VBA業務委託の現在地|2026年の報酬とフルリモート案件
朝、出社して、いつものExcelファイルを開く。ボタンを押すと、3秒で集計が終わる。――そのボタンの裏側で、20年以上働き続けている言語があるのを、ご存じでしょうか。
名前を、VBA(Visual Basic for Applications)。1993年、Microsoft Excel 5.0と一緒に世に出てから、今年で33年目に入りました※1。AIが幅をきかせる2026年の現場でも、銀行の業務ツール、製造業の生産管理シート、自治体の帳票処理。ありとあらゆる場所で、しれっと動き続けています。
今日は、その「しれっと」の正体と、業務委託として参画したときに見える景色の話です。
目次
1. VBAとは何か——Microsoft公式情報と設計思想
VBA(Visual Basic for Applications)とは、Microsoft Officeアプリケーションに搭載されているプログラミング言語です。Excel・Word・Access・PowerPoint・Outlookなどの機能を、コードで自由に操作・拡張できます※2。Microsoft Learnの公式ドキュメントには「マウス・キーボード・ダイアログボックスで行えるほぼすべての操作はVBAでも実行でき、一度VBAで実装すれば100回でも簡単に再現できる」と書かれています※3。繰り返し作業の自動化こそが、この言語の本領です。
1-1. VBAが生まれた日
物語は1993年に始まります。アメリカ・ダートマス大学で生まれた教育用言語BASICを、Microsoftが汎用言語Visual Basicに発展させ、その後Office製品に組み込んだ。こうして誕生したのがVBAです※1。当時のExcel 5.0に初搭載されてから、2026年で33年目に入りました。
⚠️ 混同しがちな3つの「VB」——覚えておくと損しない
- VBA(Visual Basic for Applications):Office製品に組み込まれた自動化言語。本記事のテーマ
- VB(Visual Basic):Windowsアプリ開発用の汎用言語。VBAの親にあたる
- VBScript:Webページやシステム管理向けのスクリプト言語。現在は事実上廃止
1-2. 設計思想は「Officeユーザーのための拡張」
VBAの設計思想は明快です。「Officeをすでに使いこなしている人が、その延長線上でプログラミングを身につけられるようにする」——ここに尽きます。マクロの記録機能でコードを自動生成し、それを読んで学ぶ。Microsoft Learnも「Record Macro(マクロの記録)は、VBAを学ぶための優れたツール」と位置づけています※3。つまりVBAは、エンジニアではなく「業務を知る人」のための言語として設計されました。この点が、2026年の現在も生き残っている理由の中核にあります。
2. 2026年、VBA案件はどう変わったのか
2-1. Copilotの登場で「書く」コストが下がった
「Microsoft 365 Copilotが普及したら、VBAは要らなくなる」――2024年頃から、よく聞かれるようになった話です。結論から言えば、案件は消えていません。むしろ、変質しながら残っています。
2025年から2026年にかけて、Microsoft 365 CopilotはWord・Excel・PowerPointへの統合を強めてきました※4。Copilotに自然言語で指示するとVBAコードが生成され、エラーハンドリングやコメント生成も補助される環境が一般化しました※5。これは業務委託のVBAエンジニアにとって「仕事の半分を取られた」ことを意味するのか。実は、逆です。
2-2. なくならない3つの仕事
編集部調べでは、2025〜2026年に募集されているVBA業務委託案件には、Copilotが代わりにくい仕事が共通して残っています。
| 領域 | 内容 | Copilotで代替しにくい理由 |
| 既存マクロの保守 | 銀行・証券・保険・製造業の長期稼働ツール群の改修 | 業務ルールが暗黙知化しており、現場ヒアリングと一体不可分 |
| RPA・他システム連携 | UiPath・WinActor・Power Automateとの組み合わせ | プロセス全体の設計判断が必要 |
| 業務要件の翻訳 | 現場が「やりたいこと」をVBAに落とし込む | 要件定義は人間同士の対話が前提 |
2025年8月〜2026年1月の業務委託案件募集要項(編集部調べ・公開案件約1,000件抽出)から共通要素を整理した表です。
また、2024年版「中小企業白書」によると、中小企業のデジタル化途上段階ではExcelとVBAが現役の選択肢として並び続けています※6。日本の業務現場ではVBAは「最新技術」ではなく「インフラ」として動き続けており、インフラの保守には人が必要です。これが案件が消えない構造的な理由です。
3. スキルレベル別ロードマップ——初心者からエキスパートまで
VBAのスキルレベルを語るとき、業界で参照される指標のひとつが「VBAエキスパート」資格です。Excel VBA・Access VBAそれぞれにベーシック/スタンダードの2階層があり、合格者には国際標準規格IMS Global Learning Consortium準拠のオープンバッジが交付されます※7。
🟢 初級(経験1年未満〜1年)
できること:マクロ記録の編集・基本構文・簡単な集計自動化
取れる案件例:副業・短時間の小規模ツール改修
参考資格:Excel VBAベーシック
🔵 中級(経験1〜3年)
できること:クラスモジュール・配列・エラーハンドリング・UserForm
取れる案件例:既存マクロの機能追加・保守
参考資格:Excel VBAスタンダード
🟡 上級(経験3〜5年)
できること:Access・SQL連携・ADO/DAO・大規模設計・RPA連携
取れる案件例:金融・製造の業務システム改修PJ
参考資格:スタンダードクラウン+実務
🔴 エキスパート(経験5年以上)
できること:アーキテクチャ設計・要件定義・PMO・PL業務
取れる案件例:プライム工程・上流参画
参考資格:実務+他言語経験
初級から中級は、書籍とハンズオンでなんとかなる距離です。問題は、中級から上級。配列処理の最適化、ADO/DAOを使ったデータベース連携、ETL処理の実装、複数モジュールへの分割と保守性の確保※8——Excel単体で完結する世界から、Access・SQL Server・他システム連携の世界へと扱う領域が広がるからです。ここを超えると業務委託の単価レンジが大きく変わります。
4. VBAが動いている現場——業種別プロダクト事例
VBAは「Excelのおまけ」ではありません。日本の基幹的な業務現場で、いまも動き続けています。
| 業種 | 典型的なVBA活用シーン | 連携技術 |
| 金融(銀行・証券) | 業務効率化ツール群の保守・Excel設計書システムの基本設計〜製造・勘定系業務の自動化 | SQL Server・Oracle |
| 製造業 | 生産管理・品質管理レポートの自動集計・業務支援ツール開発 | Power BI・Access |
| 公共・自治体 | 帳票生成・データ処理・申請書類の自動化 | RPA(WinActor等) |
| 商社・流通 | 受発注データの加工・顧客送信用PDF化・データ統合 | UiPath・PDF出力ツール |
| 介護・医療 | 業務記録の集計・シナリオベースのRPA設計支援 | RPAツール一般 |
上記は、2025年8月〜2026年1月の業務委託案件の公開募集要項を編集部で集計し、業種別に頻出する案件タイプを整理した表です。
VBAが組み込まれているのはExcelだけではなく、Microsoft公式の言語リファレンスでは、Excel・Word・Access・PowerPoint・Outlook・Visio・Projectなどに対応するオブジェクトモデルが定義されています※9。「Office横断」の自動化案件も継続的に発生しています。
5. VBA業務委託の報酬感(参考)
Remogu「フリーランスエンジニア職種別・言語別月額報酬ランキング2024」では、2023年1月〜2024年2月に発生したフリーランス案件2,450件を集計対象とし、業界全体の月額報酬の上位12職種平均は約76.5万円と報告されています(前回2022年調査から約3万円アップ)※10。
| レベル | 月額報酬の目安レンジ(参考) | 案件タイプの例 |
| 初級〜中級 | 月額40〜55万円台 | 保守・小規模改修 |
| 中級〜上級 | 月額55〜75万円台 | 機能追加・他システム連携 |
| 上級〜エキスパート | 月額75〜90万円台+ | 設計・要件定義・PMO兼務 |
Remogu「フリーランスエンジニア職種別・言語別月額報酬ランキング2024」※10および編集部による2025年8月〜2026年1月の公開募集要項調査をもとに作成。レンジはあくまで参考であり、実際の参画条件は個別のスキル・実績・案件特性によって変動します。
💰 VBA業務委託で単価を上げる3つの道
- ① データベース領域を強める:Access・SQL Server連携などの深いデータベース経験を積む
- ② RPA組み合わせを身につける:UiPath・WinActor・Power Automateとのセット対応で希少性を上げる
- ③ 業務理解を深める:要件定義・PMOまで担える対人スキルを磨く。技術の深さと業務理解の組み合わせが評価される
6. VBA案件とリモートワークの相性
「VBA案件って、客先常駐ばかりじゃないんですか?」――数年前なら、そうでした。今は、違います。テレリモ総研「テレワーク・リモートワーク・在宅勤務の実態調査」では、ITエンジニア職におけるリモート定着が一般職種より高い水準で維持されており、特にプロジェクトベースで業務遂行が可能な開発系職種ではリモート対応の継続が進んでいます※12。
VBAのリモート成立の理由は3つあります。
1つ目、VBAはローカルPCのOfficeアプリ上で開発・実行が完結するため、開発環境のクラウド共有が容易です。
2つ目、既存マクロの保守案件はクライアントの仕様書とコードがあれば作業を進められ、対面よりも文書ベースの確認が向いています。
3つ目、RPA・他システム連携の案件も、テスト環境を貸与してもらえば物理的なオフィス稼働は不要なケースが多くなりました。
以下は、リモートVBA案件を選ぶときの確認項目をまとめた表です。
| 確認項目 | リモート対応の見極めポイント |
| 稼働形態 | フルリモート/一部リモート(週1〜2出社)/オンサイト中心の3区分のどこに該当するか |
| 開発環境の貸与 | クライアント貸与PC/自前PC+VPNのどちらか |
| コミュニケーション | 日次MTG/週次MTG/非同期Slack中心のどれか |
| 稼働時間の柔軟性 | コアタイム指定の有無・稼働時間帯の自由度 |
| セキュリティ要件 | クライアント側の在宅稼働規定・データ取扱い範囲 |
2025〜2026年に公開された業務委託案件のうち、フルリモートまたは一部リモート可の案件が一定割合で常時存在しており、地方在住エンジニアが東京・大阪のクライアントの案件に参画するケースが定着しています。
7. まとめ
気づかれずに、しれっと動き続けてきた言語。それがVBAの正体です。AI時代の今も、その「しれっと」が消える兆しはありません。ただし、Copilotが代わりにくい仕事を選ぶ目利きが、これからは要ります。
📋 この記事のポイント
- VBAは1993年生まれの言語で、2026年の今もMicrosoft Officeのインフラとして稼働しています
- Copilot普及後も、既存マクロ保守・RPA連携・要件定義の3領域で業務委託案件は継続発生しています
- スキルレベルは初級〜エキスパートの4段階。中級→上級の壁が報酬の分岐点です
- 業種は金融・製造・公共・商社など多岐にわたり、業務委託の報酬レンジは月額40〜90万円台が中心(参考)
- リモート対応案件は増加傾向で、地方在住で東京案件に参画する道は開かれています
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8. よくある質問(FAQ)
出典・参考情報
※1 Visual Basic for Applications – Wikipedia(2026年4月時点)
※2 VBA(Visual Basic for Applications / Excel VBA)とは – IT用語辞典 e-Words
※3 Getting started with VBA in Office|Microsoft Learn
※4 Release Notes for Microsoft 365 Copilot|Microsoft Learn(2026年4月時点)
※5 Microsoft 365 Copilot Updates in 2026: What’s New(2026年3月)
※6 2024年版「中小企業白書」第7節 DX|中小企業庁
※7 VBAエキスパート公式サイト|オデッセイ コミュニケーションズ
※8 Library reference for Visual Basic for Applications (VBA)|Microsoft Learn
※9 Office Visual Basic for Applications (VBA) reference|Microsoft Learn
※10 Remogu「フリーランスエンジニア職種別・言語別月額報酬ランキング2024」(株式会社LASSIC、2024年4月)
※11 パーソル総合研究所「第十回・テレワークに関する調査」(2025年8月)
※12 テレリモ総研「テレワーク・リモートワーク・在宅勤務の実態調査」(株式会社LASSIC運営)