富岳NEXTとは|次世代計算基盤の案件とHPC・AI融合

📘 この記事でわかること
- 富岳NEXTが目指すAIforScienceと互換性重視の設計方針と、そこで求められる技術者像ということ
- 京から富岳、富岳NEXTへと続く世代交代の流れと、次世代計算基盤が担う役割の広がりということ
- システムソフト・アプリ移植・AI基盤・並列化という技術領域と、リモート案件として関わる具体的な道筋ということ
次世代の計算基盤という言葉を聞くと、国のプロジェクトで、自分には縁遠い領域だと感じるかもしれません。ですが、富岳の後継となる富岳NEXTが目指す姿は、専用のスーパーコンピュータの中だけで完結する話ではありません。既存のAIフレームワークやプログラミング環境との互換性を保ちながら性能を引き出す設計方針が示されており4、そこにはシステムソフトウェアやアプリケーションの移植、AI基盤の構築に携わってきた技術者の経験が求められています。国が主導する計算基盤の整備は、リモートで関われる案件の広がりにもつながっています。
1. なぜいま次世代計算基盤・富岳NEXTの案件が注目されるのか
計算資源の有無が、成果の速度を分ける
生成AIの学習や大規模なシミュレーションが当たり前になった今、成果を左右するのはアルゴリズムの工夫だけでなく、それを動かす計算基盤の性能と使い勝手です。処理速度の高い計算機があっても、既存のソフトウェアや開発環境と噛み合わなければ、研究や開発の現場では使いこなせません。
理化学研究所は2025年1月より、「富岳」の次世代となる新たなフラッグシップシステム、いわゆる富岳NEXTの開発・整備を開始しました1。国が主導する計算基盤の刷新は、遠い研究機関だけの話に見えるかもしれません。ですが、そこで求められているのは、既存のAIフレームワークやプログラミング環境との互換性を保ちながら性能を引き出す設計で4、これは日々の開発現場でシステムソフトウェアやアプリケーションに向き合ってきた技術者の経験と、地続きの領域です。
最新のハードウェアを揃えることよりも、その上で既存の資産を動かし続けられる設計にすることの方が、現場では重い課題になります。富岳NEXTが互換性を重視する方針を掲げているのは4、性能だけを追う開発では現場が回らないという、これまでの計算基盤運用の経験を反映したものと言えます。
「自分にはHPCの専門知識がないから、国家的なプロジェクトに関わる案件は縁がない」と感じている方は少なくないはずです。ですが実際の整備の現場では、ハードウェアの専門家だけでなく、その上で動くソフトウェアを組み立て、既存の資産をつなぎ直せる技術者が数多く関わっています。次世代計算基盤という言葉の大きさに気後れせず、自分のこれまでの経験がどこで活きるかという視点で見ていくと、関わり方の見え方は変わってきます。
HPCの専門機関に所属していなくても、システムソフトウェアやAI基盤の構築、既存アプリケーションの移植や並列化に携わってきた経験があれば、次世代計算基盤の周辺で求められる仕事に近づく入り口はあります。次世代計算基盤がどのような位置づけにあるのか、まずは京から富岳、そして富岳NEXTへと続く世代交代の流れを整理します。
図の作成:Remogu編集部。次世代計算基盤に関する公開情報をもとに整理したもので、統計データではありません
2. 富岳NEXTとは何か——京から富岳、そして次世代へ
世代交代が示す、継続と転換
スーパーコンピュータの世代交代は、単に処理速度を上げることだけを目的としていません。前の世代で培われたソフトウェア資産や利用者のノウハウを、次の世代でも活かせるかどうかが、実際の利用が広がるかを左右します。
富岳NEXTは、この継続と転換を両立させる次の世代として位置づけられています。国産技術を取り入れたCPUとGPU等を組み合わせたアーキテクチャを取り入れ、Made with Japanとして国内の技術力強化を図る方針が示されています3。
世代が変わるたびに動作環境がゼロから作り直されては、これまで蓄積されてきたアプリケーションやライブラリの移植コストが膨らみます。既存のAIフレームワークやプログラミング環境、ファイルシステムとの互換性を担保する方針が示されているのは4、この移植の負担を抑え、開発資産を次の世代につなぐための設計判断です。
この継続性の確保は、利用者が個別に対応する作業ではなく、基盤を整備する側があらかじめ設計に組み込んでおく取り組みです。だからこそ、既存の環境でどのように動いていたアプリケーションが、新しい世代でも同じように扱えるかを検証し、必要に応じて調整する役割が生まれます。世代交代のたびに、こうした検証と調整を担う技術者の需要は繰り返し発生してきました。
世代ごとの位置づけを整理する
世代ごとの技術的な立ち位置を大まかに整理すると、技術者としてどこに関わる余地があるかが見えやすくなります。以下は、それぞれの世代がどのような課題に応えてきたかを、公開されている方針をもとに大まかに整理したものです。個別の性能値を比較するものではなく、位置づけの違いに注目してください。
| 世代 | 位置づけ | 技術者が関わりやすい観点 |
|---|---|---|
| 京 | 国内における大規模計算基盤の先駆けとして稼働した世代 | 大規模並列処理基盤の構築に携わる技術者が求められた |
| 富岳 | 汎用性を重視し、多様な研究・産業分野で活用が広がった世代 | 既存アプリケーションの移植や性能最適化の経験が活きた |
| 富岳NEXT | AI for Scienceと互換性、国産技術の両立を目指す世代 | システムソフトウェアやAI基盤構築に携わる技術者の関わりが広がる |
次世代計算基盤が目指す方向性の中でも、特に技術者にとって関わりの深いテーマが、シミュレーションとAIを組み合わせた研究基盤づくりです。
出典:理化学研究所「スーパーコンピュータ『富岳』の次世代となる新たなフラッグシップシステムの開発・整備」(2025年3月)を基に作成
3. シミュレーションとAIの融合という新しい研究基盤
AI for Science(AGIS)が目指すもの
理化学研究所は、AI for Scienceを推進するため、科学研究基盤モデル開発プログラム(AGIS)を設立しています2。シミュレーションによる検証と、AIによる予測や生成を組み合わせることで、これまで計算に時間がかかっていた研究のスピードを引き上げる狙いがあります。
富岳NEXTでは、シミュレーションとAIの融合によって、総合的に数十〜百倍のアプリケーション実行の高速化を目指す方針が示されています6。この高速化は、ハードウェアの性能だけで実現するものではなく、アプリケーションの側をAIとの連携に合わせて設計し直す作業があってはじめて成立します。
計算資源をただ増やすことよりも、シミュレーションとAIモデルをどう連携させるかという設計の工夫の方が、高速化の幅を左右します。ここに、アプリケーションの構造を理解し、必要な部分をAI基盤と接続し直せる技術者の出番があります。
シミュレーションとAIの融合は、片方をもう片方に置き換える話ではありません。物理現象を精度高く再現するシミュレーションの強みと、大量のデータから傾向をつかむAIの強みを、それぞれの得意な範囲で組み合わせる設計が求められます。既存のシミュレーションコードにAIモデルとの連携部分を追加する作業は、両方の特性を理解した技術者でなければ、精度を保ったまま進めるのが難しい領域です。
出典:理化学研究所「スーパーコンピュータ『富岳』の次世代となる新たなフラッグシップシステムの開発・整備」(2025年3月)を基に作成
AI基盤やシミュレーション関連のリモート案件をチェックする →
この融合を支える基盤そのものにも、継続性を保ちながら新しい技術を取り込むための工夫が必要です。次に、その互換性の設計を見ていきます。
4. 継続性を支える互換性とMade with Japan
独自技術と、これまでの資産を両立させる設計
新しい計算基盤を導入するとき、性能を優先するあまり、これまで使ってきたツールやライブラリが動かなくなる問題は、現場で繰り返されてきた課題です。富岳NEXTでは、既存のAIフレームワークやプログラミング環境、ファイルシステムとの互換性を担保する方針が示されており4、利用者側の移行負担を抑える設計が意識されています。
あわせて、国産技術を取り入れたCPUとGPU等のアーキテクチャを取り入れ、Made with Japanとして国内の技術力強化を図る方針も掲げられています3。独自のアーキテクチャを取り入れながら、既存の環境との互換性も両立させるという二つの要請に応えることは、設計上も運用上も簡単ではありません。
環境面でも、計算ノードおよびストレージの合計消費電力は40MW以下を目標とする方針が示されています5。処理性能を高めながら消費電力を抑える設計は、ハードウェアだけでなく、電力効率を意識したソフトウェアの実装や運用の工夫があってはじめて実現に近づきます。
ハードウェアの省電力設計だけでは、この目標に届きません。無駄な計算を減らすアルゴリズムの見直しや、資源の使用状況を可視化して稼働を調整する仕組みづくりも欠かせない要素です。ハードウェアの制約とソフトウェアの工夫の両輪で目標に近づくという構図は、これまでクラウド基盤のコスト最適化に携わってきた技術者にとっても、なじみのある考え方のはずです。
目標を技術者の視点で整理する
ここまでに示された方針を、技術者が関わる観点で整理すると、以下のようになります。個々の数値は理化学研究所が示した目標で、実際の運用でどこまで実現されるかは今後の整備の進み方によって変わります。関わる技術領域の見取り図として参照してください。
| 方針 | 内容 | 技術者が関わる領域 |
|---|---|---|
| 互換性の担保 | 既存のAIフレームワーク・プログラミング環境・ファイルシステムとの互換性を保つ4 | 移行検証、動作確認、既存資産の移植 |
| 独自アーキテクチャ | 国産技術を取り入れたCPU+GPU等の活用、Made with Japan3 | ハードウェアに合わせた最適化、性能検証 |
| 消費電力の抑制 | 計算ノードおよびストレージの合計消費電力40MW以下を目標5 | 電力効率を意識した実装・運用設計 |
こうした技術的な方針を踏まえたうえで、実際にリモートやフリーランスの立場から、どのような案件に関わる余地があるのかを見ていきます。
5. リモート・フリーランス案件でどう関わるか
4つの技術領域と、見極めのポイント
次世代計算基盤に関わる案件と聞くと、理化学研究所やハードウェアメーカーに所属する専門家だけの仕事だと感じるかもしれません。ですが、実際に求められる作業を分解すると、システムソフトウェアの開発、既存アプリケーションの移植、AI基盤の構築、そして並列化による性能最適化という、複数の技術領域に分かれています。
これらは、一般的な業務システムやクラウド基盤で培われてきた経験と地続きになっている部分が少なくありません。既存のアプリケーションを新しい環境に移植した経験や、処理を複数のプロセスに分けて高速化した経験は、次世代計算基盤の整備でも同じ考え方が求められます。
大がかりな国家プロジェクトの名前に引きずられて、自分の経験を過小に見積もる必要はありません。むしろ、特定の巨大システムの内部だけで通用する知識よりも、複数の環境をまたいで動かしてきた汎用的な移植・最適化の経験の方が、幅広い案件で応用しやすい強みになります。自分の経験がどの技術領域に近いかを整理することが、関わり方を見極める最初の一歩です。
技術領域を整理する
次世代計算基盤に関わる案件を、技術者の視点で4つの領域に整理すると、以下のようになります。案件の内容や求められる経験は案件によって異なるため、ここでは大まかな傾向として参照してください。
| 技術領域 | 主な作業内容 | リモートでの関わりやすさ |
|---|---|---|
| システムソフトウェア | OSやミドルウェア、ジョブ管理の仕組みの開発・検証 | 設計や検証はリモートで進めやすい領域 |
| アプリケーション移植 | 既存アプリケーションを新しい環境で動作させるための修正・検証 | 動作確認を含め、リモートでの作業と相性がよい |
| AI基盤構築 | AIフレームワークの導入・連携、学習環境の整備 | クラウド上での検証が中心になりやすい |
| 並列化・性能最適化 | 処理を分割し、複数の計算資源で効率よく実行できるようにする設計 | 性能測定やチューニングはリモートで完結しやすい |
図の作成:Remogu編集部。次世代計算基盤に関する公開情報をもとに整理したもので、統計データではありません
案件の内容は時期によって変わりますが、システムソフトウェアやAI基盤、並列化に関わってきた経験は、次世代計算基盤の周辺領域でも活かせる可能性があります。Remoguはリモートワーク案件に特化したエンジニアマッチングで、案件の90%以上がフルリモート可能です7。現場に足を運ぶ前提の案件だけにとどまらないという点は、次の一歩を考えるときの材料になります。
システムソフト・並列化の経験を活かせるリモート案件を見る →
ここまで見てきた技術領域と案件の傾向を、次にまとめます。
6. まとめ
次世代計算基盤・富岳NEXTは、AI for Scienceを掲げながら2、既存の環境との互換性と独自の技術力強化を両立させ、シミュレーションとAIの融合による高速化を目指しています6。
この整備を支えるのは、ハードウェアだけでなく、システムソフトウェアの開発、アプリケーションの移植、AI基盤の構築、並列化による最適化に携わる技術者です。専門機関に所属していなくても、これまで積み上げてきた経験を軸に関わる余地はあります。
大きな計算基盤という言葉に惑わされず、システムソフトウェア・アプリケーション移植・AI基盤・並列化という4つの技術領域に自分の経験を当てはめてみると、関わり方はぐっと具体的になります。国のプロジェクトの名前ではなく、日々向き合ってきた技術の延長として捉え直すことが、次の案件を見つける近道になります。
まずは自分のこれまでの経験が、システムソフトウェアやアプリケーション移植、AI基盤構築、並列化のどの領域に近いかを整理し、Remoguに登録して自分に合う条件の案件があるかを確かめてみましょう。次世代の計算基盤づくりに、リモートの立場から関わる一歩を踏み出せます。
7. よくある質問
HPCの専門知識がなくても、次世代計算基盤に関わる案件に参画できますか
システムソフトウェアの開発やアプリケーションの移植、AI基盤の構築といった領域では、HPC専門機関での経験がなくても、既存のクラウド基盤や大規模システムで培った経験を活かせる案件があります。既存のAIフレームワークやプログラミング環境との互換性を重視する設計方針が示されており4、日々の開発で使ってきた技術がそのまま接点になります。まずは自分の得意な領域が、システムソフトウェア・アプリケーション移植・AI基盤・並列化のどこに近いかを整理することから始めてみましょう。
どのようなスキルが活きますか
システムソフトウェアやミドルウェアの開発経験、既存アプリケーションを新しい環境に移植した経験、AIフレームワークの導入・連携経験、そして処理を並列化して性能を引き出した経験は、いずれも次世代計算基盤の周辺で求められる領域と重なります。どれか一つに特化している必要はなく、複数の領域を横断してきた経験があれば、それ自体が強みになります。
アプリケーションの最適化や並列化の経験は活きますか
富岳NEXTでは、シミュレーションとAIの融合によって総合的に数十〜百倍のアプリケーション実行の高速化を目指す方針が示されています6。この高速化は、既存アプリケーションを新しいアーキテクチャに合わせて最適化・並列化する作業があってはじめて実現に近づくため、その経験は関わりの入り口になります。処理をどう分割し、どこにボトルネックが残るかを見極めてきた経験は、対象がどのようなシステムでも応用が利きます。
現場に足を運ばずに関わることはできますか
システムソフトウェアの設計・検証やAI基盤の構築、性能測定やチューニングといった作業は、クラウド上の検証環境を使ってリモートで進めやすい領域です。案件によって現地での作業が求められる場合もあるため、条件は個別に確認してください。
案件はフルリモートで進められますか
Remoguはリモートワーク案件に特化したエンジニアマッチングで、案件によって条件は異なりますが、フルリモートで進めやすい案件が中心です。まずは登録して、自分の経験に合う条件の案件があるかを確認してみましょう。
リモートワーク案件をお探しの方へ
Remoguは、株式会社LASSICが運営するITエンジニア・デザイナー専門のリモートワーク案件紹介サービスです。フルリモート・ハイブリッドの案件から、スキルに合うものを探せます。
まずはHPCや次世代計算基盤のシステムのリモート案件が、いまどんな条件で並んでいるかを見てみてください。
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※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 理化学研究所「スーパーコンピュータ「富岳」の次世代となる新たなフラッグシップシステムの開発・整備」(2025年3月)
*2 理化学研究所「スーパーコンピュータ「富岳」の次世代となる新たなフラッグシップシステムの開発・整備」(2025年3月)
*3 理化学研究所「スーパーコンピュータ「富岳」の次世代となる新たなフラッグシップシステムの開発・整備」(2025年3月)
*4 理化学研究所「スーパーコンピュータ「富岳」の次世代となる新たなフラッグシップシステムの開発・整備」(2025年3月)
*5 理化学研究所「スーパーコンピュータ「富岳」の次世代となる新たなフラッグシップシステムの開発・整備」(2025年3月)
*6 理化学研究所「スーパーコンピュータ「富岳」の次世代となる新たなフラッグシップシステムの開発・整備」(2025年3月)
*7 Remoguサイト公開情報(フルリモート可能案件の割合)