監視の設計で決めることは何か?見る対象の選び方と条件を公的な方針から整理
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- 監視対象の見直しと運用の自動化が、方針でどのように位置づけられているかということ
- オートスケールを前提にした構成へ移ると、平常時とピーク時で異常の基準がどう変わるかということ
- 一覧の無い現場で監視を組み立てるときに、業務継続計画や構成管理の整備状況をどう手がかりにするかということ
監視の設計を任されると、まず手が伸びるのは項目を増やす方向です。落ちているログを拾い、通知を足し、ダッシュボードを重ねるうちに、何のために見ているのかが後回しになります。公表されている方針をたどると、監視の設計で求められているのは項目を増やすことではなく、見る対象を絞り込んで決めることだと分かります1。この記事では、その「決めること」を4つの観点に分けて整理します。
▶ あわせて読みたい
・SREの案件で信頼性の目標は誰が決める?決め方と条件の確かめ方を整理
・【Kubernetes運用】障害時の担当範囲はどこまで?条件の確かめ方を整理
・バックエンドの案件で非機能はどう詰める?止まる備えと計測から決める条件
1. 増やすことではなく決めること
監視項目を増やすことは、成果の証明になりません
監視の設計や見直しを任される案件では、既存の仕組みに項目を足していく進め方が定着しやすい領域です。通知が増えるほど、丁寧に見ている印象を与えられると考えたくなります。
けれども、通知の数と気づきの速さは比例しません。関係の薄い通知が並ぶほど、本当に見ておきたい変化が埋もれ、確認の手間だけが積み上がっていきます。
公表されている政府情報システム向けの方針でも、監視の対象を見直すことが明記されています1。増やす作業ではなく、絞り込む作業として位置づけられている点が要です。
方針が示す「見直す」という視点
見直しの効果は、監視だけにとどまりません。システムを新しくしても、運用の進め方が従前のままではコスト削減の効果は十分に発現しないと、同じ方針は述べています9。監視の設計は、運用全体の効率を測る入り口の一つといえます。
裏を返せば、監視の設計だけを整えても、その先の運用が変わらなければ効果は限定的です。案件を受けるときは、監視の仕組みの先で、誰がどう運用していくのかまで視野に入れておくと、提案の説得力が増します。
運用の進め方を含めて提案すると、依頼の範囲が監視の設計だけにとどまらず、周辺の作業にも広がることがあります。最初にどこまでを引き受けるかを合わせておくと、途中で線引きに困りにくくなります。
通知を足す作業よりも、通知を減らせる根拠を積み上げる作業のほうが、この種の案件で評価される仕事に近づきます。
この整理に沿うと、経験の語り方も変わります。増やした項目の数を並べるより、外した項目とその理由を説明できることのほうが、監視の設計を任された案件での実績として残ります。
案件の初回の打ち合わせでも、この考え方は役立ちます。現状の監視項目を一覧で見せてもらい、それぞれが何のために置かれたのかを一つずつ確認するところから始めると、増やす前提の依頼にも冷静に対応できます。
これまでの経験がインフラ寄りでもアプリケーション寄りでも、この確認の姿勢そのものは持ち込めます。得意な領域の違いは、確認したあとにどこを深掘りするかで生きてきます。
図の作成:Remogu編集部。方針が挙げる4つの観点を整理したもので、統計データではありません
対象を決める作業は一度きりでは終わりません。構成が変わるたびに、同じ観点から見直す機会がまた生まれます。
見る対象を決める判断は、システムの構成そのものが変わると、基準ごと動きます。次に、その構成の変化を見ていきます。
2. 構成が変われば基準も変わる
オートスケールで見積りの重さが変わります
監視の対象を決める前提には、システムの構成があります。従来型の構成では、ピーク時の負荷をあらかじめ大きく見積り、その水準を常に確保しておく考え方が一般的でした。
方針では、オートスケールを取り入れる構成に移ると、綿密な当初見積りが不要になり、無駄のない構成に近づくことが示されています5。見積りに割く時間そのものが変わるということです。
あわせて、ピーク時を想定した大きなリソースを通常時に使わないことも挙げられています6。通常時の水準そのものが下がるため、これまで「平常」と呼んでいた基準が動きます。
通常時とピーク時を分けて考えます
監視の設計に置き換えると、しきい値を固定した数値で引き継ぐやり方は成立しにくくなります。平常の幅が変わるたびに、しきい値の考え方も見直す対象になります。
固定した数値を守ることよりも、平常の幅がどう動いたかを追う姿勢のほうが、構成が変わり続ける案件では求められます。
受ける側にとって重要なのは、この基準の変化を誰が言語化するかという点です。構成を変えた担当者と監視を設計する担当者が別であるほど、平常の定義がすれ違ったまま残りやすくなります。
| 観点 | ピーク前提の構成 | 必要な分だけの構成 |
|---|---|---|
| 通常時のリソース | ピーク時相当を確保6 | 必要な分だけ稼働6 |
| 見積りの手間 | 当初に綿密な見積りが必要5 | 見積りの負担が小さい5 |
| 監視の基準 | 固定した水準で運用しやすい | 平常の幅ごと見直しが要る |
図の作成:Remogu編集部。方針が示す構成の違いを整理したもので、統計データではありません
案件に途中から加わる場合は、構成がいつ、どちらの方向に変わったかを最初に確認しておくと、監視の基準を合わせる作業がスムーズになります。
構成の変更を記録として残す習慣も、監視の設計とあわせて提案しやすい項目です。次に基準を見直す担当者が、どの時点の構成を前提にしているかをたどれるようになります。
構成の変化は、一度に大きく起きるとは限りません。少しずつオートスケールへ寄せていく現場もあり、その途中では、古い基準と新しい基準が同じ画面の中に混在する時期が生まれます。
基準が動く前提を押さえたところで、次はもう一つの決めごとである見せ方に移ります。
3. 見せ方も設計に含まれる
定量的な計測とダッシュボードによる可視化
見る対象を絞り込んでも、その結果が伝わらなければ設計は完結しません。方針では、定量的な計測とダッシュボードによる状況の可視化が並んで挙げられています2。数字を並べるだけでなく、状況として一目で伝わる形に整えることが求められています。
あわせて、運用作業の自動化を徹底することも同じ方針の中に置かれています4。見せ方と自動化は別の項目のように見えて、実際には同じ設計の中でつながっています。異常が見えた後の確認や復旧まで人手に頼る設計では、可視化の効果が半分しか活きません。
画面を増やすことよりも、画面を見た人が次に何をするかまで設計してあるほうが、見せ方の完成度は高くなります。
見せ方を設計に含めると聞くと、グラフの装飾を思い浮かべがちです。実際に問われているのは、通知を受け取った人が確認から復旧まで迷わず動ける導線になっているかどうかです。
自動化を徹底するという方針も、この導線の延長にあります4。人が画面を見て判断する場面を減らすほど、見せ方に求められる正確さの水準は上がっていきます。
既存のダッシュボードに項目を足す依頼を受けるとき
受ける側の案件では、既存のダッシュボードに項目を足す依頼を受ける場面もあります。その際は、足す項目が定量的な計測に基づくものか、それとも感覚的な安心のための項目かを分けて考える視点が役立ちます。
Remoguが扱う案件は、案件の90%以上がフルリモート可能です。監視の見せ方や運用改善を任される案件でも、稼働場所を理由に選択肢が狭まりにくい環境だといえます。
既存の画面に手を入れる依頼では、今ある項目をすべて残したまま足すのではなく、どれを置き換えるかもあわせて提案する余地があります。
| 要素 | 方針が示す内容 | 設計で確認する点 |
|---|---|---|
| 定量的な計測 | 数値として継続的に把握する2 | 何を測るかを絞ってあるか |
| ダッシュボードによる可視化 | 状況を一目で伝える2 | 見た人が次の行動に移れる形か |
| 運用作業の自動化 | 対応までを自動で回す4 | 人の判断が要る場面を残しているか |
見せ方と自動化を決めたら、次は逆にやめるものを決める番です。
自分の経験に近い監視・運用改善のリモート案件を確認する →
4. やめるものを決める
夜間バッチの必要性を見直します
監視の対象を増やす動きの裏側には、なくすことへの慎重さがあります。一度組んだバッチや通知を外すと、何かを見落とすのではないかという不安が先に立ちます。
方針では、夜間のバッチの必要性を見直すことが挙げられています3。夜間に動かす理由が薄れた処理を、そのまま残しておかないという考え方です。
対象を見直すという方針は、増やす場面だけでなく、外す場面にも同じ強さで働きます1。見る対象を決める作業には、外す判断も含まれています。
外す判断を任される場面では、影響範囲を確認した記録を残しておくと、後から同じ議論を繰り返さずに済みます。
通知を減らす提案は、日々の確認作業にも直接効いてきます。関係の薄い通知に払っていた時間が減れば、その分を対象の見直しや見せ方の改善にあてられます。
やめる判断は、監視の担当者だけで完結しないことも多い作業です。夜間バッチを見直す場合は、その処理を組んだ側や、結果を受け取っている側にも確認が必要になります。
見直しの基準を対象ごとに変えます
受ける側としては、外す提案をそのまま出すより、外した場合に何が起きなくなるかをあわせて示す進め方のほうが、実務では通りやすくなります。
項目を残す安心よりも、残す理由を説明できる状態のほうが、見直しの依頼では評価につながります。
対象を減らす提案は、監視の知識だけでなく、その仕組みが元々何のために組まれたかを読み解く力が問われる作業でもあります。
対象と見せ方、やめるものが決まると、残るのは一覧の無い現場でどう組み立てるかという課題です。
5. 一覧が無い現場で監視を設計する
業務継続計画の整備状況を手がかりにします
監視の設計を任される案件の中には、既存の一覧や台帳が整っていない現場もあります。何を基準に手を付ければよいか分からないまま、対象を洗い出す作業から始まる場面です。
IPAの調査では、ITのリスク管理と業務継続計画の整備は、全体の5〜6割程度にとどまっています7。半数前後は、この時点でまだ体制が整っていないことになります。
同じ調査では、構成管理ツールを導入している企業は、ユーザー企業で約3割、ベンダー企業で約4割にとどまっています8。監視の対象を機械的に把握できる仕組み自体が、前提として揃っていない現場が一定数あるということです。
整備が進んでいない現場ほど、監視の設計を任された担当者が事実上の台帳作りまで引き受けることになりがちです。見積りの段階でこの役割を明示しておくと、後工程での認識違いを避けやすくなります。
構成管理ツールの有無で進め方が変わります
一覧が無い現場では、監視の設計を始める前に、対象をどう洗い出すかという工程が別に発生します。この工程を見込んでいない見積りは、進めるうちに手戻りが出やすくなります。
洗い出しの進め方も一様ではありません。構成管理の記録がある程度残っている現場では突き合わせから始められますが、記録が薄い現場では、動いている仕組みを一つずつ確認する作業が先に来ます。
この違いを見積りの段階で伝えられるかどうかが、案件を受ける側の経験の差になります。記録の量を最初に確認するひと手間が、後工程の負担を大きく左右します。
整った一覧をなぞる作業よりも、一覧が無い状態から対象を洗い出す作業のほうが、時間の見立てを慎重にする姿勢が要ります。
| 項目 | 整備・導入の状況 |
|---|---|
| ITリスク管理・業務継続計画 | 全体の5〜6割程度が整備7 |
| 構成管理ツール(ユーザー企業) | 約3割が導入8 |
| 構成管理ツール(ベンダー企業) | 約4割が導入8 |
出典:IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」(2025年4月)をもとに作成
一覧が整っている現場と整っていない現場では、同じ「監視の設計」という依頼でも、最初の1週間の動き方がまったく違います。どちらの状態かを早い段階で見極めることが、見積りの精度につながります。
現場の整備状況を踏まえたうえで、最後に残るのは日々の更新にどう追従するかという点です。
6. 更新に追従し続ける
継続的なアップデートへの対応
監視の設計は、一度組んだら終わりの作業ではありません。方針では、継続的なアップデートへの対応が挙げられています10。構成そのものが更新され続ける前提に立つと、監視の対象や基準も、同じ頻度で見直す対象になります。
システムを新しくしても、運用の進め方が従前のままではコスト削減の効果は十分に発現しないと、同じ方針は述べています9。監視の仕組みだけを更新して、確認の手順や役割分担を変えずに残すと、この状態に近づきます。
運用の進め方を変えないと効果が続きません
更新への追従は、監視の設定を直す作業だけを指すのではありません。誰が、どのタイミングで、何を基準に見直すかという役割の設計も含まれます。
一度作った監視を守り続けることよりも、更新のたびに見直す前提を組み込んでおくことのほうが、長く使える設計に近づきます。
更新の頻度が上がるほど、監視の設計を一人で抱え続けることは難しくなります。見直しの手順を言語化しておくと、途中から加わる担当者にも引き継ぎやすくなります。
継続的なアップデートへの対応という一文は短いですが、実際に含むのは、更新のたびに監視の対象と基準を点検し直す一連の作業です10。設計時点でこの点検の入り口を決めておくと、更新のたびに一から考え直さずに済みます。
点検の入り口としては、更新の直後に基準が実態と合っているかを確かめる小さな確認作業を組み込んでおく方法があります。大きな見直しを待たずに、ずれを早い段階で拾えます。
受ける側の案件では、初回の設計だけでなく、見直しの周期や引き継ぎ方まで含めて提案すると、案件の中での役割が広がりやすくなります。
ここまでの4つの決めごとを踏まえたうえで、最後に決める順番を整理します。
登録して、監視設計や運用改善の案件条件を確かめる →
7. 決める順番
対象から自動化まで、決める順番を通して見ます
ここまで見てきた4つの決めごとは、順番に並べると扱いやすくなります。最初に対象を見直し1、次にその結果をどう見せるかを決め2、そのうえでやめるものと自動化する範囲を決めていく流れです。
順番を守る理由は単純です。対象が定まる前に見せ方を決めると、後から対象が変わるたびに画面を作り直すことになります。逆に、対象と見せ方が決まったうえでやめるものを決めると、外した後に何が変わるかを具体的に示せます。
順番を意識して提案すると、見積りの説明もしやすくなります。どの段階まで進める依頼かによって、必要な作業と要する時間がはっきり分かれるからです。
案件ごとに現場の状態は違いますが、決める順番そのものは持ち運べる型です。案件の間で使い回せる整理であるほど、経験は積み上がりやすくなります。
次に監視の設計を任されたとき、どこから手を付けるか整理できていますか。対象・見せ方・やめるもの・自動化という4つの箱に当てはめるだけでも、進め方の見通しは変わります。
図の作成:Remogu編集部。決める順番を整理したもので、統計データではありません
監視の対象を減らす提案は、どう進めれば伝わりやすいですか
外す対象だけを伝えるのではなく、外した場合に何が起きなくなるかをあわせて示す進め方のほうが実務では伝わりやすくなります。方針でも、対象を見直すことそのものが位置づけられています1。口頭だけでなく、確認した内容を簡単な記録として残しておくと、後から経緯を尋ねられたときにも答えやすくなります。
一覧が無い現場では、最初に何を確認しますか
業務継続計画や構成管理の整備状況を確認すると、現場がどの段階にあるかの見立てがつきやすくなります。IPAの調査では、この整備が全体の5〜6割程度にとどまっています7。整っていない前提で見積もる姿勢が役立ちます。
監視の設計だけを任される案件はありますか
見せ方の整備や運用の自動化まで含めて任される案件もあれば、対象の洗い出しに絞って任される案件もあります。任される範囲は案件ごとに異なるため、案件情報にどこまで含まれているかを確認しておくと、着手後の認識違いを防げます。範囲が明確でない場合は、最初の打ち合わせで対象・見せ方・やめるもの・自動化のどこまでを扱うかを一つずつ確認しておくと、見積りと実際の作業がずれにくくなります。
リモートワーク案件をお探しの方へ
Remoguは、株式会社LASSICが運営するITエンジニア・デザイナー専門のリモートワーク案件紹介サービスです。フルリモート・ハイブリッドの案件から、スキルに合うものを探せます。
決める順番が分かれば監視も設計できます。インフラの案件を見てみてください。
会員登録無料 / 案件閲覧・相談は無料
※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」増えたまま(2026年・2026年8月確認)
*2 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」見えるようにする(2026年・2026年8月確認)
*3 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」時間帯の前提(2026年・2026年8月確認)
*4 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」人の時間(2026年・2026年8月確認)
*5 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」見積りの前提(2026年・2026年8月確認)
*6 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」常時の余裕(2026年・2026年8月確認)
*7 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」止まる備え(2025年4月・2026年8月確認)
*8 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」構成の把握(2025年4月・2026年8月確認)
*9 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」刷新の限界(2026年・2026年8月確認)
*10 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」終わらない作業(2026年・2026年8月確認)