4号随契の自治体調達はなぜ2件目から速いのか?意見聴取の要件と必要スキルの整理
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- 一般競争入札が原則という前提と、随意契約(4号随契)が使える条件、その位置関係の整理
- 実施計画の提出や学識経験者の意見聴取という手続きの重さと、2件目以降を軽くする3つの分岐
- 受託で公共領域の経験を積むことから、自分の役務を新役務として売る側へつなげる関わり方の整理
自分のサービスやツールを自治体に届けたいと考えても、頭に浮かぶのは入札という重い手続きです。地方自治体の契約は一般競争入札が原則であり、参入のハードルは決して低くありません1。ところが新商品や新役務については、随意契約という別の入口が用意されています3。この記事では、その入口の位置と、実際に通すまでの手続きを整理します。
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1. 原則は一般競争入札|そのうえで例外が用意されている
「入札」という言葉が生む距離感
自治体との取引は入札を経なければならない、という印象は強く残っています。実際に地方自治体の契約は一般競争入札が原則です1。この原則は、特定の事業者に偏らない公正さを保つための仕組みであり、変わることはありません。まず押さえておきたいのは、この原則そのものは揺らがないという点です。
ただし、原則がある場所には条件付きの例外も置かれています。政令で定める場合に限り、例外として随意契約によることができます2。入札という重い扉の脇に、条件を満たせば通れる小さな扉が用意されている、と捉えると景色が変わります。その小さな扉の中身を、次の段落から順に見ていきます。
政令で定める場合に限られる、という条件
随意契約は「誰でも使える近道」ではありません。政令が定める場合に該当するときに限り、例外として認められる仕組みです2。条件を満たさない案件まで随意契約に流れ込むわけではない、という点は誤解しやすいところです。
この原則と例外の位置関係を図に整理すると、次のようになります。
出典:総務省「随意契約によるスタートアップからの調達の拡大について」(2026年8月)をもとに作成
例外があること自体が、参入の糸口になる
自分のサービスや小さなツールを自治体に届けたいと考えたとき、この例外の存在は、道が完全に閉ざされているわけではないことを示しています。入札で戦う体力がない、という理由だけで諦める必要はありません。
入札で他社と価格を競うよりも、新商品・新役務として随意契約の土俵に立つほうが、個人や小さなチームには現実的な道です。次の章では、この4号随契という仕組みの中身を具体的に見ていきます。
1件目の実施計画を、どう書けば通りやすいか
実施計画は、事業の中身や見通しを整理した文書ですが、決まった書式があるわけではありません。何を新しいと説明するか、誰に向けた役務なのかを、具体的な言葉で示せるかどうかが問われます。
受託の案件で自治体向けの資料づくりや調整に触れた経験があると、この実施計画をどう組み立てればよいかの見通しが立ちやすくなります。まずは案件を通じて、自治体との仕事の進め方に慣れておくことが、遠回りに見えて近道です。
2. 4号随契とは何か|新商品と新役務という2つの入口
随意契約が認められる2つの入口
4号随契と呼ばれる仕組みには、2つの入口があります。新商品の買い入れ・借り入れ、または新役務の提供を受ける契約は、随意契約により調達できます3。「モノ」と「サービス」のどちらの形でも、この入口に該当し得るということです。
この2つの入口を図に整理すると、次のようになります。
出典:総務省「随意契約によるスタートアップからの調達の拡大について」(2026年8月)をもとに作成
説明責任という条件とセットになっている
この随意契約は、無条件に使える近道ではありません。説明責任を果たした上であれば、一般競争入札ではなく随意契約によることができる、という条件が付いています4。「なぜこの事業者・この契約を随意契約で結ぶのか」を言葉で説明できることが前提です。
価格の安さだけで選ばれる契約よりも、独自性や新規性を言葉で説明できる契約のほうが、この入口には向いています。次の章では、この仕組みを後押しする2026年8月の総務省通知を見ていきます。
個人や小さなチームにとっての意味
新商品・新役務という言葉は、大企業だけを指すものではありません。自分が開発したプロダクトや、専門性を生かした役務も、この入口の対象になり得ます。
自分の技術をプロダクトや役務の形に整え、自治体という新しい顧客に届ける動き方は、案件を受託しながら経験を積むエンジニアの延長線上にあります。まずは受託の形で公共領域に触れておくと、この入口を自分の言葉で説明できるようになります。
違いを表で確認する
一般競争入札と4号随契は、原則と例外という関係にあるだけでなく、対象となる範囲や必要な条件も異なります。表に整理すると、その違いが見えてきます。
| 項目 | 一般競争入札 | 随意契約(4号随契) |
|---|---|---|
| 位置づけ | 契約の原則1 | 政令で定める場合に限られる例外2 |
| 対象となる範囲 | 契約全般 | 新商品の買い入れ・借り入れ、新役務の提供を受ける契約3 |
| 必要な条件 | 特段の説明を要しない原則の手続き | 説明責任を果たすこと4 |
| 根拠 | 地方自治法上の原則 | 2026年8月の総務省通知5 |
表からも分かるとおり、随意契約は原則を置き換えるものではなく、条件を満たした場合に限って認められる位置づけです。次の章では、この位置づけを変えた2026年8月の通知を見ていきます。
3. 2026年8月の通知で何が変わったのか
4号随契に該当すると判断し、活用を検討するよう求めた
2026年8月、総務省は新たな通知を示しました。新商品・新役務の調達については、4号随契の事由に該当するものと判断し、その活用を積極的に検討することを自治体に求めています5。これまで曖昧だった位置づけに、後押しの言葉が加わった形です。
この通知は、随意契約という選択肢を「使ってもよい」から一歩進めて、「積極的に検討してほしい」という姿勢に変えるものです。次の段落では、この後押しの根拠を確認します。
根拠となる成長戦略と、毎年見られる調達実態
この通知の根拠になっているのが、令和8年7月21日に閣議決定された日本成長戦略です6。あわせて、調達の実態については毎年度定期的に調査が実施されることになりました7。1回限りの掛け声で終わらせない、という姿勢が読み取れます。
さらに、優れた調達事例については他の地方公共団体への横展開を推進する方針も示されています8。ある自治体で通った1件が、別の自治体にとっての参考事例になる構図です。1件を丁寧に積み上げる意味は、この横展開の仕組みにもつながっています。
技術的な助言という位置づけ、それでも背景にある目標
この通知はあわせて、新規中小企業者との契約比率について、国等全体として3%以上を目標とする方針にも触れています15。地方公共団体においても、国等の目標達成に向けた取組に準じた取組が求められています16。
一方で、この通知自体は地方自治法第245条の4第1項に基づく技術的な助言という位置づけです17。強制力を持つ命令ではなく、方向性を示す助言である点は押さえておきたいところです。とはいえ、目標や横展開の仕組みが後ろに控えている以上、追い風であることに変わりはありません。
毎年の調査が意味すること
調達の実態が毎年度定期的に調査される、という仕組みは7、1件で終わらせず継続的に取り組む自治体を後押しする効果もあります。1件目を通した経験は、翌年度以降の判断材料としても積み上がっていきます。
横展開の方針とあわせて考えると8、1件目に丁寧に取り組む価値は、その1件だけにとどまりません。次の章では、この1件目に集中する手続きの重さを具体的に見ていきます。
4. 手続の重さはどこにあるのか|実施計画と2人以上の意見聴取
実施計画を提出するところから始まる
随意契約の入口に立ったからといって、そのまま契約に進めるわけではありません。まず求められるのは、新たな事業分野の開拓の実施に関する計画、いわゆる実施計画の提出です9。この計画が、随意契約という判断の土台になります。
実施計画は、思いつきの企画書ではなく、事業の内容や見通しを整理した文書です。ここで手を抜くと、後の確認の段階でつまずきます。
2人以上の学識経験者の意見を聴くのが原則
実施計画を確認する前段階として、原則2人以上の学識経験者の意見を聴かなければならない、という手続きが定められています10。この人数要件が、手続の重さの中心にあります。
自分だけで完結できる手続きよりも、外部の学識経験者を巻き込む手続きのほうが、当然ながら時間がかかります。ただしこの重さは、次の章で見るように条件次第で軽くできます。
段階を表に整理する
実施計画の提出から意見聴取まで、手続の各段階を表に整理すると、どこにどんな条件がついているかが見えてきます。
| 段階 | 内容 | 軽くできる条件 |
|---|---|---|
| 実施計画の提出 | 新たな事業分野の開拓の実施に関する計画を提出する9 | ― |
| 学識経験者の意見聴取 | 原則2人以上の学識経験者の意見を聴く10 | 書面による実施も可能11 |
| 意見聴取の方法 | 対面での聴取が基本の形 | 国の機関の審査で代える場合がある12 |
| 2件目以降の確認 | 他の自治体の実施計画の写しをもって確認する13 | 学識経験者の意見聴取の手続等が不要になる14 |
表にすると分かるのは、意見聴取の「方法」と「回数」に、軽くできる余地が集中しているという点です。次の章では、この余地を具体的に見ていきます。
個人や小さなチームが準備しておきたいこと
実施計画づくりや意見聴取への対応は、法務の部署を抱える大きな組織でなくても進められます。ただし、自分の役務のどこが新しいのかを、資料と言葉の両方で示せるように準備しておく必要があります。
こうした資料づくりや自治体とのやり取りは、公共領域の案件を受託する中で身につけやすい実務です。まずは案件として関わりながら、実施計画に必要な視点を養っておくと、次の一歩が具体的になります。
5. 2件目から速くなる仕組み|書面・国の審査・他自治体の写し
意見聴取の重さを軽くする2つの方法
意見聴取そのものをなくすことはできませんが、負担を軽くする方法はいくつか用意されています。ひとつは、対面ではなく書面による実施も可能という点です11。日程調整に追われず、資料のやり取りで完結させられる余地があります。
もうひとつは、国の行政機関等における学識経験者の意見聴取をもって代えられる場合がある、という点です12。すでに国の機関の側で審査を経ているのであれば、自治体が独自にもう一度、同じ手続きを重ねる必要はなくなります。
他の自治体の写しがあれば、そもそも手続きが要らなくなる
さらに大きいのが、他の自治体の実施計画です。既に確認を終えた実施計画の写しをもって確認することができる場合があります13。
1件目から手続きを組み立てるよりも、確認済みの写しを添えるほうが、話は早く進みます。写しで確認する場合は、学識経験者の意見聴取の手続等が不要になるためです14。ここが「2件目から速くなる」といえる最大の理由です。
流れを図で確認する
ここまでの手続きの流れと、軽くできる3つの分岐を図にまとめます。
出典:総務省「随意契約によるスタートアップからの調達の拡大について」(2026年8月)をもとに作成
1件目を通した実績は、次の案件だけでなく、他の自治体に横展開される土台にもなります8。まずは受託の形で、こうした案件に触れておくことが、次の一歩への近道です。
まずは受託で公共領域に触れられる案件を見る →
1件目に集中する理由
2件目以降が軽くなるという仕組みは、裏を返せば1件目にどれだけ丁寧に取り組めるかが分かれ目になる、ということでもあります。書面や国の機関の審査を使えるかどうかも、1件目の準備次第で変わってきます。
1件目の実施計画づくりに不安があるなら、まずは受託の案件で自治体との仕事の進め方に触れておくと、準備の解像度が上がります。
6. 単価と事業につながる整理|受託から自分の役務を売る側へ
1件目と2件目で、重さがこれだけ変わる
1件目にかかる手間と、2件目以降にかかる手間は、同じ制度とは思えないほど変わります。1件目は実施計画の提出から意見聴取まで一通り必要ですが、2件目以降は写しの確認で済む場合があります13。
この差を図にすると、次のようになります。
出典:総務省「随意契約によるスタートアップからの調達の拡大について」(2026年8月)をもとに作成
受託でまず経験を積む、という現実的な一歩
この差を踏まえると、最初から自分の役務を丸ごと自治体に売り込むよりも、まずは案件を受託する形で公共領域に関わっておくほうが、現実的な一歩になります。実施計画をどう書くか、意見聴取にどう臨むかは、経験を積んだ人ほど土地勘があります。
受託の中で公共領域の進め方を体で覚えておけば、自分の役務を新役務として売り出す段になったとき、説明責任を果たす言葉も具体的になります。焦って自分の会社を丸ごと売り込む前に、まず案件の中で経験を積んでおく順番が、遠回りに見えて近道です。
自分の役務を売る側へ、そして横展開へ
関わり方には、受託・自分の役務を売る・他自治体への横展開という段階があります。表に整理すると、それぞれの動き方が見えてきます。
| 関わり方 | 主な動き方 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 受託でまず経験を積む | 案件として公共領域の実施計画づくりや調整に関わる | これから公共領域に触れたい人 |
| 自分の役務を売る側へ | 新役務として自分のサービス・専門性を提案する3 | 受託で土地勘を積んだ人 |
| 他自治体への横展開 | 確認済みの写しを添えて2件目以降につなげる13 | 1件目を通した実績がある人 |
どの段階から始めるにしても、場所を選ばずに動けることは大きな助けになります。Remoguでは、案件の90%以上がフルリモート可能です。
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単価を考えるときに入れておきたい視点
自治体向けの案件は、汎用的な受託案件と同じ単価感でそのまま比較できるとは限りません。実施計画づくりや意見聴取への対応にかかる手間も、単価を考える材料に含めておくと安心です。
報酬の水準は案件によって異なるため、まずは受託の案件で条件を確認しながら、自分の単価感を確かめていく進め方が現実的です。
7. リモートでの進め方と、よくある質問
リモートでの進め方
実施計画の作成や意見聴取の調整は、必ずしも自治体の窓口に出向かなければならない業務ではありません。書面による実施も可能という条件は11、リモートで進めやすい流れとも相性がよいものです。
場所に縛られずに公共領域の案件に関わりたいと考えるなら、まずはRemoguで自分の経験に近い案件を確認しておくと、次の一歩が具体的になります。よくある質問を、最後に整理します。
個人のエンジニアが4号随契の案件に関わるにはどう進めればよいですか
最初から自分の役務を新役務として売り込むよりも、まずは案件を受託する形で公共領域に関わり、実施計画づくり9や意見聴取の進め方10を経験しておく順番が現実的です。受託の案件を通じて自治体との仕事の進め方に慣れておけば、実施計画に何を書けばよいかも見えやすくなります。
自治体の仕事にリモートで関わることはできますか
意見聴取は書面による実施も可能です11。書面や資料共有を軸にした進め方であれば、リモートで対応できる部分は増えます。対面での確認が残る場面があっても、日程の多くは遠隔でのやり取りで詰めていけます。Remoguでは、案件の90%以上がフルリモート可能です。
自分の役務を新役務として売るには何を用意すればよいですか
新役務として認められるには、説明責任を果たせることが前提です4。受託の中で実施計画や意見聴取の進め方を経験しておくと、自分の役務を説明する言葉も具体的になります。まずは受託の案件で、公共領域の経験を積むところから始めてみましょう。
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自治体に売る道は、1件目の手続を越えれば軽くなります。受託と並行して進めたいなら、条件から確かめてみてください。
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※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 総務省「随意契約によるスタートアップからの調達の拡大について」原則の確認(2026年8月)
*2 総務省「随意契約によるスタートアップからの調達の拡大について」例外の条件(2026年8月)
*3 総務省「随意契約によるスタートアップからの調達の拡大について」4号随契の中身(2026年8月)
*4 総務省「随意契約によるスタートアップからの調達の拡大について」運用の条件(2026年8月)
*5 総務省「随意契約によるスタートアップからの調達の拡大について」通知の中身(2026年8月)
*6 総務省「随意契約によるスタートアップからの調達の拡大について」根拠の日付(2026年8月)
*7 総務省「随意契約によるスタートアップからの調達の拡大について」調査の頻度(2026年8月)
*8 総務省「随意契約によるスタートアップからの調達の拡大について」横展開(2026年8月)
*9 総務省「随意契約によるスタートアップからの調達の拡大について」計画の提出(2026年8月)
*10 総務省「随意契約によるスタートアップからの調達の拡大について」意見の聴取(2026年8月)
*11 総務省「随意契約によるスタートアップからの調達の拡大について」聴取の方法(2026年8月)
*12 総務省「随意契約によるスタートアップからの調達の拡大について」代替の経路(2026年8月)
*13 総務省「随意契約によるスタートアップからの調達の拡大について」写しの利用(2026年8月)
*14 総務省「随意契約によるスタートアップからの調達の拡大について」手続の省略(2026年8月)
*15 総務省「随意契約によるスタートアップからの調達の拡大について」比率の目標(2026年8月)
*16 総務省「随意契約によるスタートアップからの調達の拡大について」自治体の立場(2026年8月)
*17 総務省「随意契約によるスタートアップからの調達の拡大について」通知の性格(2026年8月)