部として位置づけられています3。画像認識やOCRエンジンの実装・チューニングの経験は、この領域で活かせる専門性です。精度の検証や例外処理の設計まで含めて担える経験は、特に評価につながりやすいところです。
案件はフルリモートでもできますか
Remoguが扱う案件の90%以上がフルリモート可能です7。データ連携や分析、API開発といった工程は、常駐を前提としない形で進めやすい領域です。案件ごとに求められる稼働のタイミングは異なるため、条件は登録後に一つずつ確かめていく形になります。まずは登録して、自分の経験に合う条件を確かめてみましょう。
リモートワーク案件をお探しの方へ
Remoguは、株式会社LASSICが運営するITエンジニア・デザイナー専門のリモートワーク案件紹介サービスです。フルリモート・ハイブリッドの案件から、スキルに合うものを探せます。
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※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 金融庁「2025年 保険モニタリングレポート」(2025年7月)
*2 金融庁「2025年 保険モニタリングレポート」(2025年7月)
*3 金融庁「2025年 保険モニタリングレポート」(2025年7月)
*4 金融庁「2025年 保険モニタリングレポート」(2025年7月)
*5 金融庁「2025年 保険モニタリングレポート」(2025年7月)
*6 金融庁「2025年 保険モニタリングレポート」(2025年7月)
*7 Remogu(株式会社LASSIC運営)公開情報:扱う案件の90%以上がフルリモート可能