電子処方箋のコード統一|独自コードを防ぐ受け取り検証

📘 この記事でわかること
- 電子処方箋の運用開始が施設の35.3%まで進んだことと、稼働後は月917万件の重複投薬アラートが実際に発生していること
- 物流段階と納入以降で医薬品コードが変わることと、それが独自コード(ハウスコードなどの独自コード)を生む理由
- 統一コードは新設せず対応表を国が整理する道を選んだことと、受け取り口で仮の符号を弾く改修が同時期に進んだこと
医薬品コードの不一致は、医療の現場だけの話ではありません。同じ品目を指すはずのコードが、卸業者との受発注と医療現場の処置・投薬とで別物になっている場面は、外部システムとの連携に関わるエンジニアなら見覚えがあるはずです。厚生労働省がまとめた電子処方箋の運用状況には、その不一致がどう生まれ、どう止められたかが具体的に記録されています。コードが揃わない現場で何が起きていて、何が効いたのかを見ていきます。
1. 動き出した施設では効果が出ている
医療DXという言葉は聞こえてきても、実際にどこまで進んだのかは数字で確かめないと分かりません。電子処方箋も同じです。制度が始まっていることと、現場で日常的に使われていることの間には、はっきりした差があります。
申請と稼働の間には差がある
令和7年9月21日現在、オンライン資格確認システムを導入した213,301施設のうち、118,674施設(40.8%)が電子処方箋の利用を申請済みです1。ここまでは準備が整った施設の数字です。
実際に運用を開始している施設は75,332施設(35.3%)にとどまります1。申請から稼働までの間には差があり、準備が整ってから実際に動かすまでには時間がかかっていることが読み取れます。
分野ごとの差も見えます。医科医療機関、つまり病院や医科診療所に限ると、運用開始は19,646施設(21.5%)です2。全体の35.3%という数字よりも、自分が連携する分野の数字を確かめるほうが、実態に近づきます。
稼働すれば数字に表れる
運用が進んだ施設では、効果も数字として残っています。令和7年8月の処方情報登録は936万件、調剤結果登録は5,515万件でした3。
同じ月に、重複投薬のアラートは917万件、併用禁忌のアラートは1.4万件発生しています3。件数を医学的な当否ではなく、確認の網が実際に動いている回数として見ると、制度が現場で機能し始めていることが分かります。
出典:厚生労働省「電子処方箋の普及・活用拡大に向けた対応状況」(2025年9月)をもとに作成
これらの件数は直近も増加傾向にあります3。稼働する施設が増えるほど、確認の機会も増えるということです。制度を動かす土台は整いつつありますが、その土台を支えるコードのほうは、まだ整理の途中にあります。
118,674施設が申請を済ませ、75,332施設が実際に稼働しているという今の数字は1、稼働に至るまでの間に外部システムとの接続を実際に検証する場面が発生していることを表しています。連携の設計や検証に携わってきた経験は、まさにこの場面で活きてきます。
分野による差も、案件を見るときの手がかりになります。全体では35.3%が運用開始でも、医科医療機関では21.5%にとどまっています2。同じ制度でも分野によって進み方が違うという前提を持っておくと、案件ごとの状況を確かめる姿勢につながります。
2. 同じものに複数のコードがある
場面ごとに違うコードが使われている
医薬品コードと聞くと、1つの品目に1つの番号が対応していると思われがちです。ところが実際には、卸業者と医療機関との受発注や、医療現場での処置・投薬など、様々な場面で、様々なコードが活用されています4。
とくに差が大きいのは、医療機関や薬局までの物流段階と、納入以降の段階です。この2つの段階で活用されているコードは大きく異なり、容易には変換できません4。
同じ品目を指しているはずなのに、見ている場所によって別のコードが付いている。連携するシステムを外から見ているエンジニアほど、この違和感に気づきやすいところです。
変換の負担は意見として記録されている
この変換のしにくさは、医療従事者の作業負担になっているという意見として記録されています4。負担が生まれる場所を、表で整理してみます。
| 段階 | 主に挙がる場面 | コードの変換 |
|---|---|---|
| 物流段階 | 卸業者と医療機関・薬局等との受発注 | 納入以降とは異なるコード体系が使われています |
| 納入以降 | 医療現場での処置・投薬等 | 物流段階とは異なるコード体系が使われています |
| 段階をまたぐ変換 | 卸から医療現場まで、同じ品目の情報を引き継ぐ場面 | 容易には変換できず、作業負担になっているという意見があります4 |
物流段階と納入以降、それぞれの場面でコードが独立して運用されてきました。段階をまたいで情報を引き継ごうとした瞬間に、変換という仕事が発生します。作業の当否ではなく、構造として変換が必要になる、という点がここでのポイントです。
コードが違うこと自体よりも、その違いに気づかないまま連携してしまうことのほうが、あとになって響きます。次の疑問は、なぜこの違いが放置されるのか、という点です。
この種の変換の難しさは、医療分野に限った話ではありません。仕入れのコードと現場で使うコードが別々に運用されている業種や、拠点ごとに番号の体系が違うシステムは、いたるところにあります。医薬品コードの整理のされ方は、そうした連携案件に取り組むときの見立てとしても使えます。
表に整理した3つの行のうち、最初の2つは制度としての事実で、3つ目は現場で実際に起きている作業です。制度の事実を知っているだけでは、変換の手間そのものはなくなりません。
コード体系の違いを吸収してきた経験は、意外と評価される場面があります。表面上は地味な作業に見えても、変換のロジックを設計し、検証まで担った経験は、次の連携案件でもそのまま使えます。
変換の手間を減らすために現場でできることは、対応関係を先に確認する習慣を持つことです。行き当たりばったりで変換ロジックを組むと、あとから辻褄を合わせる作業が増えていきます。
3. だから現場が独自コードを作る
一番早いから、その場で作られる
コードの関係性が整理されていないことや、関係者が必要とするタイミングで付番されていない場合があることから、各システムベンダーや医療機関・薬局などにおいて、独自マスタの整備や独自コード(ハウスコードなどの独自コード)の設定等を行う必要が生じています5。
対応関係が公開されていなければ、目の前の連携を動かすために、その場でコードを作るのが一番早い選択になります。これは現場の判断が誤っているのではなく、公開された対応表が無い状態で連携を進めれば、自然に行き着く道です。
ハウスコードなどの独自コードという名前を聞くと、応急処置のように感じるかもしれません。実際には、対応関係が用意されていない場面で連携を止めないための、実務上の選択として生まれています。
結果として費用と時間が増える
この独自対応は、結果としてトラブルの発生や費用・時間の増大につながっていると考えられています5。1つの現場だけの独自コードであれば影響は限られますが、連携先が増えるほど、突き合わせる組み合わせも増えていきます。
出典:厚生労働省「電子処方箋の普及・活用拡大に向けた対応状況」(2025年9月)をもとに作成
独自コードそのものが悪いわけではありません。問題は、独自コードが生まれた経緯と対応関係が、その現場の外から見えないことです。連携するエンジニアが増えるほど、この見えなさがコストになります。
外部から連携案件に加わるとき、最初に渡される仕様書に独自コードの一覧が載っていることがあります。そこで確かめたいのは、そのコードがどこから来たものかです。公開された対応関係に基づくものか、現場で必要に迫られて作られたものかで、その後の変換作業の見通しは変わってきます。
独自コードの由来を尋ねる姿勢は、現場を疑うためのものではありません。対応関係が無いところで連携を止めないための工夫として生まれた以上、その工夫を尊重しながら、次に何を確認すればよいかを考える材料にする姿勢です。
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4. 統一はしないと決めた
新設ではなく整理を選んだ
コードが場面ごとに違うなら、1つに統一すればいいと考えたくなります。ですが、コードに意味が含まれている場合があるため、統一的な医薬品コードを新設することは困難です7。
そこで選ばれたのは、新しいコードを作ることではなく、既にある主要なコードの関係性を医薬品マスタとして整理する道です。国が責任を持ってこのマスタ情報の維持管理を行う必要があります6。
令和8年度から対応関係を明らかにする
この整理は、令和8年度から具体的に動き出します。医薬品コードの関係性、つまりYJコード・レセ電コード・一般名コードの対応関係を明らかにするという対応が示されています8。
| 観点 | これまで | 対応 |
|---|---|---|
| 新しい統一コードの新設 | コードに意味が含まれている場合があります | 新設はせず、既存コードの関係性を整理する方針です7 |
| コードの関係性 | 各コードの関係性が整理されていない場合があります5 | 令和8年度から、YJコード・レセ電コード・一般名コードの対応関係を明らかにします8 |
| 維持管理の主体 | 各システムベンダーや医療機関・薬局が、必要に応じて独自マスタを整備してきました5 | 医薬品マスタとして整理し、国が責任を持って維持管理を行います6 |
新設ではなく整理という選択は、遠回りに見えるかもしれません。ですが、意味を含んだコードを作り直すよりも、既にある関係性を明らかにするほうが、現場への影響を抑えながら進められます。
対応関係が公開されれば、これまで現場ごとに作られていた独自コードは、少しずつ必要性を失っていきます。ただし、対応表があるだけでは、送る側の運用がすぐに変わるとは限りません。
エンジニアの立場から見ると、この変化は基準点が増えるという意味を持ちます。これまでは各現場で作られた変換ルールを1つずつ確認するしかありませんでしたが、公開された対応関係があれば、まずそこを起点に照合できます。
起点が増えるほど、独自ルールを一から読み解く手間は減っていきます。対応表を確認する習慣そのものが、連携作業の質を左右します。
整理された対応表が公開されるということは、これまで各現場で個別に積み上げられてきたノウハウが、少しずつ共有できる形に変わっていくということでもあります。
5. 受け取る側で弾く
対応表があるだけでは止まらない
対応関係が公開されても、独自コードを送る側の運用がすぐに変わるとは限りません。だからこそ、もう1つの手当てが必要になります。受け取る側のシステムで、正しくない値を通さないようにすることです。
電子処方箋では、この手当てが既に実施されています。令和7年8月に電子処方箋管理サービスの改修、具体的には仮に設定した医薬品コードを受け付けない改修が完了しています9。
システム上の措置も同時に済んでいる
この改修とあわせて、その他の医薬品コードに関するシステム上の措置も同月までに実施が完了しています9。対応表を整える動きと、受け取り口を締める動きが、同じ時期に並行して進んでいることが分かります。
出典:厚生労働省「電子処方箋の普及・活用拡大に向けた対応状況」(2025年9月)をもとに作成
対応表を公開するだけでも、受け取り口を締めるだけでも、独自コードは止まりません。両方が揃って初めて、その場しのぎのコードを作る理由がなくなります。これは電子処方箋に限らず、コードや番号の変換が発生する連携案件全般に当てはまる考え方です。
受け取り口で弾くという考え方自体は、目新しいものではありません。入力された値を検証してから後続の処理に渡すという、システム連携ではよく知られた設計です。
電子処方箋の事例が示すのは、この基本的な設計が、全国規模のインフラでも同じように効くという点です。規模の大きさに関わらず、入口を締めるという発想は変わりません。
6. まとめ:対応表と受け取り口の両方
電子処方箋の資料が示しているのは、コードが揃わない現場で何が起きるか、そしてそれをどう止めるかという、具体的な道筋です。運用が進んだ施設では、重複投薬アラート917万件という形で効果が数字に表れています3。一方でコードが場面ごとに違うという構造は残ったままで、現場は独自コード(ハウスコードなどの独自コード)を作ることで、その場をしのいできました5。
| 打ち手 | 主体 | 内容 |
|---|---|---|
| ①対応表を公開する | 国 | 令和8年度から、医薬品コードの関係性(YJコード・レセ電コード・一般名コードの対応関係)を明らかにします8 |
| ②受け取り口で弾く | 電子処方箋管理サービス | 令和7年8月に、仮に設定した医薬品コードを受け付けない改修を完了しました9 |
| 案件での確認ポイント | 連携に関わるエンジニア | 変換表を自作する前に対応関係を確認し、受け取り口で通してしまっている値がないかを確認します |
この2つの打ち手は、どちらか一方では機能しません。対応表を公開しても、受け取り口が緩ければ独自コードは通り続けます。受け取り口を締めても、対応表が無ければ現場は独自コードを作らざるを得ません。両方がそろって、初めて独自コードを作る理由が減っていきます。
外部システムとの連携に関わるエンジニアが、自分の案件で確認できることも同じ2点です。変換表を自作する前に、公開された対応関係があるかを確認すること。そして、受け取り口で通してしまっている値がないかを確認すること。この2つの視点は、医療分野に限らず、コードや番号の不一致が起きるあらゆる連携案件で使えます。
参画する前の打ち合わせで、対応表の有無と受け取り口の検証の有無を尋ねておくと、稼働してから独自コードに悩まされる場面を減らせます。
小さな確認ですが、効果は稼働してからの作業量に直結します。案件を選ぶ段階でこの視点を持てるかどうかが、参画後の負担を左右します。
この記事で見てきた2つの打ち手は、医療分野の制度に限った話ではなく、コードや番号の変換に日常的に向き合ってきたエンジニアにとって、そのまま案件選びの物差しにもなります。
案件ごとに事情は異なりますが、確認する視点そのものは使い回せます。医療分野で通用した考え方は、業種を問わず、コードや番号の変換に関わる連携案件全般に応用できます。
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7. よくある質問
ハウスコードなどの独自コードは、今の案件でも残っていますか
電子処方箋管理サービスでは、令和7年8月に仮に設定した医薬品コードを受け付けない改修が完了しています9。ただしこれは電子処方箋という個別のシステムでの対応です。改修の対象がこのサービスに限られている以上、他のシステムでも同じ確認が済んでいるとは限りません。連携する案件ごとに、受け取り口が同じように締められているかどうかは、案件ごとに確認する価値があります。
統一的な医薬品コードができる可能性はありますか
コードに意味が含まれている場合があるため、統一的な医薬品コードを新設することは困難です7。代わりに、主要なコードの関係性を医薬品マスタとして整理し、国が維持管理する道が選ばれています6。統一ではなく整理という方向性は、令和8年度からの対応にそのまま引き継がれています8。連携するエンジニアの立場では、コードそのものが1つに減ることは期待せず、関係性を確かめる先が増えると捉えておくほうが実務に合います。
この2点の確認は、電子処方箋以外の案件でも使えますか
医薬品コードに限らず、同じ対象を指すコードが複数存在する連携案件では、同じ2つの確認が効きます。公開された対応関係を探すことと、受け取り口で値を検証することです。Remoguの案件は90%以上がフルリモート可能です10。こうした整理や検証の経験を活かせる案件を、まずは自分の目で確かめてみましょう。
対応表が見当たらない案件に入った場合、どうすればいいですか
対応表が見当たらない場合は、まず受け取り口の検証だけでも入れられないかを確認します。対応表が無くても、受け取り口で通す値を制限すれば、トラブルの範囲を狭められます。両方がそろうまでの間、受け取り口の検証は現実的な着地点になります。あわせて、対応表が今後公開される予定があるかどうかも、関係者に確かめておきたいところです。
図の作成:Remogu編集部。本文の内容を整理したもので、統計データではありません
対応関係を確認する視点と、受け取り口を疑う視点。この2つは、医療分野の経験がなくても、コードや番号の変換に関わってきたエンジニアであれば、既に持っている感覚です。まずはRemoguに登録して、自分の経験に近い案件を確かめてみましょう。
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出典・参考情報
*1 厚生労働省「電子処方箋の普及・活用拡大に向けた対応状況」第5回電子処方箋推進会議 資料1(2025年9月29日)(2025年9月)
*2 厚生労働省「電子処方箋の普及・活用拡大に向けた対応状況」第5回電子処方箋推進会議 資料1(2025年9月29日)(2025年9月)
*3 厚生労働省「電子処方箋の普及・活用拡大に向けた対応状況」第5回電子処方箋推進会議 資料1(2025年9月29日)(2025年9月)
*4 厚生労働省「電子処方箋の普及・活用拡大に向けた対応状況」第5回電子処方箋推進会議 資料1(2025年9月29日)(2025年9月)
*5 厚生労働省「電子処方箋の普及・活用拡大に向けた対応状況」第5回電子処方箋推進会議 資料1(2025年9月29日)(2025年9月)
*6 厚生労働省「電子処方箋の普及・活用拡大に向けた対応状況」第5回電子処方箋推進会議 資料1(2025年9月29日)(2025年9月)
*7 厚生労働省「電子処方箋の普及・活用拡大に向けた対応状況」第5回電子処方箋推進会議 資料1(2025年9月29日)(2025年9月)
*8 厚生労働省「電子処方箋の普及・活用拡大に向けた対応状況」第5回電子処方箋推進会議 資料1(2025年9月29日)(2025年9月)
*9 厚生労働省「電子処方箋の普及・活用拡大に向けた対応状況」第5回電子処方箋推進会議 資料1(2025年9月29日)(2025年9月)
*10 Remoguサイト公開情報(フルリモート可能案件の割合)