案件の障害対応はどこまで負うのか|範囲の読み方と確かめる順番を解説
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- 契約書で明示が義務づけられている項目に対応の範囲は入っておらず、自分で確かめる必要があること
- 環境の作り方と運用の見直しがどこまで進んでいるかで、日々の対応の重さが大きく変わること
- 外部のサービスに不安を抱える企業が多い実態と、参画前に確認しておきたい具体的な順番
案件に参画したあとで障害が起きたとき、どこまで対応する立場になるのかは、契約書を読むだけでは分からないことがあります。公正取引委員会のパンフレットが明示を求めているのは、検査を完了する期日と、報酬の額および支払期日です。対応の範囲そのものは、明示が義務づけられた項目には入っていません。だからこそ、環境の作りと運用の見直しがどこまで進んでいるかを、参画前に自分で確かめる姿勢が欠かせません。
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1. 明示される項目に対応の範囲は入っていない
契約書に明示が義務づけられている項目
案件を受けるときの契約書には、明示が義務づけられている項目があります。公正取引委員会が2026年7月に改訂したパンフレットでは、給付の内容を検査する場合、検査を完了する期日を明示する対象に挙げています1。報酬の額と支払期日も、同じく明示の対象です1。
これらは取引の入口で確かめられる項目であり、契約書や発注書を見れば、書かれているかどうかがすぐに分かります。逆に言えば、書かれていない項目については、契約書だけを読んでも判断がつきません。障害対応で負う範囲は、まさにこの「書かれていない項目」に当たります。
記載の有無を一覧で確認する
公正取引委員会のパンフレットが明示の対象として挙げている項目と、対応の範囲のように挙げられていない項目を並べると、契約書のどこを見れば何が分かるのかがはっきりします。次の一覧は、検査を完了する期日、報酬の額、支払期日という明示の対象と、対応の範囲という明示の対象外の項目を対比したものです1。契約書を受け取ったら、まずこの一覧に沿って記載の有無を確かめる進め方が実務的です。
| 項目 | 明示の対象か | 備考 |
|---|---|---|
| 検査を完了する期日 | 対象 | 給付の内容を検査する場合に明示されます1 |
| 報酬の額 | 対象 | 支払期日とあわせて明示されます1 |
| 支払期日 | 対象 | 報酬の額とあわせて明示されます1 |
| 障害対応で負う範囲 | 対象外 | 参画前に自分で確認する事項です |
対応の範囲は、明示の対象に含まれていません
明示が義務づけられた項目の一覧に、対応の範囲という言葉は出てきません。検査の期日や報酬の額のように、数字や日付で区切れる項目とは性質が違うため、契約書の型に組み込まれにくい面があります。範囲を言葉にして残すかどうかは、案件ごとの取り決めに委ねられています。
範囲が明示の対象外だからといって、軽く扱ってよいわけではありません。むしろ、明示されない項目ほど、参画する側から確認しないと曖昧なまま進みがちです。契約書に書かれている項目を確認したら、次は書かれていない項目を自分から尋ねる番です。
確認する相手は、発注元の窓口になることが多いはずです。障害が起きた場合にどこまでの対応を求められるのか、一次対応と原因の切り分け、復旧後の報告まで含むのかを、契約前の段階で言葉にしておくと、後になって認識のずれに気づく事態を避けやすくなります。
次の章からは、対応の範囲が実際にどれだけ重くなるかを左右する要因を見ていきます。鍵になるのは、案件先の環境がどう作られているか、そして運用の見直しがどこまで進んでいるかです。この関係を図にすると、次のようになります。
出典:公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」パンフレット(2026年7月改訂)をもとに作成
2. 運用が従前のままでは効果が出ない
刷新しても、運用の仕方が変わらなければ意味が薄れる
クラウドサービスへ切り替えることは、環境を新しくする取り組みですが、運用の仕方まで変えなければ効果は限られます。デジタル庁の基本方針は、システム運用が従前のままでは、コスト削減の効果は十分に出ないと述べています2。
これは費用の話にとどまりません。運用の仕方が従来のままの環境では、日々の確認や対応も従来のやり方を引きずりやすく、障害が起きたときに、原因の切り分けや復旧の手順が整理されていない場面に行き当たることがあります。
参画する案件先の環境が、切り替えただけで止まっているのか、それとも運用の仕方まで見直されているのかは、障害対応で負う範囲の重さに直結します。運用が従来のままの環境では、想定していなかった作業が、対応する側に回ってくる場合があります。
対応の重さは、運用の作り方に比例する
運用の見直しがどこまで進んでいるかを確かめる質問としては、「切り替えのあとに運用の手順も変えたか」という聞き方が具体的です。切り替えた時期だけでなく、運用の変更点を尋ねる方が、実態に近づきます。
運用の作り方は、参画してから初めて分かるものではありません。契約前の対話の中で、環境の作り方と合わせて確認しておくと、参画後に負う対応の重さについて、見通しを持ちやすくなります。
次の章では、運用の見直しの中身として挙げられている取り組みの一つ、自動化について見ていきます。効果が出るかどうかの分かれ目は、ここにあります。
3. 運用作業の自動化が挙げられている
自動化を徹底することが、基本方針の中に挙げられている
デジタル庁の基本方針では、運用作業の自動化を徹底することが、システム運用の見直しの取り組みとして挙げられています3。手作業で行っていた確認や反映の作業を、仕組みの側に任せる考え方です。
自動化が進んだ環境では、日常的な確認作業の多くが仕組みの中で完結し、人が手を動かす場面は、判断が必要な部分に絞られます。障害が起きたときも、原因の切り分けに使える記録が残りやすく、対応の見通しを立てやすくなります。
反対に、自動化が進んでいない環境では、確認や反映のたびに手作業が発生し、障害の対応にも同じだけ手間がかかる構造になりがちです。運用の作り方が、対応する側の負担に直結する場面です。
自動化の有無が、対応の負担を左右する
自動化されているかどうかは、案件の説明だけでは見えにくい部分です。ツールの名前を尋ねるより、「更新や確認の作業のうち、どこまで仕組みに任せているか」という聞き方の方が、実態に近づきます。
自動化が徹底された環境と、手作業が残る環境とでは、同じ障害対応でも、かかる時間も、求められる作業の幅も変わります。環境の作り方より先に、対応の範囲だけを決めようとすると、話がかみ合いにくくなります。
自動化は運用の見直しの一つの柱です。もう一つの柱として、更新のたびに行う確認テストの最適化が挙げられています。次の章で見ていきます。
運用の作り方を確認しながら、自分に合う案件を見る →
4. 更新時の確認テストを最適化する項目がある
マネージドサービスの更新時に行う確認テスト
クラウドの中でも、マネージドサービスと呼ばれる仕組みは、提供する側がアップデートを行います。デジタル庁の基本方針は、マネージドサービスのアップデート時などにおける確認テストを最適化することを、運用の見直しの取り組みとして挙げています4。
確認テストが最適化されている環境では、更新のたびに必要な確認の範囲があらかじめ整理されており、影響を受ける部分だけを重点的に見る進め方ができます。すべてを一から確認し直す必要がない分、更新に伴う負担も抑えられます。
反対に、確認テストが整理されていない環境では、更新のたびに広い範囲を手作業で確認することになり、時間もかかります。障害が起きたときに、更新が原因かどうかの切り分けにも時間を要する場面が出てきます。
最適化されているかどうかで、更新への向き合い方が変わる
確認テストの最適化は、参画する側から見えにくい取り組みです。「更新のたびに、どこまでの範囲を確認しているか」を尋ねると、整理されているかどうかの手がかりになります。
更新への向き合い方は、環境ごとに差があります。確認テストが整理されている案件先では、更新に伴う対応も見通しを立てやすく、整理されていない案件先では、そのつど広く確認する作業が発生しやすくなります。
更新にどう向き合うかという話は、次の章でさらに掘り下げます。基本方針は、更新への対応を特別な出来事としてではなく、日常の仕事として位置づけています。
5. 更新への対応は日常的な仕事として入る
更新は、イベントではなく日常の一部として扱われている
デジタル庁の基本方針は、サービスの更新への対応について、通常のアップデートとして捉え、日常的に対応していく必要があると述べています5。更新を特別な作業として構えるのではなく、日々の業務の一部として組み込む考え方です。
更新が日常に組み込まれている環境では、更新の予定や影響範囲があらかじめ共有され、対応する側も心づもりを持って臨めます。突発的な対応というよりも、決まった流れの中の一工程として位置づけられます。
更新が日常に組み込まれていない環境では、更新のたびに個別の判断や調整が必要になり、障害対応の範囲もそのつど広がりやすくなります。運用の作り方の違いが、対応の重さの違いとして表れる場面です。
日常に組み込まれているかどうかを確かめる
更新が日常の仕事として扱われているかどうかは、案件先に更新の頻度や共有の仕方を尋ねると見えてきます。更新のスケジュールが決まっているか、影響範囲が事前に伝えられるかは、具体的な確認材料になります。
ここまで見てきた、運用が従前のままでは効果が出ないこと、自動化が挙げられていること、確認テストの最適化が挙げられていること、更新が日常の仕事として位置づけられていることは、いずれも環境の作り方に関わる要素です。どれがどこまで進んでいるかで、対応の重さは変わります。
環境の作り方を見てきたところで、次はサービスの選び方に目を向けます。選べるものにも、避けるべきとされる線引きがあります。運用の見直しが進んでいる環境と、そうでない環境を並べると、対応の重さの違いが見えてきます。
図の作成:Remogu編集部。デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」の内容を整理したもので、統計データではありません
6. 使用を避けるべきサービスもある
サーバーの構築を前提とするものは、避けるべきとされている
クラウドサービスの中には、選び方そのものに線引きがあるものもあります。デジタル庁の基本方針は、サーバーの構築を前提とするものなど、使用を避けるべきサービスもあるとしています6。
避けるべきとされているのは、クラウドの利点を生かしにくい選び方です。サーバーを構築する前提のサービスでは、運用作業の自動化や、確認テストの最適化といった見直しの効果も、限定的になりやすいためと考えられます。
案件先がどのようなサービスを選んでいるかは、対応の範囲を左右する要素の一つです。避けるべきとされる選び方のままの環境では、運用の見直しが進みにくく、対応する側の負担も重くなりやすい構図があります。
提案が方針に沿っているかどうかにも、留意が必要
基本方針はさらに、事業者からの提案が方針に沿ったものであるかどうかについて、留意する必要があるとしています7。提案を受け入れる側にも、確かめる姿勢が求められています。
提案がそのまま取り入れられているのか、方針に沿っているかどうかを確かめたうえで選ばれているのかは、環境の作りの丁寧さを映す部分です。確かめる手順を経ている案件先ほど、運用の見直しも行き届いている傾向があります。
サービスの選び方まで含めて確認することは、契約前の一回の会話では終わらないかもしれません。それでも、対応の範囲を見通すためには、避けて通れない確認です。
確認する視点を一覧にする
使用を避けるべきとされるサービスかどうか、提案が方針に沿っているかどうか、契約書に対応の範囲が明示されているかどうかは、いずれも契約前に確認できる視点です。次の一覧は、ここまでの内容を確認する視点としてまとめたものです。
| 視点 | 確認する内容 |
|---|---|
| サービスの前提 | サーバーの構築を前提とするものなど、使用を避けるべきサービスもあります6 |
| 提案の妥当性 | 事業者からの提案が方針に沿ったものかどうかに、留意する必要があります7 |
| 契約前の確認 | 契約書に対応の範囲が明示されているかを確かめます1 |
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7. 外部のサービスへの不安と、確かめる順番
外部サービスの運用に、不安を抱える企業は多い
IPAの2024年度ソフトウェア動向調査は、外部のサービスについて、メンテナンスや運用に対する不安を抱える企業は多いと述べています8。環境を外部に委ねること自体への不安は、珍しいものではないようです。
不安を抱えている側だからこそ、運用の見直しが進んでいるかどうかを、外に向けて説明できる状態にしておく意味があります。参画する側から見れば、その説明が丁寧かどうかも、環境の作りを判断する材料になります。
不安があること自体は、環境の作りが整っていない証拠ではありません。不安を抱えながらも、見直しの取り組みを進めている案件先もあれば、そうでない案件先もあります。見極めるには、直接尋ねる以外に近道はありません。
整備が進んでいる企業は、全体の5〜6割程度
IPAの同じ調査では、ITのリスク管理と業務継続計画を整備している企業は、全体の5〜6割程度だと述べています9。
整備している企業が5〜6割程度ということは、整備がこれからの企業も相応にあるということです。案件先がどちらに近いかによって、障害が起きたときの対応の枠組みが、あらかじめ用意されているかどうかが変わります。
整備の有無を直接尋ねる質問としては、「障害が起きたときの対応の流れは、あらかじめ決まっているか」が具体的です。決まっている場合とその場で組み立てる場合とでは、対応する側が担う役割の重さも変わります。整備の度合いを図にすると、次のようになります。
出典:IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」(2025年4月)をもとに作成
実際の運用では、明示義務違反も起きている
公正取引委員会が2026年6月に公表した運用状況では、取引条件の明示義務違反が1,126件(41.3%)です10。明示する事項が示されないまま契約が結ばれる例が、実際に一定数起きていることを示す数字です。
この数字は、契約書を確認するだけでは十分ではない場面があることを示しています。書かれているはずの項目が抜けている可能性も踏まえ、契約書を受け取った時点で、明示の対象になっている項目が揃っているかを確かめる姿勢が要ります。
確かめる順番を一覧にする
ここまでの内容を、確認する順番として整理すると、契約前と参画後に分けて考えられます。契約書の記載を確認し、環境の作りと運用の見直しの状況を尋ね、サービスの選び方を確認したうえで、参画後も更新への向き合い方を確かめる、という流れです。次の一覧は、確認するタイミングと内容をまとめたものです。
| タイミング | 確認する内容 |
|---|---|
| 契約前 | 契約書に明示されている項目を確認します1 |
| 契約前 | 環境の作りと運用の見直しの状況を尋ねます2 |
| 契約前 | 使用しているサービスが避けるべき前提のものでないかを確認します6 |
| 参画後 | 更新への対応が日常の仕事として組み込まれているかを確かめます5 |
この順番を図にすると、次のようになります。
図の作成:Remogu編集部。ここまでの内容を確認する順番として整理したもので、統計データではありません
初めての案件でも、障害対応の範囲を事前に確認できますか
契約書に明示されている項目を確認し、そのうえで、書かれていない対応の範囲について、担当者に直接尋ねる進め方ができます1。経験の有無にかかわらず、確認できる内容です。
稼働日数が少ない案件でも、対応の範囲は変わりますか
対応の範囲は、稼働日数よりも、環境の作りと運用の見直しの状況によって変わります2。稼働日数が少ない場合ほど、範囲を事前に言葉にしておくと、認識のずれを防ぎやすくなります。
経験がまだ少ない場合、何から確認すればよいですか
まずは契約書に明示されている項目を確かめ、次に環境の作り方について尋ねる順番が進めやすい方法です1。運用の見直しが進んだ環境であるほど、対応の範囲も整理されている傾向があります。
対応の範囲は、契約書の外側にある確認によって見えてきます。Remoguが扱う案件は、90%以上がフルリモートで進められます。環境の作りや運用の見直しの状況を、参画前に確かめられる案件から探してみる進め方もあります。
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出典・参考情報
*1 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」パンフレット(2026年7月・2026年9月確認)
*2 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」刷新の限界(2026年・2026年9月確認)
*3 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」人の時間(2026年・2026年9月確認)
*4 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」テストの費用(2026年・2026年9月確認)
*5 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」更新の捉え方(2026年・2026年9月確認)
*6 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」選ばない判断(2026年・2026年9月確認)
*7 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」提案を読む(2026年・2026年9月確認)
*8 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」不安の所在(2025年4月・2026年9月確認)
*9 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」止まる備え(2025年4月・2026年9月確認)
*10 公正取引委員会「令和7年度におけるフリーランス・事業者間取引適正化等法第2章の運用状況」2番目に多い違反(2026年6月・2026年9月確認)