IaCの案件|権限を持つ人数が、そのまま費用になります

📘 この記事でわかること
- 提供側がCSPごとに用意するベースラインのテンプレートと、その上に自分で足す作業の境目
- 管理者権限を持つ人数がハードウェアMFAデバイスの費用に直結する仕組みと、権限設計で意識する点
- 環境払い出しから完了後確認、利用終了までの決まった順序と、運用要件に照らして検証する視点
IaCの案件では、コードを書く技術力そのものが問われると考えられがちです。ただし公的な基盤に関わる案件を見ると、CSPごとに用意されたベースラインのテンプレートがすでに存在します1。つまり白紙から設計する前提ではありません。作業の順序や完了後の確認方法まで先に決まっており、権限をどう設計するかが見積りの規模にそのまま関わってきます4。この記事では、公開されている手順書から、IaCの案件で何が既定として決まっているかを読み取っていきます。
1. 公的な基盤のIaCは、白紙から書く仕事ではありません
案件情報を見比べていると、IaCという言葉から連想する作業の幅が、案件ごとにずいぶん違うことに気づきます。ゼロから構成を設計する案件がある一方で、すでに決まった土台の上に積み重ねていく案件もあります。この違いを見分ける手がかりとして、公開されている手順書を読むという方法があります。
ここで取り上げるのは、デジタル庁が示す地方公共団体向けの手順書1です。この手順書がそのまま個々の案件に当てはまるわけではありません。ただし、公的な基盤の構築でどこまでが提供側の既定になっているかを読み取ることは、IaCの案件に共通する構造を推測する材料になります。ここで扱うのは一般的な心得ではなく、手順書に書かれている具体的な取り決めです。案件ごとに詳細は異なっても、「何が既定で何を自分が足すのか」という見方そのものは、他のIaCの案件を読むときにも使えます。
提供側が用意するベースラインと、自分で足す部分の境目
この手順書によると、ガバメントクラウドでは安全な利用を目的として、CSP(クラウドサービス提供事業者)ごとにベースラインのセキュリティ設定等を適用するテンプレートが用意されており、払い出されたクラウド環境に対して地方公共団体の担当者またはガバメントクラウド運用管理補助者がテンプレートを適用すると整理されています1。つまり、環境の初期状態はすでに提供側が決めており、そこに何を足すかが実際の作業になります。
加えて、ガバメントクラウドで用意するCI/CD環境は、インフラ構成もコードで管理するIaCを実現するために使用する環境であると用語集で説明されています3。IaCという考え方自体が、公的な基盤の設計にあらかじめ組み込まれていることが分かります。どの言語で書くかという関心よりも、何が既定で何を自分が足すのかを見極める姿勢のほうが、この種の案件では差になります。
公開されている手順書を読む実利は、案件情報の行間を埋められる点にあります。「クラウド環境の構築・運用」という短い説明だけでは、どこからが提供側の既定で、どこからが自分の裁量なのかは見えてきません。手順書のような一次情報に当たることで、少なくとも公的な基盤ではこの境目がどう引かれているかを具体的に確かめられます。
図の作成:Remogu編集部。手順書の記述をもとに整理したもので、統計データではありません
次に、この既定のテンプレートが具体的にどのような形で提供されているかを見ていきます。
2. 既定のテンプレートは必須とサンプルに分かれています
テンプレート適用の作業内容を比べる
テンプレートの適用は、必須適用テンプレートのみを適用する場合と、サンプルテンプレートのカスタマイズも実施する場合とで作業の見通しが変わると整理されています2。前者は決められた設定をそのまま当てはめる作業が中心になり、後者は要件に合わせて内容を調整する判断が加わります。
この違いは、案件に参画してから最初に何を確かめるべきかにも関わります。必須適用テンプレートのみで進む案件では、既定の設定を尊重しながら払い出された環境を整える作業が中心になります。サンプルテンプレートのカスタマイズも実施する案件では、どこまで手を加えるかを判断する場面が増え、担当する範囲の幅も変わってきます。
| 区分 | 作業の内容 | 作業の見通し |
|---|---|---|
| 必須適用テンプレートのみ | ベースラインのセキュリティ設定等をそのまま適用する | 決められた設定を当てはめる作業が中心になる |
| サンプルテンプレートのカスタマイズも実施 | 用意されたサンプルを要件に合わせて調整する | 調整内容の検討と確認の工程が加わる |
案件の募集内容にどちらの区分が書かれているかで、参画後に求められる判断の重さが変わってきます。「テンプレートの適用」とだけ書かれている案件と、「サンプルテンプレートのカスタマイズ」まで含むと明記された案件とでは、求められる裁量の幅が異なります。面談の段階でどちらの区分に近いかを確かめておくと、業務開始後の認識のずれを防ぎやすくなります。テンプレートの適用範囲が決まっている一方で、それを誰が触れるかという権限の設計は、見積りに直接関わってきます。次にその関係を見ていきます。
3. 権限を持つ人数が、そのまま費用に出ます
管理者権限を持つ人ごとに費用が積み上がる仕組み
見積り項目には、GCASにおいて管理者権限を有するユーザー及び本番相当環境における管理インターフェースにアクセスするユーザーごとに必要となるハードウェアMFAデバイスに係る費用が挙げられています4。一律に課される費用ではなく、権限を持つ人数に応じて見積りの項目が積み上がっていく構造だと理解しておくと分かりやすくなります。
個々の設定を早く終わらせる操作の速さよりも、権限をどう線引きするかを見立てる力のほうが、見積りの精度に直結します。権限設計を絞れば対象人数は抑えられ、広げれば費用の項目も増えます。案件に入るときに、誰にどの権限を渡すかを早い段階で確かめておくと、見積りの前提をつかみやすくなります。権限の設計は契約前の情報だけでは見えにくい部分でもあります。面談の場で、管理者権限を持つ人数や本番相当環境への接続範囲がどのように決まっているのかをクライアントと協議しておくと、見積りの前提を後から覆されずに済みます。見積りの水準そのものは案件によって様々ですが、権限を持つ人数という切り口は、どの案件でも確かめられる共通の視点です。募集内容に権限設計の記載が薄い案件ほど、面談で具体的に尋ねておく価値があります。
図の作成:Remogu編集部。手順書の記述をもとに整理したもので、統計データではありません
権限設計や構成管理に関わるIaCのリモート案件を見る →
権限の設計だけでなく、作業そのものの順番も、この手順書ではあらかじめ決まっています。
4. 作業の順序は先に決まっています
利用開始の5つの工程と、自分の位置を確かめる意味
利用開始の作業は、GCASアカウント利用手続き・環境払い出し、回線の手配及び開通後の確認、テンプレート適用、移行作業実施、移行作業完了後確認という順序で整理されています5。IaCの案件に途中から参画する場合、この順序のどこに立っているかを最初に確かめておくと、担当する範囲や前提となる環境の状態を把握しやすくなります。募集内容や面談で「どの工程まで進んでいるか」を確かめておくと、初日から求められる作業の粒度を予測しやすくなります。テンプレート適用が済んだ状態から参画するのか、移行作業実施の途中から参画するのかで、最初に触れる情報の量も変わってきます。
| 順序 | 工程 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 1 | GCASアカウント利用手続き・環境払い出し | 参画前の準備段階に位置する工程 |
| 2 | 回線の手配及び開通後の確認 | ネットワーク面の前提を整える工程 |
| 3 | テンプレート適用 | 既定のベースラインを環境に反映する工程 |
| 4 | 移行作業実施 | IaCの案件として手を動かす中心の工程 |
| 5 | 移行作業完了後確認 | 次の章で扱う検証の工程 |
案件の説明文に「移行作業から参画」とだけ書かれていても、その前段でどこまで進んでいるかによって、初日に触れる情報の量は変わります。作業の始め方が決まっているように、終わり方についても手順が用意されています。
5. 終わり方も手順に入っています
利用終了に必要な2つの手続き
ガバメントクラウドの利用を終了する場合は、環境削除申請とGCASアカウントの利用終了手続きを行うと整理されています6。構築して終わりではなく、撤収の手続きまでが決まった手順の一部になっている点は、IaCの案件を見るときに見落としやすい部分です。
環境を作る力よりも、決められた手順に沿って終わらせる力のほうが、公的な基盤の案件では見過ごされやすい評価の観点になります。参画時の作業範囲を確認する段階で、利用終了に関わる工程まで含まれるのかどうかを合わせて確かめておくと、業務の全体像を取り違えずに済みます。契約期間の終盤になってから「利用終了の手続きまで担当するのか、次の担当者に引き継ぐのか」を確かめるのではなく、参画時にクライアントとすり合わせておくことが望ましいでしょう。終わり方の手順が決まっているからこそ、誰がそれを担うのかという線引きが必要になります。
図の作成:Remogu編集部。手順書の記述をもとに整理したもので、統計データではありません
作業の始まりと終わりが手順として決まっているとすれば、その途中の成果をどう確かめるかも、同じように定められているはずです。
6. 「動いた」ではなく運用要件に照らして検証します
完了後確認の4つの観点
移行作業完了後の確認では、機能・データの整合性・パフォーマンス・バックアップの確認に加えて、計画した移行後の運用要件を満たしているか検証することも含まれると整理されています7。画面が表示された、処理が通った、という状態を指すのではなく、事前に計画した運用の要件と照らし合わせて確かめる工程です。この観点は例として示されているものであり、案件によって確認事項が加わることもあります。
4つの観点はいずれも、動作の確認としては馴染みのある項目です。一方で、これらを個別に満たすことと、計画した運用要件全体に照らして検証することとは、確かめる対象の粒度が異なります。前者は個々の機能や数値の確認にとどまりますが、後者はそれらの確認結果を運用の計画と突き合わせる作業になります。
募集内容に「動作確認」とだけ書かれている場合でも、実際に求められているのが4つの観点の確認までなのか、運用要件に照らした検証まで含むのかによって、業務の重さは変わります。曖昧な表現のまま契約を進めず、確認の範囲をクライアントとすり合わせておくことが望ましいでしょう。
| 観点 | 確認する内容 |
|---|---|
| 機能 | 想定した機能が意図したとおりに動作するか |
| データの整合性 | 移行前後でデータの内容が一致しているか |
| パフォーマンス | 処理速度や応答時間が計画した水準に収まっているか |
| バックアップ | バックアップの取得と復元が計画どおりに機能するか |
運用要件に照らして検証するということ
4つの観点をひとつずつ満たしていても、計画した運用要件と照らし合わせていなければ、完了後確認としては途中で止まっていることになります。動作の確認で終える仕事と、運用要件まで照らして検証する仕事とでは、案件の中で担う責任の重さが変わってきます。権限やアクセス経路の設計がきちんと整理されている案件であれば、こうした確認作業もリモートで進めやすい領域になります。実際、Remoguで扱う案件の90%以上がフルリモート可能です9。
加えて、ガバメントクラウドを構成するCSPの顔ぶれは固定ではありません。さくらインターネット株式会社の「さくらのクラウド」は、全ての技術要件を満たした後に令和7年度末までに利用可能となる見込みです8。特定のCSPに寄せた設計をそのまま長く使い続けられるとは限らず、対象が増える前提で運用要件を組み立てておく視点も必要になります。
図の作成:Remogu編集部。手順書の記述をもとに整理したもので、統計データではありません
運用要件の検証まで担うIaCのリモート案件を見る →
ここまで見てきた既定・権限・順序・検証の観点は、案件情報を読むときにそのまま確認の軸として使えます。最後に、よくある疑問を整理しておきます。
7. よくある質問
IaCの案件では、どのCSPでも同じテンプレートが使えますか
この手順書は、CSPごとにベースラインのテンプレートが用意されると整理しており1、CSP同士の優劣は比較していません。対象となるCSPの顔ぶれも固定ではなく、さくらインターネット株式会社の「さくらのクラウド」は、全ての技術要件を満たした後に令和7年度末までに利用可能となる見込みです8。案件ごとに前提となるCSPが異なる点は、参画前に確かめておく事項になります。
権限を絞れば、ハードウェアMFAデバイスの費用は抑えられますか
見積り項目は、管理者権限を有するユーザー及び本番相当環境の管理インターフェースにアクセスするユーザーごとに挙げられています4。対象になる人数が増えるほど項目も増える構造なので、権限を持つ人を必要な範囲に絞ることは、見積りの前提を整理するうえで意味を持ちます。権限を持つ人を必要な範囲に絞る取り組みは、費用の面だけでなく、環境全体の管理を単純にしておくという点でも役立ちます。
移行作業が完了すれば、案件の対応は終わりですか
移行作業実施の後には移行作業完了後確認という工程が続き5、そこでは機能・データの整合性・パフォーマンス・バックアップに加えて、計画した運用要件に照らした検証が含まれると整理されています7。さらに利用を終了する場面では、環境削除申請とGCASアカウントの利用終了手続きも手順に含まれています6。動かして終わりではなく、検証と終了の手続きまでが仕事の範囲に入りうると捉えておくと、案件全体の見通しを取り違えずに済みます。募集内容に「移行作業」とだけ書かれていても、実際にはこの一連の工程のどこか一部を担う案件も見られるため、募集内容の言葉だけで作業範囲を判断しないほうが安全です。
この手順書のような公的基盤の案件は、フルリモートで対応できますか
手順書自体はリモートでの対応可否を定めていません。ただし、Remoguで扱う案件の90%以上がフルリモート可能です9。実際にリモートで進められるかどうかは、案件ごとのセキュリティ要件や作業環境の条件によって異なるため、募集内容とあわせて確かめておくとよいでしょう。
必須適用テンプレートのみの案件と、カスタマイズも実施する案件はどちらを選ぶとよいですか
優劣があるわけではなく、担当したい作業の幅によって選び方が変わります。決められた設定をそのまま反映する経験を積みたい場合は必須適用テンプレートのみの案件が、要件に応じた調整の経験を積みたい場合はサンプルテンプレートのカスタマイズも実施する案件が、それぞれの目的に合いやすくなります2。募集内容に区分が明記されていない場合は、面談で確かめておくと、参画後の作業内容を思い違えずに済みます。
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任される基盤の範囲は案件ごとに違います。まずは条件を見比べるところから確かめられます。
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※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 デジタル庁「ガバメントクラウド移行に係る手順書」第3.0版(2025年3月)
*2 デジタル庁「ガバメントクラウド移行に係る手順書」第3.0版(2025年3月)
*3 デジタル庁「ガバメントクラウド移行に係る手順書」第3.0版(2025年3月)
*4 デジタル庁「ガバメントクラウド移行に係る手順書」第3.0版(2025年3月)
*5 デジタル庁「ガバメントクラウド移行に係る手順書」第3.0版(2025年3月)
*6 デジタル庁「ガバメントクラウド移行に係る手順書」第3.0版(2025年3月)
*7 デジタル庁「ガバメントクラウド移行に係る手順書」第3.0版(2025年3月)
*8 デジタル庁「ガバメントクラウド移行に係る手順書」第3.0版(2025年3月)
*9 Remoguサイト公開情報(案件の90%以上がフルリモート可能)