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    業務委託で立て替えた費用は何を渡せば足りる?精算書と領収書の扱いの違い

    監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

    「業務委託で立て替えた費用」を示す図です。報酬/立て替えた費用/ひとつの請求書を並べています。強調しているのはひとつの請求書です。まとめると扱いが変わると添えています。

    📘 この記事でわかること

    • 領収書の宛名だけでは相手に届かない理由と、精算書を添えると保存要件を満たせること
    • 立て替えた側が適格請求書発行事業者でなくても相手の控除は止まらないことと、帳簿だけで保存要件を満たせるときがあること
    • 受け取る領収書には簡易な形やデータで渡されることもあることと、誤りがあったときの進め方

    機材を先に買って、領収書を添えて発注側に請求しました。しばらくして、精算の担当者から連絡が届きます。「宛名が違うので、このままでは処理できません」。手元に領収書があるのに、そのままでは相手に届いていません。

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    1. 領収書の宛名だけでは、相手の保存要件に届いていない理由

    宛名は、支払った人を示すもの

    機材を買うときも、打ち合わせのために移動するときも、レジや窓口では領収書を受け取ります。そこに書かれる宛名は、実際に代金を払った人の名前です。立て替えて払う場面でも仕組みは変わらず、払った本人の名前がそのまま残ります。パソコンの周辺機器を店舗で買ったときも、オンラインサービスの利用料をカード払いで立て替えたときも同じです。発注側から見ると、この宛名だけでは誰の代金を立て替えたものかが伝わりません。

    そのため、立て替えた本人宛の適格請求書をそのまま発注側に渡しても、発注側自身の適格請求書としては扱われません1。宛名の上では、あくまで払った本人の買い物として書かれているためです。

    同じような場面は、機材だけに限りません。取材用の書籍を買ったときも、システムの利用料を立て替えたときも、受け取る適格請求書の宛名はその都度、払った本人になります。

    そのままでは、発注側の書類にならない

    この点は、立て替えという進め方の性質からも見えてきます。支払いの窓口では立て替えた本人がその場で払い、発注側との関わりはそこに書かれません。渡された適格請求書だけを見ても、発注側はそれが自分の課税仕入れだと示す材料を持てません。

    図1:領収書の宛名が、どこまで届くか
    領収書の宛名が、どこまで届くか 支払先 適格請求書 立て替えた人 届いていない 発注側

    図の作成:Remogu編集部。適格請求書の宛名がどこまでの範囲を示すかを整理したもので、個々の取引の判断を示すものではありません。

    つまり、宛名の変更を求めるのではなく、宛名はそのままで、別の書類を組み合わせる発想に切り替える必要があります。次の章で扱う精算書が、その役割を担います。

    宛名を書き換えてもらうよう頼むよりも、立て替えた側で書類をひとつ足す進め方のほうが、支払いの現場を止めずに済みます。店舗や窓口で宛名の訂正を申し出るのは手間がかかり、断られる場面もあります。

    ここまでで、宛名だけでは発注側に届いていない理由が見えました。次の章では、何を添えれば届くのかを具体的に確かめます。

    2. 精算書を添えると、相手の保存要件を満たせます

    適格請求書と精算書を、ひとつの組にする

    前の章で見たとおり、宛名は払った本人のままです。そこに立替金精算書等を添えると、その課税仕入れが発注側のものであることが明らかになり、発注側の請求書等の保存要件を満たします2

    つまり、宛名を書き換える必要はなく、もう一枚の書類を組にする発想です。立て替えた本人が用意するのは、受け取った適格請求書と、支払の内容をつなぐ精算書の2点です。たとえば、勉強会の会場費を立て替えたときは、日付や金額、何のための支出かを書き添えた精算書を、受け取った適格請求書と一緒に渡します。

    保有している書類発注側の保存要件
    立替払いをした人宛の適格請求書だけそのままでは、発注側自身の適格請求書として扱われません
    立替払いをした人宛の適格請求書+立替金精算書等発注側の請求書等の保存要件を満たします

    精算書を用意するタイミングは、払った直後がやりやすくなります。日をおくと、何のための支出だったかや、支払先の名称を思い出すのに時間がかかります。

    何を書くかは、資料が示す範囲を超えない

    精算書に何を書くかについては、様式や記載項目までを定める資料は確かめられていません。ここでは、適格請求書と組にして保存する、という保存要件との関わりだけを確かめておきます。

    実務では、日付や金額、支払先の名称を含めておくと、あとから見返したときに突き合わせがしやすくなります。書式そのものを固定する話ではなく、発注側が内容を確かめられる形かどうかが軸です。

    図2:相手の保存要件を満たす書類の組み合わせ
    相手の保存要件を満たす書類の組み合わせ 適格請求書 + 立替金精算書等 保存要件を 満たします

    図の作成:Remogu編集部。書類の組み合わせと保存要件の関係を整理したもので、統計データではありません。

    精算書を後から探すよりも、立て替えた直後に適格請求書と一緒にまとめておくほうが、請求のタイミングで慌てずに済みます。

    ここまでで、宛名と精算書の組み合わせが保存要件を満たす形だと分かりました。次の章では、立て替えた本人が適格請求書発行事業者でないときを確かめます。

    3. 立て替えた側が適格請求書発行事業者でなくても、相手の控除は止まりません

    支払先が適格請求書発行事業者なら

    自分が適格請求書発行事業者として登録していないと、発注側の処理に響くのではと不安になるかもしれません。たとえば、開業してまだ間もなく、登録を済ませていないときも同じです。支払先が適格請求書発行事業者であれば、発注側は仕入税額控除ができます3

    つまり、控除ができるかどうかを決めているのは、立て替えた本人が登録しているかどうかではなく、支払先が登録しているかどうかです。立て替えという進め方は、あくまで代金を一時的に立て替えて払うことにとどまります。

    立て替えた本人の立場と、支払先の立場は別

    立て替えた本人が適格請求書発行事業者かどうかは、この保存要件には関わりません。発行事業者の登録は、代金を実際に受け取る支払先の側の話だからです。

    そのため、適格請求書発行事業者として登録していないからと、立て替えを避けようとする必要はありません。前の章で見た、適格請求書と精算書の組み合わせを保存する形は、ここでも変わりません。

    登録の有無を気にするよりも、支払先が適格請求書発行事業者かどうかを確かめておくほうが、発注側の処理に直結します。

    発注側の担当者に尋ねられても、立て替えた本人が登録しているかどうかを伝える場面は、通常は生じません。書類の組み合わせが保存要件を満たしているかどうかが、確かめられる範囲です。

    立場にかかわらず、案件そのものを離れた場所から進められる場面は増えています。Remoguは、案件の90%以上がフルリモート可能です。

    4. 書類がなくても、帳簿だけで保存要件を満たせる場合があります

    該当が確認できれば、書類の保存が要らないことがある

    ここまでは、適格請求書と精算書を組にして保存する形を見てきました。一方で、帳簿のみの保存が認められる課税仕入れに当たることが確かめられた場合は、適格請求書および立替金精算書等の保存は不要です4

    この扱いが及ぶのは、当たることが確かめられた課税仕入れに限られます。どの取引が当たるかについては、別に定めがあります。ここでは、その範囲には立ち入りません。

    取引の例要る書類
    通常の課税仕入れ適格請求書と立替金精算書等の保存が要ります
    帳簿のみの保存が認められると確かめられた課税仕入れ適格請求書と立替金精算書等の保存は不要です(帳簿の保存のみ)

    対象になるかどうかは、そのつど確かめます

    対象になるかどうかの線引きは、この記事の範囲を超えます。個々の取引ごとに、当たるかどうかをそのつど確かめる姿勢が実務では役立ちます。

    一覧を丸ごと覚えるよりも、当てはまるかどうかをその都度確かめるほうが、思い込みで判断する場面を減らせます。前の章で見た精算書の組み合わせも、対象になるかどうかが確かめられてから考える順番になります。

    図3:書類が要る取引と、帳簿だけで足りる取引の分かれ方
    書類が要る取引と、帳簿だけで足りる取引の分かれ方 課税仕入れ 書類の保存が 必要です 帳簿のみで 満たせます

    図の作成:Remogu編集部。課税仕入れの扱いが分かれる考え方を整理したもので、対象となる取引の一覧を示すものではありません。

    書類の扱いが条件付きで変わる取引を見てきました。次の章では、そもそも書類そのものが出ない取引を確かめます。

    5. そもそも書類が出ない取引もあります

    自動販売機や自動サービス機は、交付そのものが免除される

    適格請求書の交付義務が免除される取引がいくつか挙げられており、そのひとつが3万円未満の自動販売機・自動サービス機による販売等です6。打ち合わせの合間に飲料の自動販売機を利用したときのように、そもそも窓口で書類を受け取る場面そのものが考えられていない取引です。

    つまり、これらの取引では、適格請求書そのものが交付されません。前の章までに見た精算書の組み合わせを考える前に、そもそも書類が出ない取引に当たるかどうかを確かめます。

    3万円未満という金額の線引きがあります

    ここで挙げられているのは、3万円未満の自動販売機・自動サービス機による販売等という一点です。この先に他の取引が並ぶかどうかや、ここと違う金額の基準があるかどうかについては、この記事の範囲を超えるため触れません。

    コンビニエンスストアの店内に置かれた飲料の自動販売機で、少額の買い物をしたときなどが当てはまります。書類そのものを受け取らなくても、代金を払った事実は変わりません。

    一覧を丸ごと覚えるよりも、自動販売機や自動サービス機を利用した場面かどうかを、その都度思い出すほうが実務では役立ちます。

    書類が出ない取引もあれば、形が変わる取引もあります。次の章では、受け取る書類そのものの形を確かめます。

    6. 受け取る書類は、簡易な形やデータのこともあります

    小売や飲食、タクシーなどでは簡易な形が使える

    移動のためにタクシーを使ったときや、飲食店で打ち合わせをしたとき、受け取る書類は普段の適格請求書と少し違う形をしています。小売業や飲食店業、タクシー業等、不特定多数の相手に販売やサービスを行う事業では、記載事項を簡易にした適格簡易請求書を交付できます5。タクシーを降りるときに渡される小さなレシートのように、宛名を書く欄そのものが無いときもあります。

    つまり、書類の形が簡易だからといって、受け取り方を変える必要はありません。交付できる事業の種類が決まっている、という点を知っておけば十分です。

    図4:受け取る書類の3つの形
    受け取る書類の3つの形 適格請求書 従来からの形 適格簡易請求書 限られた業種向け 電磁的記録 (データ)

    図の作成:Remogu編集部。受け取る書類の形の違いを整理したもので、統計データではありません。

    コンビニエンスストアで消耗品を買ったときの領収書にも、同じ考え方が当てはまります。宛名の記入欄が無い、あるいは空欄のままになっているときは、簡易な形の書類として扱われていることがあります。

    交付に代えて、データで提供されることもある

    領収書は、いつも同じ形で交付されるとは限りません。適格請求書や適格簡易請求書の交付に代えて、これらに係る電磁的記録を提供することもできます7

    つまり、交付には、書類そのものを渡す形と、データとして提供する形があります。どちらであっても、受け取る側の扱いは変わりません。

    提供の形内容
    適格請求書・適格簡易請求書これまでどおりの書類として交付されます
    電磁的記録(データ)交付に代えて、データとして提供できます

    支払先が用意する専用サイトから、書類をダウンロードする形で受け取る場面もあります。受け取り方が変わっても、保存要件との関わりは変わりません。

    形が違っても、保存要件との関わりは変わらない

    簡易請求書は、記載事項が絞られている分、内容が薄いと感じるかもしれません。ですが、交付できる事業が不特定多数を相手にする業種に限られている以上、そこに書かれた内容で保存要件を満たす前提になっています。データで受け取ったときも、そこに書かれた内容が変わるわけではありません。

    そのため、簡易請求書だからと不安に感じて、追加の書類を求める必要はありません。前の章までと同じく、精算書を組み合わせて保存する流れに沿えば十分です。

    書類の見た目や渡され方で判断するよりも、宛名と精算書の組み合わせができているかを確かめるほうが、保存要件に直結します。

    受け取る書類の形はいくつかありますが、保存に必要な組み合わせという軸は共通しています。次の章では、受け取った書類に誤りがあったときを確かめます。

    7. 記載に誤りがあったとき

    記載に誤りがあれば、売手が修正したものを交付する

    領収書を受け取った後で、金額や品目が違っていると気づく場面もあります。たとえば、桁の数字が一つずれていた、というような場合です。交付した適格請求書等の記載事項に誤りがあったときは、売手である適格請求書発行事業者が、修正したものを交付しなければなりません8

    つまり、誤りに気づいた立て替えた本人が、自分で書き直すという進め方にはなりません。支払先に連絡して、修正された書類を新たに受け取ります。

    支払先へ伝えるときは、誤りの箇所を具体的に示すと、やり取りが早く済みます。日付や金額のどこが違うのかを、はっきり伝えることが助けになります。

    なお、立て替えた交通費が税務上どのように位置づけられるかについては、立替の交通費が税務上どう扱われるかを解説した記事で扱っています。今回は、消費税の控除に関わる部分だけを進めました。

    「宛名が違うので、このままでは処理できません」。冒頭のその一言も、結局は宛名だけでは相手に届いていないことを指していました。精算書という、もう一枚の書類を添える一手間が、その距離を埋めます。

    立替金と経費は何が違いますか

    経費は、発注側が直接払う費用です。立替金は、いったん別の人が払い、あとから同じ金額を請求する仕組みです。受け取る適格請求書の宛名は払った人になるため、発注側がそのまま自分の書類として使うには、立替金精算書等を組み合わせることが要ります2

    立て替えた人が適格請求書発行事業者でなくても大丈夫ですか

    支払先が適格請求書発行事業者であれば、発注側は仕入税額控除ができます3。立て替えた本人が適格請求書発行事業者として登録しているかどうかは、この保存要件には関わりません。

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    ※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。

    出典・参考情報

    *1 国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」問94(立替金)(2026年5月・2026年9月確認)
    *2 国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」問94(立替金)(2026年5月・2026年9月確認)
    *3 国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」問94(立替金)(2026年5月・2026年9月確認)
    *4 国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」問94(立替金)(2026年5月・2026年9月確認)
    *5 国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」適格請求書発行事業者の義務等(2026年5月・2026年9月確認)
    *6 国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」交付義務が免除される取引(2026年5月・2026年9月確認)
    *7 国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」適格請求書発行事業者の義務等(2026年5月・2026年9月確認)
    *8 国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」問32(交付した適格請求書の誤り)(2026年5月・2026年9月確認)