BIM/CIMの案件では、図面に合わせてモデルを直します

📘 この記事でわかること
- 整合確認の手順が「2次元図面に合わせて3次元モデルを修正する」と定めている向きと、その確認を行う段階
- 整合確認が不要になる2つの作り方の条件と、それに当てはまらないときに必要になる照査の内容
- 当面の目標として位置づけられている2つの活用水準と、積算との連携がまだ試行段階にとどまっていること
3次元モデルと2次元図面の数値が一致しない場面は、詳細設計の現場で繰り返し起きています。どちらを直すべきか、判断に迷う瞬間です。国土交通省が示す整合確認の手順には、直す向きがすでに定められています10。BIM/CIM案件に参画するなら、この向きを先に押さえておくと、照査のやり直しを減らせます。
1. 図面とモデルがずれたとき、直す向きは決まっています
直す向きは、すでに資料に書かれています
詳細設計の途中で、3次元モデルと2次元図面の数値を見比べて、どちらが正しいのか分からなくなる場面があります。線形の値に細かな差が残っていることも、珍しくありません。
国土交通省がまとめた整合確認方法の資料には、この迷いを解く手順が示されています。3次元ソフトウェア上に2次元図面の平面線形を置いてアライメントモデルを作成し、平面線形同士の一致と、各測点の高さが縦断図の計画高と一致することを確認したうえで、一致しない場合は2次元図面に合わせて3次元モデルを修正すると定められています10。
3次元モデルを直すよりも、2次元図面を直すほうが早いと考えたくなりますが、基準はあくまで2次元図面です。現状は2次元図面を作成したあとに3次元モデルを別途作成するケースが多く、両者を連動させるには、設計段階で生じた図面側の修正を3次元モデルに反映させる必要があります3。
出典:国土交通省「設計段階における3次元モデルと2次元図面の整合確認方法(案)」(令和8年3月)をもとに作成
手戻りが起きる前に、向きを決めておく効果
3次元モデルと2次元図面を並行して作り込んでいくと、どちらを起点に直すかという判断は、担当者ごとの感覚に委ねられがちです。この判断がそろわないまま作業を進めると、同じ箇所を何度も直す事態につながります。
直す向きがあらかじめ決まっていれば、どちらを起点に修正すべきかで迷う時間そのものが要らなくなります。2次元図面側の修正を先に確定させ、その内容を3次元モデルに反映する順番を、関わる人の間で共有しておく効果は小さくありません。
2次元図面と3次元モデルの両方を扱う案件に参画する場合は、この向きを前提にした作業の分担がすでに敷かれているかどうかを、早い段階でクライアントと確かめておくと進めやすくなります。
直す向きが決まっていることは、確認そのものをどこまで行うかという次の論点につながります。この確認がいつ行われ、何を対象にしているのかを見ていきます。
2. 3次元モデルは成果物として納品する対象です
令和5年度から、納品する成果物になりました
BIM/CIM案件と聞くと、3次元モデルは検討の途中で使う下書きのような扱いを想像しがちです。
令和5年度より、国土交通省の直轄土木工事の詳細設計ではBIM/CIMの原則適用が開始され、3次元モデルを成果物として納品することが義務付けられています。設計情報の可視化と関係者間の合意形成には、一定の効果が確認されています1。
今の段階では、3次元モデルは2次元図面を補う位置づけにとどまっていますが、今後は2次元図面に加えて3次元モデルを工事契約図書として位置付け、データ連携による積算や施工への高度な活用が可能となるよう取り組んでいます2。位置づけが変わっていく途中にあるからこそ、今どこまで決まっていて、どこから先が検討中なのかを分けて把握しておくことが役立ちます。
2次元図面と3次元モデル、それぞれの位置づけを一覧にする
2次元図面と3次元モデルは、今どちらも詳細設計に関わる資料ですが、契約図書としての重みは同じではありません。3次元モデルは成果物として納品する対象になったところで1、契約図書としての位置付けは「2次元図面に加えて」という形で、これから先の取り組みとして進められている段階です2。この差を把握しておくと、案件ごとに何を基準にして照査すればよいかを見誤りにくくなります。次の表に、対象ごとの現在の位置づけと、今後の位置づけをまとめます。
| 対象 | 現在の位置づけ | 今後の位置づけ |
|---|---|---|
| 2次元図面 | 詳細設計の契約図書 | 引き続き契約図書として扱われます |
| 3次元モデル | 詳細設計の成果物として納品する対象です1 | 工事契約図書としても位置付け、データ連携の活用に取り組んでいます2 |
検討中の位置づけと、どう向き合うか
成果物として納品する対象になったことと、契約図書としての位置付けが固まることは、別の段階の話です。今はまだ、あとの取り組みが進んでいる途中にあります2。
途中の段階だからといって、扱いを軽くしてよいわけではありません。むしろ、何が確定していて何がこれからなのかを分けて把握しておくほうが、後工程での手戻りを防ぎやすくなります。
3次元モデルに関わる案件に参画する際は、その案件で求められている位置づけが、成果物としての納品にとどまるのか、契約図書に近い扱いを含むのかを、クライアントと事前にすり合わせておく価値があります。
成果物としての位置づけが固まりつつある一方で、すべての作り方に同じ量の照査が必要というわけではありません。
3. 照査が要らない作り方があります
整合確認が不要になる、2つの作り方
図面とモデルを両方作り込むほど、照査にかかる手間は積み上がっていきます。
照査は常に必要というわけではありません。整合確認が不要になる作り方が、2つ示されています。ひとつは、納品する3次元モデルから2次元図面を切り出して作成している場合。もうひとつは、同一ソフトウェア内で同一の入力情報に基づき、3次元形状と2次元図面を自動的に生成している場合です4。
どちらの場合も、形状情報に食い違いが生じる余地がないことが前提です。ただし、この扱いが認められるのは、その根拠が確認できる場合に限られます4。作り方を選ぶ段階の判断が、後工程の照査の量を決めることになります。
出典:国土交通省「設計段階における3次元モデルと2次元図面の整合確認方法(案)」(令和8年3月)をもとに作成
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作り方を選ぶ判断が、後工程の負担を決める
整合確認が不要になるかどうかは、設計の途中で切り替えられるものではありません。3次元モデルから2次元図面を切り出す作り方も、同一ソフトウェアで両方を自動生成する作り方も、最初の段階で決まっている必要があります。
作り方の選択を後回しにすると、照査が要らないはずの案件で、要る前提の工数を組んでしまうことにもなりかねません。逆に、条件を満たしていないのに不要と見なしてしまえば、納品の直前で確認漏れが表面化します。この整合確認が指しているのは、詳細設計の成果物として3次元モデルを納品する前の段階です5。
参画する時点で、その案件がどちらの作り方を前提にしているのかを確かめておくことは、見積もりの精度にも直結します。作り方の前提が曖昧なまま進めるよりも、最初に確認したほうが、結果として手戻りは少なくなります。
作り方によって照査の要否が変わることは分かっても、実際に確認する項目が形だけなのかは、また別の話です。
4. 確認するのは形だけではありません
数値と線形、それぞれの基準
整合確認というと、形が合っているかどうかを目で見て確かめる作業を思い浮かべやすいところです。
実際の確認では、数値確認として2次元図面に記載された寸法値の単位および有効数字での整合を見ます9。線形の確認では、3次元ソフトウェア上に2次元図面の平面線形を置いてアライメントモデルを作成し、平面線形同士の一致と、各測点の高さが縦断図の計画高と一致することを確認します10。
見た目の一致よりも、数値と線形それぞれの一致のほうが、確認の中心に置かれています。ここでもう一度確かめておきたいのは、基準は2次元図面の側にあるという点です9。
形状・数値・線形、確認の観点を一覧にする
整合確認は、ひとつの基準ですべてを見るわけではありません。観点ごとに見る対象と基準が異なり、一致しない場合にどちらを直すのかという扱いもそれぞれ決まっています。次の表で整理しておくと、確認の抜け漏れを防ぎやすくなります。
| 観点 | 確認する内容 | 基準になるもの |
|---|---|---|
| 数値 | 寸法値の単位・有効数字の整合9 | 2次元図面に記載された寸法値 |
| 線形 | 平面線形同士の一致、各測点の高さと縦断図の計画高との一致10 | 2次元図面の平面線形と縦断図 |
| 修正の向き | 一致しない場合の扱い10 | 2次元図面に合わせた3次元モデルの修正 |
観点を分けて確認する利点
形状・数値・線形をひとまとめに見るよりも、観点ごとに分けて確認するほうが、どこで不整合が起きているのかを特定しやすくなります。数値の確認は寸法値の単位と有効数字、線形の確認は測点ごとの高さと平面線形というように、見る対象がそれぞれ違うためです9。
観点を分けずに全体を見ようとすると、見落としが起きやすくなります。逆に、観点ごとに担当や手順を分けておけば、繰り返し発生する確認作業の精度を保ちやすくなります。
確認の観点が複数あるということは、モデルの使い道によって、求められる精度そのものが変わってくるということでもあります。
5. モデルの使い道が、必要な精度を決めます
当面の目標は、2つの活用事項に絞られています
モデルを作り込むほど精度が上がるように思えますが、必要な水準を超えて作り込むと工数だけが膨らみます。
当面の活用事項として、主要構造物の3次元モデルの体積が設計数量として活用できることと、土工の設計段階における3次元線形データがICT施工のデータとして活用できることの2つが挙げられています6。
用途を広げるよりも、この2つに絞って精度を確保するほうが、当面の現実的な進め方です。一方で、出来上がりイメージの確認のみなど、相当する精度を要しない3次元モデルを作成する場合は、整合確認方法およびその要否について受発注者間で協議すると定められています8。
出典:国土交通省「設計段階における3次元モデルと2次元図面の整合確認方法(案)」(令和8年3月)をもとに作成
精度を上げすぎないことにも価値がある
精度は高いほど良いと考えがちですが、当面の活用事項に対して過剰な精度を積み上げても、それが評価される場面は限られます。求められている水準を超えて作り込む時間は、ほかの工程に回したほうが全体としては効率的です。
参画の初期段階で、そのモデルが最終的に何に使われるのかをクライアントと確かめておくと、必要な精度の見立てがしやすくなります。出来上がりイメージの確認だけで足りるのか、設計数量やICT施工のデータとして使うのかによって、作り込む量は変わってきます6。
使い道に応じて精度と確認の量が変わることは、この先の積算との連携にもそのままつながっていきます。
6. 積算とのつながりは、まだ試行の段階です
IFC形式のデータから、数量データを作る試みが進んでいます
図面とモデルを整えたあと、その先の積算にまでデータがつながるなら、手間は大きく減っていきます。
令和8年3月現在、IFC形式の3次元モデルデータの属性情報から、土木工事積算システムの設計数量管理機能に読み込み可能な数量データをXML形式で作成する試行が行われています7。
この連携は、実際の運用に移った段階ではありません。あくまで試行です。2次元図面に加えて3次元モデルを工事契約図書として位置付ける取り組みとあわせて、段階的に整えられているところです2。
現時点で決まっていることと、していないことを一覧にする
ここまでの内容には、すでに決まっていることと、まだ検討が続いていることが混ざっています。当面の活用事項として体積とICT施工データの活用が挙げられている点は、すでに決まっている範囲です6。精度を要しないモデルの扱いを受発注者間で協議する点も、同じく決まっている範囲に含まれます8。一方で、積算システムへの数量データ連携や、3次元モデルを工事契約図書として位置付ける取り組みは、まだ進行中の段階にとどまります。この境目を混同すると、案件で何を約束できるかを見誤ります。次の表で、両者を分けて整理します。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 決まっていること | 当面は主要構造物の体積を設計数量として活用し、土工の3次元線形データをICT施工に活用すること6 |
| 決まっていること | 精度を要しないモデルは、整合確認方法とその要否を受発注者間で協議すること8 |
| まだ決まっていないこと | 積算システムへの数量データ連携は、令和8年3月現在も試行の段階にあること7 |
| まだ決まっていないこと | 3次元モデルを工事契約図書として位置付ける取り組みは、達成ではなく進行中であること2 |
出典:国土交通省「設計段階における3次元モデルと2次元図面の整合確認方法(案)」(令和8年3月)をもとに作成
試行段階であることを前提に進める
試行の段階にある仕組みは、いつでも前提が変わり得ます。積算システムへの数量データ連携も、令和8年3月現在の到達点であって、この先の運用がそのまま固定されるとは限りません7。
だからこそ、積算までモデルが自動でつないでくれると決め込むよりも、現時点では数量の算出結果を人の目で確かめる工程が残っていると見ておくほうが安全です。試行段階の仕組みに合わせて手順を組み立てる姿勢が、この領域では役立ちます。
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直す向き、照査の要否、精度の基準、そして積算との連携。ここまでの内容を、よくある質問の形でもう一度整理します。
7. よくある質問
ここまでの内容を踏まえて、BIM/CIM案件への参画を考えるときに出やすい疑問を、質問の形で整理します。
2次元図面と3次元モデルが一致しないとき、どちらを直しますか
整合確認手順の例では、一致しない場合に2次元図面に合わせて3次元モデルを修正すると定められています10。基準になるのは、2次元図面側の数値です。
整合確認が不要になるのは、どんな場合ですか
納品する3次元モデルから2次元図面を切り出して作成している場合と、同一ソフトウェア内で同一の入力情報から3次元形状と2次元図面を自動的に生成している場合の2つです4。いずれも、その根拠が確認できることが前提です。
積算とのデータ連携は、すぐに使える段階ですか
令和8年3月現在は試行の段階です。IFC形式の属性情報から積算システムの設計数量管理機能に読み込める数量データを作成する取り組みが進んでいますが7、契約図書としての位置付けも含めて、引き続き整えられている途中です2。
BIM/CIMに関わる案件は、リモートで参画できますか
Remoguで取り扱う案件は、案件の90%以上がフルリモート可能です11。詳細設計の照査など、納品前の確認を伴う工程でも、条件は案件によって異なります。気になる案件が見つかったら、条件を確かめたうえでエントリーを進める流れになります。
この整合確認方法は、民間工事にもそのまま使えますか
この資料が対象としているのは、国土交通省の直轄土木工事における詳細設計です1。民間工事や他の発注者の案件では、確認の手順や求められる水準が同じとは限りません。参画する案件がどの発注者のものかによって、前提が変わり得る点を先に確かめておくと安心です。
直す向き、照査の要否、精度の基準、積算との連携。いずれも国土交通省の資料の中に、すでに答えが用意されています。次に3次元モデルと2次元図面を見比べる場面があれば、まず基準がどちらの数値にあるかを確かめてみましょう。
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出典・参考情報
*1 国土交通省「設計段階における3次元モデルと2次元図面の整合確認方法(案)」附属資料2・1 はじめに(2026年3月)
*2 国土交通省「設計段階における3次元モデルと2次元図面の整合確認方法(案)」附属資料2・1 はじめに(2026年3月)
*3 国土交通省「設計段階における3次元モデルと2次元図面の整合確認方法(案)」附属資料2・1 はじめに(2026年3月)
*4 国土交通省「設計段階における3次元モデルと2次元図面の整合確認方法(案)」附属資料2・2 共通事項(1)(2026年3月)
*5 国土交通省「設計段階における3次元モデルと2次元図面の整合確認方法(案)」附属資料2・2 共通事項(2)(2026年3月)
*6 国土交通省「設計段階における3次元モデルと2次元図面の整合確認方法(案)」附属資料2・2 共通事項(3)(2026年3月)
*7 国土交通省「設計段階における3次元モデルと2次元図面の整合確認方法(案)」附属資料2・脚注(2026年3月)
*8 国土交通省「設計段階における3次元モデルと2次元図面の整合確認方法(案)」附属資料2・2 共通事項(4)(2026年3月)
*9 国土交通省「設計段階における3次元モデルと2次元図面の整合確認方法(案)」附属資料2・2 共通事項(5)(2026年3月)
*10 国土交通省「設計段階における3次元モデルと2次元図面の整合確認方法(案)」附属資料2・4 整合確認例(2026年3月)
*11 Remoguサイト公開情報(案件の90%以上がフルリモート可能)