公的個人認証サービス(JPKI)の導入案件|方式の選び方と失効確認の方式が費用に効く理由
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- マイナンバーではなく電子証明書を使う本人確認の範囲と、方式によって変わる手続きの順番
- サービスプロバイダとプラットフォームという二つの方式の違いと、設備をクラウド型で持てる選択肢
- CRLとOCSPという失効確認の方式が費用の前提に与える影響と、4情報の転記が入力削減につながる仕組み
本人確認のAPIを呼び出すだけの実装として、JPKIの話が語られる場面が増えています。デジタル庁の解説を読むと、コードを書き始める前に決まっていることがいくつも並んでいます1。方式の選び方、認定の順番、失効確認の方式——実装の外側にある工程を知っているかどうかで、案件に入ってからの動き方が変わります。この記事では、その工程を一つずつ整理し、費用の前提や入力削減の効果まで含めて見ていきます。
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1. マイナンバーは使わない(扱う情報の範囲)
JPKIという略称だけを見て、マイナンバーそのものを扱う仕組みだと捉えてしまう場面があります。番号を保管する仕組みだと誤解したまま設計に入ると、扱ってはいけない情報まで扱う設計になりかねません。この記事ではまず、JPKIが確認に使う情報の範囲を正しく押さえるところから始めます。案件に入ってから前提を作り直すよりも、ここを最初にそろえておくほうが、後工程の負担は軽くなります。
そもそも何を確認する仕組みなのか
JPKIは、マイナンバーカードのICチップに搭載された電子証明書を利用する仕組みです。マイナンバー自体は利用しません1。本人確認の材料になっているのは、カードに書き込まれた証明書という電子的な鍵であり、12桁の番号そのものではないという点が起点になります。証明書という電子的な鍵を検証する、という言葉に置き換えると、扱う範囲がぐっと具体的になります。
この違いは、設計の最初の分岐点になります。証明書を検証する経路と、番号を保管・利用する経路とでは、扱うべき安全管理の水準も、関わる法令の建てつけも変わってきます。証明書だけを扱う設計だと最初に決めておくことで、後工程の作り込みが揺れにくくなります。番号の保管まで視野に入れて設計するより、証明書の検証に絞って設計するほうが、要件は明確になります。
図の作成:Remogu編集部。マイナンバーと電子証明書の範囲の違いを整理したもので、統計データではありません
取り違えると何が起こるか
番号そのものを扱う仕組みだと誤認したまま要件定義を進めると、本来は不要な同意取得や保管の設計まで足していくことになります。逆に、証明書の検証だけで完結する範囲を、番号の管理まで広げて考えてしまう遠回りも起こりえます。どちらの取り違えも、後から要件を洗い直す手間につながります。
扱う情報の範囲を最初に絞り込んでおくほうが、あとから設計を戻すよりも手戻りは軽くなります。ここまでを、案件に入る前の共通認識として持っておきたいところです。クライアントと最初にすり合わせておく一言が、後工程の作業量を左右します。
この整理をもとに、次は導入の入り口である二つの方式を見ていきます。扱う情報の範囲が固まったら、次に決めるのは事業者としての立ち位置です。ここから先は、制度の理解というより、事業者としての選択の話になっていきます。
2. 導入方式は2つある(サービスプロバイダとプラットフォーム)
導入の入り口は、大きく二つに分かれます。サービスプロバイダ事業者になる方式と、プラットフォーム事業者になる方式です2。どちらを選ぶかで、必要な手続きも、整える設備も変わってきます。案件の話を聞くときは、まずどちらの方式を前提にしているのかを確かめるところから始めたいところです。
サービスプロバイダ方式とプラットフォーム方式の違い
サービスプロバイダ方式は、自社のサービスの中でJPKIによる本人確認を使う立場です。一方のプラットフォーム方式は、認証の仕組みそのものを他の事業者に提供する立場になります2。同じJPKIという言葉を使っていても、事業者としての位置づけがまったく違います。この違いを知らないまま話を聞くと、必要な手続きの量を見誤ります。
位置づけが違えば、事前に整えるものも変わります。プラットフォーム方式を選ぶ場合は、まずJ-LISから技術仕様等を入手したうえで、主務大臣認定手続きを進める必要があります3。実装に入る前に、この手続きが挟まる方式だと理解しておくことが起点になります。サービスプロバイダ方式より、手続きに時間がかかる前提だと捉えておくほうが、見積もりの精度は上がります。
図の作成:Remogu編集部。二つの方式で進み方が異なることを整理したもので、統計データではありません
表で並べて分かる違い
二つの方式は、名前だけでは違いが伝わりにくいものです。位置づけと、手続きの起点、それに実装に入る前に決まっている順番を並べると、案件でどちらの前提に立っているのかを説明しやすくなります。次の表に、要点をまとめました。
| 項目 | サービスプロバイダ事業者になる方式 | プラットフォーム事業者になる方式 |
|---|---|---|
| 位置づけ | JPKIを自社サービスの中で使う立場2 | 認証の仕組みそのものを他の事業者に提供する立場2 |
| 手続きの起点 | JPKI利用の申請から進める | まずJ-LISから技術仕様等を入手する3 |
| 実装前に決まっていること | 導入の合意が先に必要 | 認定を取ってから設備を整える順番になっている3 |
どちらの方式かによって、案件で最初に確認したい資料が変わります。ここを押さえておくと、参画後にクライアントと協議する材料が具体的になります。表の左右どちらの列を前提にした話なのかを、最初の打ち合わせで確認しておきたいところです。
どちらを選ぶかを後回しにするより、先に立ち位置を決めておくほうが、必要な手続きの見積もりが立てやすくなります。次章では、プラットフォーム方式を選んだ場合に必要になる、その手続きの順番を詳しく見ていきます。
3. 認定を取ってから設備を整える(手続きの順番)
プラットフォーム方式を選ぶ場合、実装より先に済ませておく手続きがあります。この順番を知らずに設備投資から始めると、後戻りが発生しかねません。案件に加わる前に、まずこの順番を頭に入れておきたいところです。
J-LISへの照会から主務大臣認定までの流れ
まずはJ-LISから技術仕様等を入手したうえで、主務大臣認定手続きを進める必要があります3。技術要件を先に確認し、そのうえで認定の手続きに入るという順番が決まっています。開発の着手より先に、この確認と申請の工程が挟まります。
この順番を踏まえずに設備の選定や開発のスケジュールを先に固めてしまうと、認定の過程で前提が変わったときに、計画を作り直す手間が発生します。手続きの順番を、開発計画より先に押さえておきたいところです。手続きを後回しにするより、先に進めておくほうが、開発の見通しは立てやすくなります。
図の作成:Remogu編集部。手続きの順番を整理したもので、統計データではありません
実装より先に決まっていること
案件に加わるとき、目に入るのはAPIの仕様や開発環境ですが、その手前に制度側の手続きが挟まっています。この工程がどこまで進んでいるかによって、実装に着手できる時期そのものが変わります3。手続きの進捗を確かめずに開発計画だけを立てると、後で日程がずれます。
手続きの進み具合を早い段階でクライアントと協議しておくと、開発のマイルストーンを制度側の進行に合わせて組み直しやすくなります。逆に、実装の計画だけを先に固めてしまうと、認定手続きの進み具合に開発が振り回されることになります。制度側の進行を確かめる一言が、開発の安定につながります。
この順番を理解しているかどうかは、参画後の信頼にも関わってきます。次は、設備の持ち方に選べる余地があるという話に移ります。
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4. 設備の持ち方に選択肢がある(クラウド型の可否)
設備というと、自社の環境に構えるものだと考えがちですが、選べる持ち方はそれだけではありません。持ち方の選択肢を知っているかどうかで、案件の進め方そのものが変わってきます。
署名検証設備はクラウド型でも整えられる
署名検証に必要な設備は、クラウド型での導入も可能です4。自社の環境に一から構える方法だけでなく、クラウド上で用意する道も用意されています。初期に大きな設備を抱え込む前提で話を進める必要はありません。
この選択肢があることで、初期に大きな設備投資を伴う進め方より、まずクラウド型で始めて運用しながら整えていく進め方も取りやすくなります。案件に入るときは、この選択肢がすでに前提に含まれているかどうかを確認しておきたいところです。前提が違えば、開発の初期に用意するものも変わってきます。自社に構える前提で見積もりを立ててしまうと、あとからクラウド型に切り替える相談が難しくなる場面もあります。
表で見る設備の持ち方
設備の持ち方は、初期の整え方にも、その後の運用体制にも関わってきます。自社に構える場合とクラウド型で持つ場合の違いを、次の表に整理しました。どちらを選ぶにしても、選んだ理由を説明できる状態にしておきたいところです。
| 持ち方 | 内容 | 関わってくる観点 |
|---|---|---|
| 自社に設備を構える | 署名検証設備を自社の環境に整備する | 初期の整備にかかる時間と体制 |
| クラウド型で持つ | 署名検証に必要な設備をクラウド型で導入する4 | 運用しながら整えていく進め方との相性 |
どちらの持ち方を選ぶかは、案件ごとの体制やスケジュールによって変わります。設備の話も、実装の話と同じくらい早い段階でクライアントと協議しておきたいところです。設備の持ち方を確かめる一言が、開発のスケジュールを具体的にします。
設備の選択肢を押さえたところで、次は費用の前提に関わる失効確認の方式を見ていきます。設備の持ち方が固まった先に、費用の話がつながっています。
5. 失効確認の方式が費用の前提に効く(CRLとOCSP)
設備の話を終えたところで、費用の前提に関わる部分に移ります。ここは、技術の選択がそのまま費用の建てつけにつながる場面です。案件で費用の話が出たときに、技術的な背景を説明できるかどうかが分かれ目になります。
検証手数料の建てつけ
検証手数料は、確認件数に応じた従量課金制で、署名用電子証明書の場合は20円/1件、利用者証明用電子証明書の場合は2円/1件が示されています5。これら手数料は、当面無料とされています6。件数に応じた課金という建てつけそのものは、覚えておきたい前提です。
当面無料とされている前提のうえで、注目したいのが確認方式による違いです。失効情報の確認方式によって、無料化の扱いそのものが異なるとされています7。同じ「無料」という言葉でも、方式によって続く期間の前提が違います。
出典:デジタル庁「公的個人認証サービス」(2026年6月)をもとに作成
表で見る確認方式の違い
CRLとOCSPは、どちらも失効情報を確認するための方式ですが、無料化の扱いが揃っていない点は、費用を見積もるうえで見落としやすいところです。方式ごとの扱いを、次の表にまとめました。表を見比べる際は、無料化の扱いだけでなく、その先で確認しておきたい観点も合わせて見ておくと理解が深まります。
| 確認方式 | 無料化の扱い | 検討したい観点 |
|---|---|---|
| CRL方式 | 恒久無料化とされています7 | 長期の運用を前提にした設計と相性が良い |
| OCSPレスポンダ方式 | 当面3年間無料化とされています7 | 期限後の費用構造を早めに確認しておきたい |
費用の前提が方式によって違う以上、失効確認の方式は、実装の細部ではなく、費用設計そのものに関わる選択だと捉えておきたいところです。方式を選ぶ相談は、実装の話より前に済ませておきたいところです。
技術の選択が費用に直結するという構造を理解していることは、クライアントと協議するときの材料になります。費用の話を後回しにせず、実装の初期段階で共有できる立場は、任される範囲も広がりやすくなります。ここまでの整理を踏まえて、最後にもう一つ、本人確認の先にある入力削減の話に触れます。
費用設計まで関わる本人確認まわりの案件を見る →
6. 本人確認と入力削減の両方に効く(4情報の転記)
ここまでは制度側の手続きと費用の話でしたが、JPKIには利用者の体験に関わる効能もあります。実装の負担だけでなく、利用者にとっての価値まで語れると、案件での評価は変わってきます。
4情報の転記でできること
署名用電子証明書には、住所、氏名、生年月日、性別という4情報が記録されており、この情報を転記することができます8。本人確認の手段であると同時に、入力の手間を減らす仕組みでもあります。手入力を前提にした画面設計より、転記を前提にした画面設計のほうが、利用者の負担は軽くなります。
利用者が手入力する項目を減らせるということは、入力ミスが混じる余地も同時に減らせるということです。本人確認という守りの機能と、入力削減という体験の機能が、同じ仕組みの中に同居しています。この両面を説明できると、実装の狙いがクライアントに伝わりやすくなります。
外から入るエンジニアの目線
案件に入るときに問われるのは、APIをどう呼ぶかだけではありません。方式の選択、認定の順番、失効確認の方式、そして入力削減という効果——これらを費用と期間の言葉で説明できるかどうかが、任される範囲を左右します。制度の背景を知っている立場は、実装の細部だけを追う立場より、任される裁量が広がります。
Remoguでは、案件の90%以上がフルリモート可能です。制度の理解を含めて実装を任せられる立場を目指すなら、まずは自分の経験と近い案件がどこにあるかを確かめてみるところから始められます。今の経験がどの案件に活きるのか、確かめてみる価値はあります。
扱う情報の範囲、方式の選択、手続きの順番、費用の前提、そして入力削減という効果まで——JPKIは、実装の技術だけでは語りきれない工程を含んでいます。この工程を理解している立場は、案件の中でも重宝されやすくなります。
7. よくある質問
ここまでの内容をもとに、よくある疑問に答えます。案件に入る前の確認材料として使ってください。
マイナンバーカードを持っていない利用者はJPKIを使えませんか
JPKIはマイナンバーカードのICチップに搭載された電子証明書を利用する仕組みです1。カードそのものが前提になるため、カードを持たない利用者への対応は、別の本人確認手段と組み合わせて検討する範囲になります。この前提を最初に確認しておくと、要件の抜けを防げます。
サービスプロバイダ方式とプラットフォーム方式はどちらを選べば良いですか
自社サービスの中でJPKIによる本人確認を使うだけであればサービスプロバイダ方式、認証の仕組みそのものを他の事業者に提供する立場であればプラットフォーム方式にあたります2。プラットフォーム方式は、J-LISから技術仕様等を入手したうえで主務大臣認定手続きを進める工程を伴います3。どちらの立場かは、案件の要件定義の早い段階で確認しておきたいところです。
クラウド型の設備は導入をどれくらい早められますか
署名検証に必要な設備は、クラウド型での導入も可能です4。自社の環境に一から構える場合と比べて、初期の整え方に幅が生まれる選択肢だと捉えておくと良いところです。具体的な期間は案件の条件によって異なるため、参画時にクライアントと協議して確かめておきたい部分です。どちらの持ち方が前提になっているかで、開発初期に用意するものが変わる点も合わせて確認しておきたいところです。
失効確認の方式はあとから見直せますか
CRL方式とOCSPレスポンダ方式では、無料化の扱いが異なるとされています7。方式ごとの費用の前提が違う以上、見直しには費用設計への影響が伴います。方式の選択は、実装の初期段階でクライアントと協議しておきたい論点です。
制度の理解を実装に落とし込める経験は、案件の中でも任される範囲を広げる材料になります。まずは自分の経験に近い案件がどこにあるのか、確かめてみることから始めてみませんか。
リモートワーク案件をお探しの方へ
Remoguは、株式会社LASSICが運営するITエンジニア・デザイナー専門のリモートワーク案件紹介サービスです。フルリモート・ハイブリッドの案件から、スキルに合うものを探せます。
方式の選択を費用と期間の言葉で語れる人は、案件の入口に立てます。まずはどんな条件の案件が並んでいるか見てみてください。
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※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 デジタル庁「公的個人認証サービス」仕組み(2026年6月)
*2 デジタル庁「公的個人認証サービス」導入方式(2026年6月)
*3 デジタル庁「公的個人認証サービス」手続き(2026年6月)
*4 デジタル庁「公的個人認証サービス」設備(2026年6月)
*5 デジタル庁「公的個人認証サービス」手数料(2026年6月)
*6 デジタル庁「公的個人認証サービス」手数料(2026年6月)
*7 デジタル庁「公的個人認証サービス」確認方式(2026年6月)
*8 デジタル庁「公的個人認証サービス」活用(2026年6月)