• ノウハウ
  • |Remogu(リモグ)" />

    航空管制の案件|音声のデータ化から始まる開発領域

    「声からデータへ」を示す図です。声/データを並べています。強調しているのはデータです。いま進んでいる段と添えています。

    📘 この記事でわかること

    • 音声通信の一部をデータ通信に置き換えるCPDLCが試行から正式運用まで進んだことと、その先に見える技術の方向性
    • 同じ情報を関係者が同時に持つTBOという考え方と、それを支える共有基盤に最初からセキュリティ管理が組み込まれる理由
    • 欧州の計画が示す技術要素に「人と機械の組織化」が含まれる背景と、外部の技術者が関わる余地がどこにあるか

    リアルタイム性が要求される基盤に関わってきた技術者ほど、航空管制のデジタル化と聞くと、自動化やAIによる判断をまず思い浮かべるかもしれません。ですが国土交通省が示す長期ビジョンを読むと、最初に進んでいるのは、声で伝えていた情報をデータに置き換えるという地道な変化です4。土台の整備も一段落し、次の段階として「同じ情報を関係者が同時に持つ」仕組みづくりに入ろうとしています。ミッションクリティカルな基盤に携わってきた経験は、この分野でも生きる場所があります。

    リモートワーク案件特化のエージェント|Remogu(株式会社LASSIC運営) リアルタイム連携・基盤に関わるリモート案件を、条件から探す フルリモートの案件を見る

    1. 始まりは「声をデータに置き換える」

    管制官とパイロットの負荷を、声でなくデータで減らす

    リアルタイム性の高い基盤に関わってきた技術者ほど、航空管制のデジタル化と聞くと、判断そのものを機械に任せる話をまず思い浮かべるかもしれません。派手な仕組みほど目に留まりやすいためです。ですが実際に動き出しているのは、もっと足元に近い変化です。

    国土交通省の資料には、管制官とパイロット双方の作業負荷を減らすため、音声通信の一部をデータ通信に置き換えるCPDLCの取り組みが進んでいると記されています4。判断の中身を変えるのではなく、情報の伝え方を変えるところから始めている点が特徴です。

    声によるやり取りは、聞き取りの負担や伝達の手間が積み重なりやすい手段です。データ通信に置き換えれば、同じ内容を機械可読な形でやり取りでき、記録にも残ります。イベント連携やメッセージ基盤の設計に関わってきた技術者であれば、この発想の転換にはすぐ馴染めるはずです。

    図1:声をデータに置き換えるCPDLCの仕組み
    声をデータに置き換える 音声によるやり取り 管制官とパイロットが 声で情報を伝える方法 一部を置き換え データ通信(CPDLC) 音声の一部をデータに 置き換える取り組み 2022年 国内空域で試行運用 2023年 正式運用へ移行

    出典:将来の航空交通システムに関する長期ビジョン2040(国土交通省、2025年6月)をもとに作成

    試行で終わらせず、正式運用まで進めた歩み

    CPDLCは洋上空域に加えて2022年より国内空域でも試行運用が始まり、2023年には正式運用に移行しています5。試行のまま止まらず、日々の運用に組み込むところまで進んだという事実は、実証実験で終わりがちな取り組みとは一線を画します。

    自動化そのものよりも、情報を渡す形を変えることが優先されています。派手な判断の自動化よりも、地味な伝達手段の置き換えのほうが、システム全体の土台としては効きます。段階を踏んで実装まで届けるという進め方は、これまで重ねてきた開発の経験と重なる部分です。

    声をデータに置き換える取り組みが実装段階に入った背景には、その前提となる土台の工事が一段落したという事情があります。次に見ていくのは、その土台がどこまで整ったかという話です。

    2. 土台の工事は一段落している

    2010年から15年かけて積み上げてきた計画

    新しい基盤を検討するとき、既存の土台がどこまで整理されているかは見過ごせない論点です。継ぎ足しだらけの基盤に新しい仕組みを重ねても、効果は限定的になりがちだからです。航空交通の分野でも、同じ順序が踏まれてきました。

    CARATSは2025年を目標年次として2010年に策定され、国内管制空域の再編、データ通信の導入、通信・航法・監視技術や情報システムの高度化などに取り組んできた計画です7。15年という長い期間をかけて、土台を組み直してきたことになります。

    空域の再編が完了し、次の15年が始まっている

    その土台の工事のひとつである国内管制空域の再編は、2025年3月に完了しました6。区切りの年に近づく形で、整理の作業がひとつ片づいたことになります。基盤刷新の現場でも、こうした区切りの付け方には見覚えがあるはずです。

    一度に全部を作り直すよりも、区分を決めてから中身を段階的に置き換えるほうが、後工程の設計は安定します。空域という枠組みを先に整理し、そのあとで情報のやり取りを変えるという順序は、大規模な基盤の刷新でも取られる進め方と重なります。

    年表で見る、CARATSの15年

    CARATSがこれまで進めてきた歩みを、年表の形で整理します。2010年の策定から2025年の空域再編完了まで、土台の工事がどのような順序で進んできたかを追うと、次の段階で何を積み上げようとしているかも見えてきます。数字の羅列ではなく、区切りの意味を読み取る材料として捉えてみましょう。

    内容
    2010年CARATSを2025年目標年次として策定7
    2022年CPDLCが洋上空域に加え国内空域でも試行運用を開始5
    2023年CPDLCが正式運用に移行5
    2025年3月国内管制空域の再編が完了6

    15年かけて土台を作り、区切りを迎えたということは、次の15年は土台の上に何を積むかという話に移っていくことを意味します7。同じ情報を関係者が同時に持つという、より上のレイヤーの課題に取り組む段階に入っているわけです。

    土台が整理されたことで初めて、次に扱う「同じ情報をどう共有するか」という主題に手が届くようになりました。ここからは、その共有の中身を見ていきます。

    3. 次の主題は、同じ情報を同時に持つこと

    TBOという考え方の中身

    土台の整理が済むと、次に問われるのは、その上でどんな情報をやり取りするかという中身です。航空交通の分野で次の主題として掲げられているのが、TBO(軌道ベース運用)という考え方です。

    TBOは、航空機の軌道がデジタル技術により管制機関や航空関係者へリアルタイムに共有され、その情報を活用して最適な管制運用を行うための概念です1。中身を一言で言えば、同じ情報を関係者が同時に持つという発想です。

    分散したシステムが同じ状態を共有し続けるという課題は、リアルタイム連携の設計に関わってきた技術者にとって初めて聞く話ではありません。整合性を保ちながら複数の主体に同じ情報を届けるという課題設定は、扱ってきた領域と地続きです。

    図2:TBO(軌道ベース運用)が目指す情報共有の形
    同じ情報を同時に持つ 管制機関 情報を受け取る側 航空関係者 情報を受け取る側 航空機の軌道情報を リアルタイムに共有 最適な管制運用に活用 分散していた情報を同じ内容としてやり取りする発想

    出典:将来の航空交通システムに関する長期ビジョン2040(国土交通省、2025年6月)をもとに作成

    TBOの定義を要素に分けて見る

    TBOという言葉は一文で説明されると掴みにくいため、定義を要素に分けて整理します。何を、どんな手段で、誰に、何のために共有するのかを分けて見ると、システム設計における要件定義と同じ構造をしていることが分かります。

    要素内容
    対象航空機の軌道1
    手段デジタル技術によるリアルタイムの共有1
    共有先管制機関や航空関係者1
    目的その情報を活用した最適な管制運用1

    情報共有が前提になる理由

    国土交通省の資料は、航空機が柔軟で効率的に運航するためには、関係者間の情報共有が不可欠だとしています2。効率という言葉の前提に、情報共有という条件が置かれている点が読み取れます。

    効率化というと、処理速度や自動化の高度化を思い浮かべやすいものです。しかしこの分野で優先されているのは、速さよりも先に、関係者全員が同じ情報を持てる状態を作ることです。土台が揃わなければ、その上に積む効率化も安定しません。

    同じ情報を同時に持つという発想は、それを支える基盤の設計にそのまま跳ね返ります。次に見ていくのは、その基盤に何が組み込まれているかという話です。

    4. 共有基盤にはセキュリティ管理が組み込まれる

    SWIMという共有基盤

    同じ情報を関係者が同時に持つと言っても、その情報をどこでやり取りするかという基盤がなければ、話は前に進みません。この基盤にあたるのがSWIM(航空情報共有基盤)です。

    SWIMについては、産学官で提供する情報サービスやセキュリティ管理等の詳細を検討し、2025年より初期サービスを開始する予定と記されています3。情報サービスの中身と並んで、セキュリティ管理が同じ文の中に置かれている点が目を引きます。

    基盤を作ってから安全対策を後付けするのではなく、検討の段階からセキュリティ管理が組み込まれています。情報を広く共有する仕組みほど、後から守りを足すやり方は歪みを生みやすいものです。この順序は、共有基盤を設計する現場での経験則とも一致します。

    セキュリティ管理が後付けでなく組み込まれている

    利便性を先に固めてから安全対策を追加するよりも、検討の初期段階からセキュリティ管理を同じ設計に含めるほうが、後になって手戻りが生まれにくくなります。SWIMの進め方は、この順序を踏んでいます。

    産学官で提供する情報サービスやセキュリティ管理等の詳細を検討するという進め方は3、外部の専門知見を取り込む余地がある設計であることも示しています。共有基盤の設計と運用に関わってきた経験は、この場面でも役立つ材料になります。

    SWIMに組み込まれている検討事項

    SWIMで検討されている事項を整理すると、情報サービスの中身、セキュリティ管理、開始の時期という3つに分けられます。ひとつずつ見ていくと、共有基盤がどのような順序で組み上げられているかがつかめます。

    検討事項内容
    情報サービス産学官で提供する内容を検討3
    セキュリティ管理情報サービスと合わせて詳細を検討3
    開始時期2025年より初期サービスを開始する予定3

    共有基盤にセキュリティ管理が組み込まれているという事実は、この分野が単なる自動化の話ではないことを裏づけています。次に見ていくのは、その先にある「人と機械の組織化」という考え方です。

    5. 自動化ではなく「人と機械の組織化」

    欧州が示す5つの技術要素

    共有基盤の話が進むと、次に気になるのは「結局どこまで自動化されるのか」という点です。欧州の計画を見ると、答えは単純な自動化一辺倒ではありません。

    欧州では2024年に計画を改定し、必要となる技術的要素としてTBO、通信データ量の拡大、自動化、人と機械の組織化、動的な空域の設定が挙げられています8。自動化と並んで「人と機械の組織化」という言葉が置かれている点が特徴です。

    組織化という言葉が選ばれているのは、判断のすべてを機械に渡すのではなく、人と機械がどう役割を分けて働くかを設計の対象にしているからです。管制官やパイロットが担ってきた判断を軽く見る話ではなく、その判断と機械の処理をどう組み合わせるかという設計課題です。

    図3:欧州の計画が示す5つの技術要素
    欧州が示す5つの技術要素 TBO 軌道ベース運用 通信データ量の拡大 自動化 人と機械の組織化 判断と処理の役割分担 動的な空域の設定

    出典:将来の航空交通システムに関する長期ビジョン2040(国土交通省、2025年6月)をもとに作成

    外部の技術者が関わる余地

    今後の取組を推進するにあたっては、産学官が連携することが重要だと記されています9。制度の側に、外部の技術者が関わる余地が明記されているとも読めます。

    閉じた業界の中だけで完結させるよりも、外部の知見を取り込みながら進めるほうが、通信データ量の拡大や動的な空域の設定といった技術要素には向いています。産学官という言葉には、業界の外からの技術者を退けない姿勢が表れています。

    リアルタイム連携や共有基盤の設計、セキュリティ管理といった領域で積み上げてきた経験は、この「人と機械の組織化」を支える技術基盤の一部として生きる場所があります。案件の90%以上がフルリモート可能です10。場所に縛られずに関わる余地は、案件を探す側にもすでに開かれています。

    6. まとめ

    ここまで見てきた変化を並べると、共通しているのは「まず伝え方を変える」という順序です。声をデータに置き換え4、土台の区分を整理し6、同じ情報を関係者が同時に持てるようにし1、その基盤にセキュリティ管理を組み込み3、最後に人と機械の役割分担を設計する8という順番です。

    派手な自動化から入らず、地道な置き換えと整理から積み上げていくという進め方は、大規模な基盤刷新に携わってきた技術者であれば見慣れた景色のはずです。航空管制という言葉に距離を感じていた分だけ、中身を知ると近さに驚くかもしれません。

    産学官が連携することが重要だと明記されている以上9、外部の技術者が関わる余地は制度の側にすでに用意されています。リアルタイム連携、共有基盤の設計、セキュリティ管理という積み上げてきた経験は、この分野に持ち込める材料です。

    経験がどこで活きるかを確かめる一番早い方法は、実際の案件に目を通してみることです。まずは自分の経験に近い条件の案件を探してみることから始めてみましょう。

    7. よくある質問

    図4:CARATSの15年をたどる年表
    CARATSの15年をたどる 2010年 CARATS策定 2022年 試行運用開始 2023年 正式運用へ移行 2025年 空域再編完了 SWIM初期サービス

    出典:将来の航空交通システムに関する長期ビジョン2040(国土交通省、2025年6月)をもとに作成

    航空管制のデジタル化は、管制官やパイロットの仕事を置き換えるものですか

    置き換えるという設計ではありません。欧州の計画でも、必要な技術要素の一つとして「人と機械の組織化」が挙げられており8、判断と機械の処理をどう組み合わせるかが課題になっています。声で伝えていた内容をデータに置き換える取り組みも4、負荷を減らす手段であって、判断そのものを取り上げるものではありません。

    TBO(軌道ベース運用)とは何ですか

    航空機の軌道がデジタル技術により管制機関や航空関係者へリアルタイムに共有され、その情報を活用して最適な管制運用を行うための概念です1。同じ情報を関係者が同時に持つという発想が中身になります。

    SWIM(航空情報共有基盤)はいつから使われますか

    産学官で提供する情報サービスやセキュリティ管理等の詳細を検討したうえで、2025年より初期サービスを開始する予定です3。検討の段階からセキュリティ管理が組み込まれている点が特徴です。

    リアルタイム連携やセキュリティ設計の経験は、この分野で通用しますか

    共有基盤の設計にはセキュリティ管理が組み込まれており3、今後の推進には産学官の連携が重要だと位置づけられています9。リアルタイム連携や共有基盤の設計に携わってきた経験は、この分野でも生かせる材料になります。

    航空管制の分野に関わる案件は、どこで探せますか

    案件の数や条件は時期によって変わるため、まずは実際の案件情報に目を通し、これまでの経験に近い条件があるかを確かめてみることをおすすめします。登録すると、自分の経験に合う条件をより具体的に確認できます。

    リモートワーク案件をお探しの方へ

    Remoguは、株式会社LASSICが運営するITエンジニア・デザイナー専門のリモートワーク案件紹介サービスです。フルリモート・ハイブリッドの案件から、スキルに合うものを探せます。

    航空交通のデジタル化は、派手な自動化からではなく、声をデータに置き換えるところから進んでいます。まずはリアルタイム連携や基盤のリモート案件が、いまどんな条件で並んでいるかを見てみてください。

    フルリモートの案件を見る30秒で無料登録

    会員登録無料 / 案件閲覧・相談は無料

    ※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。

    出典・参考情報

    *1 国土交通省「将来の航空交通システムに関する長期ビジョン2040」用語の脚注(2025年6月)
    *2 国土交通省「将来の航空交通システムに関する長期ビジョン2040」背景(2025年6月)
    *3 国土交通省「将来の航空交通システムに関する長期ビジョン2040」背景(2025年6月)
    *4 国土交通省「将来の航空交通システムに関する長期ビジョン2040」背景(2025年6月)
    *5 国土交通省「将来の航空交通システムに関する長期ビジョン2040」背景(2025年6月)
    *6 国土交通省「将来の航空交通システムに関する長期ビジョン2040」背景(2025年6月)
    *7 国土交通省「将来の航空交通システムに関する長期ビジョン2040」背景(2025年6月)
    *8 国土交通省「将来の航空交通システムに関する長期ビジョン2040」海外の動向(2025年6月)
    *9 国土交通省「将来の航空交通システムに関する長期ビジョン2040」今後の取組の進め方(2025年6月)
    *10 Remoguサイト公開情報(フルリモート可能案件の割合)