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    カーボン会計の案件|配分のロジックが計算根拠になります

    「削減が数字に出るのはどれか」を示す図です。業界平均値/直接のデータ/調達量だけ/削減が映るを並べています。強調しているのは削減が映るです。

    📘 この記事でわかること

    • 二次データで算定すると調達量を減らす一手しか残らないことと、一次データが必要になる理由
    • 活動量と排出原単位という2つの入力が何を指すのかと、社内のどのデータから拾えるかの対応関係
    • 組織のデータを使うときに必要な配分のロジックが、そのまま検証に耐える計算根拠になること

    排出量の算定式を精緻に組んでも、削減の手立てが増えるとは限りません。業界平均値などの二次データで計算する限り、打てる手は調達量を減らすことだけに絞られます。数字の作り方を変えない限り、現場の削減努力は反映されません。ここでは、一次データを活用する具体的な手順と、後から検証を受けても崩れない計算根拠の残し方を整理します。

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    1. 平均値で組むと、削減が数字に出ません

    環境省の「1次データを活用したサプライチェーン排出量算定ガイド」は、主に2次データ利用を中心とした算定方法を解説する基本ガイドラインの別冊として位置づけられています1。基本ガイドラインを読んでいる設計者ほど、この別冊の存在を見落としがちです。Scope3排出量は多くが自社の管轄外にあり、一般的な算定方法では活動量の削減以外の方法で排出量を減らすことが困難だと本ガイドは指摘しています2

    なぜ二次データでは打てる手が一つに絞られるのか

    カテゴリ1で調達する製品・サービス等の排出量を業界平均値等の2次データで算定する場合、調達量を減らすことしか事実上、排出量を削減する有力な方法がありません3。算定式そのものは正しく組めても、入力に業界平均値を置いた時点で、答えの動かし方は一つに固定されます。

    二次データだけで組んだ算定モデルは、担当者が代わっても同じ結果を返し続けます。ただしその数字は、サプライヤーが実際に取り組んだ削減の内容を映していません。正しく計算できるのに何も変わらないという状態を崩す設計こそが、この領域でエンジニアに求められる仕事です。GX関連の案件では、環境部門や経理部門との会話が発生する場面が増えています。算定ロジックをコードに落とし込む力に加えて、部門をまたいだ前提のすり合わせを進められる経験が、評価の軸になりつつあります。

    算定式を精緻に組むことよりも、入力データの出どころを一次に近づけることのほうが、削減の打ち手を増やします。サプライヤー等の排出削減努力を反映し、Scope3排出量の削減を実現するには、企業バリューチェーン内の固有活動から得た1次データの活用が必要不可欠であり、そのためにサプライヤー等との協力が求められます4。ここから先の章では、その1次データをどう入手し、どう配分し、どう検証に耐えさせるかを順に見ていきます。

    図1:二次データと一次データで打てる手の違い
    図1:二次データで算定したときと、一次データを使ったときの打てる手の違い
    図1:二次データと一次データで打てる手の違い 二次データ(業界平均値)で算定 打てる手:調達量を減らすことだけ 一次データ(サプライヤー実績)で算定 削減努力がそのまま反映される

    図の作成:Remogu編集部。ガイドの記述を整理したもので、統計データではありません

    2. 入力になるのは活動量と原単位です

    基本ガイドラインは、排出量の算定方法を大きく2通り紹介しています。関係する取引先固有の排出量データ等を用いる方法(1次データ)と、排出原単位データベース等を用いる方法(2次データ)です5。どちらの方法でも、式の形自体は同じで、活動量に排出原単位を掛け合わせる構造になっています。この2通りは優劣の関係ではなく、入手できるデータの性質によって使い分けるものとして紹介されています。

    活動量と排出原単位、2つの入力の意味

    活動量は事業者の活動の規模に関する量で、電気の使用量、貨物の輸送量、廃棄物の処理量、取引金額等が含まれます。排出原単位は、その活動量あたりの温室効果ガス排出量を指します6。設計の起点はここにあります。活動量をどこから拾うかを決めない限り、原単位をどこから調達するかも決まりません。

    どちらのデータを一次データにするかは、カテゴリごとに個別の判断になります。貨物の輸送量のように既存の物流システムから比較的拾いやすい活動量もあれば、廃棄物の処理量のように委託先へ個別に確認しないと把握できない活動量もあります。設計の初期段階でこの粒度の差を洗い出しておくと、後工程での手戻りを抑えられます。

    活動量の例と、社内のどこから拾うか

    活動量に含まれる要素は、設備管理や物流、会計といった既存の社内システムに散らばっています。取引金額が活動量に含まれる点は見落とされやすく、算定基盤を新たに作らなくても、会計データを起点に活動量を積み上げられる場合があります。どのデータを一次データの入力にするかは、算定対象のカテゴリごとに個別に検討する必要があります。これらのデータは、算定とは別の目的で既に運用されている場合があり、新しい仕組みを一から立ち上げる必要は生じにくくなります。次の表は、活動量の例と、それぞれが近いと考えられる社内データの対応を整理したものです。

    活動量の例近い社内データ
    電気の使用量設備・拠点のエネルギー管理データ
    貨物の輸送量物流・出荷実績データ
    廃棄物の処理量廃棄物管理の記録
    取引金額会計・購買データ

    入力の候補が社内のどこにあるかを洗い出せたら、次に必要になるのは、その候補をどの順番で検討するかという判断です。洗い出しの段階で複数の候補が並んだときは、精度よりもまず継続して取得できるかどうかを優先する判断が現実的です。

    3. 直接もらうデータには順序があります

    サプライヤーから1次データの提供を受けられる段階になっても、どの粒度のデータを求めるかは任意ではありません。製品ベース排出量データを入手できる場合はその活用を検討し、入手できない場合に組織ベース排出量データの活用可能性を検討することになります7。順番を逆にすると、後から粒度を細かくし直す手戻りが発生します。

    製品ベースを先に検討し、入手できなければ組織ベースを検討する

    製品ベース排出量データは、対象の製品やサービスに直接紐づいた数字です。組織ベース排出量データは、サプライヤーの拠点や事業全体の排出量から出発するため、後の章で扱う配分の作業が必要になります。設計の初期段階でこの順序を関係者と共有しておくと、サプライヤーへの依頼内容も具体的に伝わりやすくなります。

    サプライヤーへの依頼は、算定担当者だけで完結する作業ではありません。調達部門や品質部門とすり合わせながら、どのデータをどの頻度で受け取るかを決める調整が発生します。エンジニアが担うのは算定式を書くことだけでなく、この調整の材料になる要件を、誰にでも伝わる形に落とし込む役割です。受け取ったデータの単位や集計期間が社内の基準と揃っているかどうかも、この段階で確認しておくべき点です。単位をあとから揃え直す作業は、算定全体の日程を圧迫します。

    図2:製品ベース排出量データを先に検討する流れ
    図2:製品ベースを先に検討する流れ 製品ベース排出量データの入手を検討 入手できる場合 製品ベースの活用を検討 入手できない場合 組織ベースの活用可能性を検討

    図の作成:Remogu編集部。ガイドが示す検討順序を整理したもので、統計データではありません

    製品ベースか組織ベースかを見極める視点は、算定の設計だけでなく、参画先を選ぶときの見立てにも使えます。組織ベースのデータしか無い現場では、次章で扱う配分の設計力がより強く求められる傾向があります。サプライヤーの体制によっては、初回の依頼では組織ベースのデータしか用意できない場合もあります。その場合でも、将来的に製品ベースへ移行できるかどうかを対話の中で確認しておくと、次年度以降の算定設計が組みやすくなります。

    4. 組織のデータは、配分しないと使えません

    組織ベース排出量データを受け取っただけでは、算定に使える数字にはなりません。当該サプライヤーの納入分に該当する排出量を何らかの形で切り出す、つまり売上金額ベース等の何らかのロジックに基づいて算定事業者に配分することが必要になります8。この配分の作業を後回しにすると、受け取ったデータが手元で止まったままになります。

    納入分をどう切り出すか、配分のロジックを決める

    組織ベース排出量データには、活動やプロセス、生産ラインレベルから企業レベルまでの粒度が存在します8。粒度が粗いデータを受け取った場合ほど、配分のロジックの設計が計算結果を左右します。配分の基準を細かく増やすことよりも、基準を一貫させて運用し続けることのほうが、後から数字を追いかけられる状態を保ちます。

    配分に必要な決めごと

    配分の設計では、少なくとも3つの決めごとを固める必要があります。何を基準に配分するか、どの粒度で受け取ったデータを扱うか、そして納入分としてどこまでの範囲を切り出すかです。この3つを先に文書化しておくと、担当者が変わっても同じ数字を再現できる状態を保てます。次の表に、それぞれの決めごとの内容を整理しました。

    決めごと内容
    配分の基準売上金額ベース等、何らかのロジックを定める
    粒度活動・プロセス・生産ラインレベルから企業レベルまでの範囲
    切り出す範囲納入分に該当する排出量を特定する

    粒度の粗いデータをそのまま使うと、複数の納入先に同じ排出量を重複して計上してしまう恐れがあります。配分のロジックは、この重複を防ぐための仕組みでもあります。基準を一度決めた後は、算定期間が変わっても同じ基準を使い続けることが、数字の一貫性を保つ条件になります。

    この3つの決めごとを固定した状態こそが、次章で扱う「配分のロジック」の実体です。決めごとが曖昧なまま算定を進めると、監査や参画先からの問い合わせに個別対応する負担が積み重なります。

    5. 配分のロジックが、計算根拠になります

    カーボン会計の実装で難しいのは計算式そのものではありません。難しいのは、出した数字がどう作られたかを後から説明できる状態に保つことです。配分の基準・粒度・切り出す範囲という3つの決めごとは、そのまま計算根拠の中身になります。配分の基準や粒度をあいまいにしたまま算定を終えると、翌年度に同じ数字を出せなくなるという問題が後から表面化します。

    同じロジックを使えば、同じ数字を再現できる

    計算式よりも、配分のロジックのほうが計算根拠になります。同じ配分の基準・粒度・切り出す範囲を適用すれば、担当者や算定の時期が変わっても同じ数字を再現できます。逆に、ロジックの一部を変えれば、入力の元データが同じでも出てくる数字は変わります。この性質を理解しておくと、数字が動いたときに「何を変えたのか」を切り分けやすくなります。

    図3:同じ数字を再現できる条件
    図3:同じ数字を再現できる条件 配分の基準 粒度 対象範囲の切り出し方 配分のロジック 同じロジック→再現できる数字 ロジックが変わる→異なる数字

    図の作成:Remogu編集部。ガイドの記述をもとに整理したもので、統計データではありません

    配分のロジックを記録に残す作業は、算定担当者一人で完結できるものではありません。基準を決めた根拠、粒度を選んだ理由、対象範囲を切り出した手順を、誰が読んでも辿れる形にしておくことが、再現性を支える土台になります。

    配分のロジックを固定し、記録として残しておくことは、算定の作業だけで完結しません。その記録は、次章で扱う検証の場面でそのまま説明の材料になります。

    6. 検証を受ける前提で作ります

    本ガイドには、1次データを活用したScope3排出量の保証・検証に関する章が置かれ、第三者保証・検証の意義が扱われています10。算定の設計段階から検証を受ける前提で作業を組んでおくと、後から根拠を再現できずに立ち止まる事態を避けられます。

    1次データと2次データ、それぞれの得手不得手

    1次データと2次データは、どちらか一方だけを使えばよいという関係ではありません。1次データはサプライヤーの削減努力を反映できる、進捗を管理できる、サプライヤー間で比較できるという利点がある一方、入手できない場合や入手コストが高い場合があり、データ品質の評価が難しい場合もあります。2次データは1次データが利用できない場合でも算定でき、排出量の多いカテゴリ等を特定するのに役立つ一方、削減努力を反映できず、削減目標の進捗を管理しにくいという性質があります9。次の表に両者の関係を整理しました。

    観点1次データ2次データ
    削減努力の反映反映できる反映できない
    進捗管理管理できる管理しにくい
    サプライヤー間比較比較できる
    入手のしやすさ入手できない・コストが高い場合がある1次データが利用できない場合でも算定できる
    データ品質・活用場面評価が難しい場合がある排出量の多いカテゴリ等の特定に役立つ

    どちらのデータを使うかを決めた後も、その選択理由を記録に残しておく必要があります。1次データを使わなかったカテゴリについて、なぜ2次データを選んだのかを説明できる状態にしておくことが、検証の場面で問われたときの備えになります。

    検証を見据えて、配分の根拠を記録に残す

    案件の件数を積み上げることよりも、記録の残し方を整えることのほうが、検証の場面を左右します。配分の基準・粒度・切り出す範囲をその都度口頭で決めていると、担当者の記憶に依存した状態になり、検証で根拠を問われたときに再現できません。決めごとを都度記録に残す運用に変えるだけで、同じ問いに何度でも同じ答えを返せるようになります。エンジニアがこの記録の設計に関わることで、算定結果の再現性そのものが仕様の一部になります。次にどの案件へ参画するときも、この記録の型を持ち込めることが強みになります。

    図4:検証を通せる配分ロジックと、通せない配分ロジック
    図4:検証を通せる配分ロジックと、通せない配分ロジック 根拠を記録している 説明ができる 検証を通せる 根拠が記録にない 説明ができない 検証で立ち止まる

    図の作成:Remogu編集部。第三者保証・検証の章がある位置づけを踏まえた一般的な整理で、留意点の内容そのものではありません

    算定式の精度を上げる作業よりも、配分の根拠を記録として残す作業のほうが、あとから効いてきます。次に手をつけるとよいのは、この記録の形を決めるところです。

    7. よくある質問

    カーボン会計の案件では、どのような経験が評価されますか

    算定式を実装できることに加え、活動量をどの社内データから拾うか、組織ベースのデータをどう配分するかといった設計判断を、クライアントと協議しながら決めてきた経験が評価されやすい領域です。数字を出す作業よりも、数字の作り方を記録に残し、後から説明できる状態を保ってきた経験が強みになります。算定式の細部よりも、判断の経緯を言語化できるかどうかが、参画先での信頼につながります。

    組織ベースのデータしかない場合、案件はどう進みますか

    組織ベースの排出量データしか入手できない場合は、配分の基準・粒度・切り出す範囲をどう定めるかという設計作業が案件の中心になります。算定式の実装よりも、この配分ロジックをクライアントと協議しながら決め、記録に残す工程に時間を割く案件が多い領域です。

    排出原単位はどこから入手できますか

    基本ガイドラインは、排出原単位データベース等を用いる方法を、算定方法の一つとして紹介しています5。どの原単位データベースを使うかは案件ごとの前提によって異なるため、この記事では特定の数値を示さず、算定方針を決める段階で確認すべき論点として扱っています。案件によっては、クライアント側が既に契約しているデータベースを指定する場合もあるため、着手前に確認しておくとロジックの設計が進めやすくなります。

    1次データと2次データは、どちらを優先すべきですか

    優劣で選ぶ論点ではありません。1次データは削減努力を反映でき進捗も管理できますが、入手コストやデータ品質の評価という壁があります。2次データは1次データが使えない場面でも算定を進められ、排出量の多いカテゴリの特定に役立ちます9。カテゴリと入手可能性に応じて使い分ける前提で設計する案件が中心です。

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    ※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。

    出典・参考情報

    *1 環境省「サプライチェーン排出量算定ガイド」1.3.1 基本ガイドラインとの関係(2025年3月)
    *2 環境省「サプライチェーン排出量算定ガイド」1.1 背景と目的(2025年3月)
    *3 環境省「サプライチェーン排出量算定ガイド」1.1 背景と目的(2025年3月)
    *4 環境省「サプライチェーン排出量算定ガイド」1.1 背景と目的(2025年3月)
    *5 環境省「サプライチェーン排出量算定ガイド」1.3.1 基本ガイドラインとの関係(2025年3月)
    *6 環境省「サプライチェーン排出量算定ガイド」第2章 用語の定義(2025年3月)
    *7 環境省「サプライチェーン排出量算定ガイド」4.3 1次データの種類(2025年3月)
    *8 環境省「サプライチェーン排出量算定ガイド」4.3 1次データの種類(2025年3月)
    *9 環境省「サプライチェーン排出量算定ガイド」表5 1次データと2次データのメリット・デメリット(2025年3月)
    *10 環境省「サプライチェーン排出量算定ガイド」第6章 保証・検証(2025年3月)
    *11 Remoguサイト公開情報(案件の90%以上がフルリモート可能)