案件の報酬で消費税の免税事業者でいられるのはどんなときか?例外も解説
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- 免除されるかどうかを分ける基準期間の課税売上高という物差しと、1,000万円以下でも免除されない例外が並んでいること
- 基準期間と特定期間がそれぞれ指している時期の違いと、特定期間をどのように数えるかという点
- 課税事業者を自分で選んだ場合や法人にした場合、事業を引き継いだ場合に判定がどう変わるかという点
案件の報酬を受け取りながら、消費税の免除がいつまで続くのか、はっきり分からないまま作業を進めている場面があります。基準期間の課税売上高が1,000万円以下であれば大丈夫と聞いていても、その先に例外が並んでいることは案外知られていません。免除されるかどうかは自分で判定するものではなく、物差しと外れる場合の並びを確かめておくことで見通しが立ちます。この記事では、国税庁の案内をもとに、その物差しと例外の並びを順に整理します。
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1. 免除されるかどうかは基準期間の課税売上高で決まる
案件の報酬を受け取る個人の立場でも、消費税を納める義務そのものは発生し得ます。ただし国税庁の案内は、一定の条件のもとでその義務が及ばない範囲を示しています。まず押さえておきたいのは、その範囲を分ける物差しがどこにあるかという点です。
判断の物差しは「その年の前々年」の課税売上高
国内で行った課税資産の譲渡等については、事業者に消費税を納める義務があります。ただしその課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下である場合には、原則として納税義務が免除されます1。まず見る先は「今年」ではなく「前々年」です。
個人事業者の場合、基準期間は「その年の前々年」を指します。今年の状況がどうであっても、免除されるかどうかの起点は2年前の実績にあります。直近の忙しさではなく、前々年の課税売上高から確かめる順番になります。
「原則として」という言葉が示す幅
国税庁の案内は「原則として」納税義務が免除されると書いています。この言い回しは、基準期間の課税売上高だけで話が終わらないことを示しています。1,000万円以下という条件を満たしても、別の条件に当てはまれば免除の外に出ることがあります。
つまり基準期間の課税売上高は、免除されるかどうかを確かめる最初の物差しであって、唯一の物差しではありません。次に見ておきたいのは、その先に並んでいる免除されない場合です。
基準期間の課税売上高が1,000万円以下だと分かった時点で判断を止めず、続く条件も確かめておくと、思わぬところで納税義務が生じている状態を避けやすくなります。
出典:国税庁「納税義務の免除(タックスアンサー)」をもとに作成
2. 1,000万円以下でも免除されない場合が並んでいる
基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても、免除されない場合があります2。ここで挙げられている場合は具体的で、条件を満たすかどうかを一つずつ確かめられる形になっています。
並んでいる例外は性質の異なる条件でできている
免除されない場合として挙げられているのは、適格請求書発行事業者の登録を受けている場合、特定期間における課税売上高が1,000万円を超える場合、消費税課税事業者選択届出書を提出して課税事業者となっている場合、そして法人や事業承継といった立場に当てはまる場合です。
並びを見ると、登録の状態・期間の売上高・届出の有無・立場の違いという、性質の異なる条件が並んでいることが分かります。どれか一つに当てはまれば、基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも免除の外に出ます。
一つずつ確かめれば、全体を覚える必要はない
条件が複数並ぶと、一度にすべてを覚えようとして負担に感じる場面があります。全体を暗記するよりも、自分に関係する条件だけを順に確かめていくほうが、見通しは立ちやすくなります。
次の章からは、この並びに挙げられている場合を一つずつ見ていきます。まずは案件を受ける立場でもっとも関わりの深い、適格請求書発行事業者の登録という条件からです。
挙げられている場合はいずれも、当てはまるかどうかを一つずつ確かめられる形で書かれています。順に見ていくことで、自分の状況を照らし合わせやすくなります。
出典:国税庁「納税義務の免除(タックスアンサー)」をもとに作成
3. 適格請求書発行事業者の登録を受けている場合
免除されない場合の中でも、案件を受ける立場に直接関わるのが、適格請求書発行事業者の登録です。基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても、この登録を受けている場合には、納税義務は免除されません3。
登録を受けている状態そのものが条件になる
この条件は、課税売上高の金額ではなく、登録を受けているかどうかという状態そのものを見ています。売上高の物差しとは別の軸で、もう一つの判断が加わる形です。
登録を受けていない状態であれば、この条件には当たりません。ただし免除されない場合は他にも並んでいるので、登録の有無を確かめたうえで、続く条件も順に見ていくことになります。
課税期間の途中で登録を受けた場合の扱い
免税事業者が課税期間の途中で適格請求書発行事業者の登録を受けた場合には、その登録日からその課税期間の末日までに行った課税資産の譲渡等が、消費税の申告の対象になります4。
期間の全体ではなく、登録日以降の範囲が対象になるという点が押さえどころです。年の途中で登録を受けた場合は、いつからが対象になるのかを、登録日を基準に確かめておくと整理しやすくなります。
登録の前後で、納税義務の扱いが変わる
ここまでの内容を整理すると、登録を受けているかどうか、そして登録を受けた時期によって、納税義務の扱いが分かれることが分かります。次の表は、登録を受けていない場合と、登録を受けている場合、そして課税期間の途中で登録を受けた場合の扱いを、それぞれ並べたものです。
| 状態 | 納税義務の扱い |
|---|---|
| 適格請求書発行事業者の登録を受けていない場合 | 基準期間における課税売上高が1,000万円以下であれば、原則として納税義務は免除されます1 |
| 適格請求書発行事業者の登録を受けている場合 | 基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても、納税義務は免除されません3 |
| 課税期間の途中で登録を受けた場合 | 登録日からその課税期間の末日までに行った課税資産の譲渡等が、消費税の申告の対象になります4 |
適格請求書発行事業者の登録は、案件を受ける取引先との関係の中で検討されることが多い項目です。登録の有無が免除に関わる条件であることを、まず事実として押さえておきます。
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4. 特定期間で見る場合と、その期間の数え方
基準期間だけでなく、特定期間という別の期間でも判定が行われます。特定期間における課税売上高が1,000万円を超える場合には、基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても、納税義務は免除されません5。
特定期間は「前年の前半」を指す
特定期間とは、個人事業者の場合、その年の前年の1月1日から6月30日までの期間をいいます6。基準期間が「前々年」の1年間を指すのに対し、特定期間は「前年の前半」という、より短く、より近い期間です。
基準期間と特定期間は、指している時期がまったく違います。前々年の1年間だけを見て安心するのではなく、前年の前半という別の期間の数字も、あわせて確かめておく必要があります。
2つの期間を混同しないことが判断の起点になる
基準期間の課税売上高よりも、特定期間の課税売上高のほうが、直近の状況を反映しやすい期間です。忙しさが増えた年の翌年は、この特定期間の数字が変わりやすい点に注意が向きます。
基準期間の1,000万円以下という条件を満たしていても、特定期間の1,000万円を超えていれば、免除の外に出ます。どちらか一方だけを見て判断を終えないことが、ここでの確かめ方です。
基準期間と特定期間は、指す時期も役割も別の物差しです。前々年の実績と、前年前半の実績を、それぞれ分けて確かめておくと、見落としを避けやすくなります。
出典:国税庁「納税義務の免除(タックスアンサー)」をもとに作成
5. 自分で課税事業者を選んでいる場合
基準期間や特定期間の課税売上高とは別に、自分の意思で課税事業者になっている場合があります。消費税課税事業者選択届出書を提出して課税事業者となっている課税期間については、基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても、納税義務は免除されません7。
届出書を出した翌課税期間から扱いが変わる
消費税課税事業者選択届出書を提出した場合には、原則として、提出した日の属する課税期間の翌課税期間以後の課税期間から、納税義務が免除されなくなります8。提出したその日から即座に扱いが変わるわけではなく、翌課税期間からという区切りがあります。
この区切りを踏まえると、届出書を提出した記憶があるかどうか、提出したのがいつの課税期間だったかという2点を、あわせて確かめる必要が出てきます。
事業を開始した課税期間から課税事業者になれる場合もある
事業を開始した日の属する課税期間など、一定の場合には、届出書を提出した日の属する課税期間から課税事業者となることができます9。翌課税期間を待たずに、その課税期間から扱いが始まる場合があるということです。
自分で課税事業者を選ぶという選択そのものは、条件を満たす事業者であれば行えるものです。その選択をしているかどうかが、基準期間の課税売上高とは別に、免除に関わってきます。
届出書の提出時期によって、扱いが変わる
自分で課税事業者を選ぶ場合は、届出書を提出した時期によって、いつから扱いが変わるかが異なります。次の表は、提出して課税事業者になっている課税期間、その翌課税期間以後、そして事業を開始した課税期間など一定の場合の扱いを、それぞれ並べたものです。
| 場面 | 納税義務の扱い |
|---|---|
| 消費税課税事業者選択届出書を提出して課税事業者となっている課税期間 | 基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても、納税義務は免除されません7 |
| 届出書を提出した日の属する課税期間の翌課税期間以後 | 原則として、この翌課税期間以後の課税期間から、納税義務が免除されなくなります8 |
| 事業を開始した日の属する課税期間など、一定の場合 | 届出書を提出した日の属する課税期間から、課税事業者となることができます9 |
届出書を提出しているかどうか、提出したのがいつの課税期間かという2点は、基準期間の課税売上高を確かめるのと同じくらい、見落としやすい点です。
6. 法人にしたときの原則と例外
個人で案件を受ける立場から、法人という形に変えた場合にも、基準期間の考え方に違いが出てきます。新たに設立された法人については、設立1期目および2期目の基準期間はないので、原則として納税義務が免除されます10。
基準期間がないことが原則免除につながる
基準期間がないというのは、比べる過去の実績そのものが存在しないということです。設立して間もない法人は、前々事業年度という物差しをまだ持っていないため、原則として免除の対象になります。
この原則は、法人にした直後の期間に限られます。基準期間を持つ事業年度になれば、個人の場合と同じように、その期間の課税売上高が判定の対象になっていきます。
資本金の要件に当てはまる法人は原則の外に出る
基準期間がない事業年度であっても、その事業年度の開始の日における資本金の額または出資の金額が1,000万円以上である法人や、特定新規設立法人に該当する法人の場合は、納税義務は免除されません11。
設立1期目・2期目という点は同じでも、資本金の額という別の条件によって、原則の外に出る場合があります。法人にする際は、基準期間の有無だけでなく、資本金の額もあわせて確かめておく必要があります。
設立からの期間と資本金の額で、扱いが分かれる
法人にしたときの扱いを整理すると、設立からの期間と資本金の額という、2つの軸で判断が分かれることが分かります。次の表は、その原則と例外を並べたものです。
| 区分 | 納税義務の扱い |
|---|---|
| 新たに設立された法人の設立1期目・2期目 | 基準期間がないため、原則として納税義務は免除されます10 |
| 事業年度開始の日における資本金の額または出資の金額が1,000万円以上である法人 | 基準期間がない事業年度であっても、納税義務は免除されません11 |
| 特定新規設立法人に該当する法人 | 基準期間がない事業年度であっても、納税義務は免除されません11 |
個人から法人にする場面は、基準期間という物差しそのものが一時的に働かなくなる場面でもあります。その分、資本金の額という別の条件を確かめる意味が大きくなります。
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7. 事業を引き継いだ場合と、確かめる順番
相続、合併、分割があったことにより事業を承継した場合にも、基準期間の考え方に別の要素が加わります。被相続人等の基準期間に対応する期間における課税売上高が1,000万円を超える場合などの一定の基準に該当する場合には、承継した側の基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても、納税義務は免除されません12。
承継した側だけでなく、承継元の実績も見られる
事業を引き継いだ場合は、自分自身の基準期間だけでなく、事業を引き継ぐ前の実績にあたる期間の課税売上高も、判定に関わってきます。引き継いだ直後で自分自身の実績が少ない場合でも、それだけでは免除されるとは言い切れません。
相続・合併・分割のいずれであっても、承継という事実そのものが、基準期間の考え方に一定の基準を持ち込みます。事業を引き継ぐ場面では、この点をあらかじめ確かめておく意味があります。
確かめる順番を決めておくと、見落としが減る
ここまで見てきた条件は、基準期間の課税売上高から始まり、適格請求書発行事業者の登録、特定期間の課税売上高、届出書の提出状況、法人や事業承継という立場の違いへと広がっています。数が多いからこそ、確かめる順番を決めておくと整理しやすくなります。
まず基準期間の課税売上高を確かめ、次に登録の状態、特定期間の課税売上高、届出書の提出状況、最後に法人や事業承継といった立場の違いを見ていく。この順番で一つずつ照らし合わせれば、当てはまる条件を見落としにくくなります。
図の作成:Remogu編集部。基準期間の課税売上高から確認していく順番を整理したもので、確認の順序を定めた公式な手順ではありません
副業として案件を受けている場合も、基準期間の考え方は同じですか
基準期間の考え方そのものは、案件の受け方が主な収入源か副業かによって変わるものではありません。国税庁の案内が示しているのは、事業者の基準期間における課税売上高が1,000万円以下かどうかという物差しです1。受け方の形にかかわらず、まずはこの物差しから確かめる流れになります。
今年から法人にした場合、基準期間はどう考えればよいですか
新たに設立された法人は、設立1期目および2期目の基準期間がないため、原則として納税義務が免除されます10。ただし資本金の額または出資の金額が1,000万円以上である法人や、特定新規設立法人に該当する場合は、この原則の外に出ます11。
特定期間の判定は、いつの時点から意識しておけばよいですか
特定期間は、その年の前年の1月1日から6月30日までの期間を指します6。この期間の課税売上高が1,000万円を超えると、基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても、納税義務は免除されません5。前年の前半にあたる期間の実績を、早めに確かめておくと見通しが立ちやすくなります。
事業を引き継いだ場合、何を確かめればよいですか
相続・合併・分割によって事業を承継した場合は、承継した側の基準期間だけでなく、承継元にあたる期間の課税売上高も判定に関わります12。事業を引き継ぐ前後で、それぞれの期間の課税売上高を確かめておく必要があります。
基準期間の課税売上高という一つの物差しだけでは、免除されるかどうかは決まりません。登録の状態、特定期間の実績、届出書の提出状況、法人や事業承継という立場まで、順に確かめていくことで、自分の状況を照らし合わせやすくなります。Remoguで扱う案件は90%以上がフルリモート可能です。自分の状況を確かめながら、条件に合う案件を見ておくところから始められます。
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出典・参考情報
*1 国税庁「納税義務の免除(タックスアンサー)」免除される場合(2025年4月・2026年9月確認)
*2 国税庁「納税義務の免除(タックスアンサー)」例外があること(2025年4月・2026年9月確認)
*3 国税庁「納税義務の免除(タックスアンサー)」登録を受けている場合(2025年4月・2026年9月確認)
*4 国税庁「納税義務の免除(タックスアンサー)」途中で登録した場合(2025年4月・2026年9月確認)
*5 国税庁「納税義務の免除(タックスアンサー)」特定期間で見る場合(2025年4月・2026年9月確認)
*6 国税庁「納税義務の免除(タックスアンサー)」特定期間の意味(2025年4月・2026年9月確認)
*7 国税庁「納税義務の免除(タックスアンサー)」自分で選んでいる場合(2025年4月・2026年9月確認)
*8 国税庁「納税義務の免除(タックスアンサー)」効き始める時期(2025年4月・2026年9月確認)
*9 国税庁「納税義務の免除(タックスアンサー)」始めた年の扱い(2025年4月・2026年9月確認)
*10 国税庁「納税義務の免除(タックスアンサー)」法人にしたときの原則(2025年4月・2026年9月確認)
*11 国税庁「納税義務の免除(タックスアンサー)」法人にしたときの例外(2025年4月・2026年9月確認)
*12 国税庁「納税義務の免除(タックスアンサー)」事業を引き継いだ場合(2025年4月・2026年9月確認)