仮名加工情報と匿名加工情報の違い|個人情報保護と安全管理措置

📘 この記事でわかること
- 仮名加工情報と匿名加工情報の位置づけの違いと、案件で最初に確かめておきたい加工の基準
- 削除情報等の安全管理と識別行為の禁止という、加工した後の運用で外せない2つのルール
- データ基盤やアクセス制御の経験が個人情報系の案件でどう活きるかと、リモートでの関わり方
個人情報を扱う案件では、コードを書き始める前に「情報をどう加工し、どう守るか」という設計から仕事が始まります。仮名加工情報と匿名加工情報は、個人情報保護法に置かれた2つの加工の枠組みですが、目的も守り方も同じではありません1。この違いを理解して案件に臨むエンジニアは、加工の設計段階から相談を任されやすくなります。この記事では、2つの枠組みの違いと、案件で確かめておきたい観点を整理します。
1. 仮名加工情報と匿名加工情報という2つの枠組み
仮名加工情報とは
「個人情報を加工する案件」と聞くと、加工さえ済ませればあとは自由に使えると思われがちです。ですが仮名加工情報は、そこまで踏み込んだ枠組みではありません。仮名加工情報とは、他の情報と照合しない限り特定の個人を識別できないように個人情報を加工して得られる情報のことです1。つまり単体では識別できなくても、他の情報と組み合わせれば個人にたどり着く可能性が残っている状態を指します。
この位置づけを知らずに設計を始めると、「加工したから安全」という前提で話が進み、後から照合のリスクを指摘されて手戻りが起きます。加工の強さを一律に決めるより、どこまで照合の可能性を残すかを先に決めるほうが、後工程の手戻りは少なくなります。案件で仮名加工情報という言葉が出てきたら、まずこの前提を確認する姿勢が信頼につながります。
匿名加工情報とは・仮名加工情報との違い
匿名加工情報は、仮名加工情報よりもう一段踏み込んだ枠組みです。匿名加工情報とは、通常の方法では元となった個人情報に戻すことができない状態にしたものを指します6。仮名加工情報が「他の情報と照合すれば識別できる余地」を残すのに対し、匿名加工情報は「通常の方法では戻せない」という、より強い状態を目指す加工です。
この違いを、案件で使う言葉の粒度よりも、データをどこまで動かしたいかという目的から捉え直すと理解が早くなります。社内の限られた範囲で活用するなら仮名加工情報、外部との共有や幅広い活用まで見据えるなら匿名加工情報、という具合に、目的が加工の強度を決めます。次の章では、この加工そのものをどう設計し、どう安全に管理するかを見ていきます。
出典:個人情報保護委員会『個人情報保護法ガイドライン(仮名加工情報・匿名加工情報編)』をもとに作成
【表1:押さえておきたい基本用語】仮名加工情報や匿名加工情報という言葉は、案件の会話の中で当たり前のように使われます。定義を都度確認していると会話の流れを止めてしまうため、最初に用語を押さえておくと理解が早まります。次の表は、この記事で扱う基本用語と、それぞれが指す範囲をひととおり整理したものです。案件に入る前の予習として使ってください。
| 用語 | 指す状態 | 案件での位置づけ |
|---|---|---|
| 個人情報 | それ単体、または他の情報と照合して特定の個人を識別できる情報 | 加工の出発点となる原データ |
| 仮名加工情報 | 他の情報と照合しない限り特定の個人を識別できない情報 | 社内での分析・活用を想定した加工 |
| 匿名加工情報 | 通常の方法では元の個人情報に戻すことができない情報 | 外部提供や幅広い活用を想定した加工 |
| 削除情報等 | 加工の過程で元の記述等から削除した情報や加工の方法に関する情報 | 仮名加工情報とは切り離して安全に管理する対象 |
仮名加工情報と匿名加工情報は、似た言葉でありながら守り方がまったく異なります。どちらを使うかによって、加工の設計も、加工した後の運用ルールも変わってきます。次の章では、加工そのものをどう設計し、削除情報等をどう安全に管理するかを見ていきます。
2. 加工の設計と、削除情報等の安全管理
適正な加工の設計
仮名加工情報を作成する場面では、加工の手順そのものが設計の対象になります。仮名加工情報を作成するときは、適正な加工を行わなければなりません2。どの項目を置き換えるか、どの記述を削除するかは、案件ごとのデータの性質によって変わるため、テンプレートをそのまま当てはめるだけでは足りていません。
「決められた手順をなぞる」よりも「なぜその項目を加工対象に選んだのかを説明できる」ほうが、案件で評価される場面が多くなります。データベース設計やアクセス制御の経験があるエンジニアなら、どの項目が識別につながりやすいかを見極める視点をすでに持っています。その視点を加工の設計に持ち込めるかどうかが、任される範囲を左右します。
削除情報等の安全管理措置
加工を終えた後も、仕事は終わりではありません。加工の過程で削除した情報や加工の方法に関する情報、いわゆる削除情報等については、安全管理措置を講じなければなりません3。仮名加工情報そのものだけでなく、加工の「種」にあたる削除情報等を、仮名加工情報とは切り離して管理する設計が求められます。
アクセス権限を分け、誰がどこまで閲覧できるかをログで追える形にしておくことは、加工の強度そのものよりも運用の信頼につながります。加工を1回きちんと行うことよりも、削除情報等を継続して安全に保つ設計のほうが、実際の案件では重く扱われます。仮名加工情報の作成に慣れていなくても、権限設計やログ設計の経験があれば、この部分から任される案件は十分にあります。削除情報等を仮名加工情報と同じ場所に置いてしまうと、片方を見れば両方が揃ってしまい、分離した意味そのものが薄れます。物理的に、あるいは権限の面で経路を分けておくことが、設計の出発点になります。
出典:個人情報保護委員会『個人情報保護法ガイドライン(仮名加工情報・匿名加工情報編)』をもとに作成
【表2:案件で確かめておきたい観点】加工の設計や安全管理の話は、案件に参画してから初めて詳細が分かることが多く、事前にどこまで踏み込んで確認してよいか迷う場面があります。次の表は、面談や参画初期に確認しておくと、後の手戻りを減らせる観点を整理したものです。すべてを一度に聞く必要はなく、担当する範囲に応じて確かめてください。
| 確認する観点 | 確認する内容 | 確かめる相手 |
|---|---|---|
| 加工基準の有無 | どの項目をどこまで加工するかの基準がすでにあるか | プロジェクトの責任者 |
| 削除情報等の管理方法 | 削除情報等を仮名加工情報と分けて保管しているか | データ管理の担当者 |
| アクセス権限の設計 | 誰がどの範囲まで閲覧・操作できるかが定義されているか | インフラ・基盤の担当者 |
| ログ・監査の有無 | アクセス状況を記録し、後から追跡できる仕組みがあるか | セキュリティ担当者 |
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加工の設計と削除情報等の安全管理は、いわば「作った後」の話です。ここまでを押さえたら、次は加工したデータをどう扱ってはいけないか、つまり運用のルールを見ていきます。
3. 識別行為の禁止と、匿名加工の要件
識別行為の禁止
仮名加工情報は、作って終わりではなく、使い方にもルールがあります。仮名加工情報を取り扱うに当たっては、本人を識別するために当該仮名加工情報を他の情報と照合してはなりません4。加工した時点で識別できない状態にしても、運用の中で他のデータと突き合わせてしまえば、加工の意味そのものが崩れてしまいます。
「加工したデータだから自由に組み合わせてよい」という思い込みは、システム設計の現場でこそ起きやすいものです。分析基盤やデータ連携の設計を担うエンジニアは、テーブルを結合する権限を持つ場面が多いからです。権限があることと、照合してよいことは別だと線引きできるかどうかが、案件での信頼につながります。
匿名加工情報の識別不可・復元不可の考え方
匿名加工情報が満たすことが求められる「特定の個人を識別することができない」という要件について、あらゆる手法によってすべての可能性を排除することまでを求めるものではないという考え方が示されています5。特殊な技術を持つ第三者が理論上は復元できる可能性まで排除しようとすると、加工の範囲は際限なく広がってしまうため、一般的な手法を基準に判断するという考え方です。
匿名加工情報は、通常の方法では元の個人情報に戻すことができない状態にすることが要件です6。「どんな手法でも戻せない」という極端な水準を目指すよりも、「一般的な手法で戻せない水準を、どう設計と運用の両面で担保するか」を考えるほうが、実務に即した進め方になります。この考え方を押さえておくと、案件での加工方針の議論についていきやすくなります。要件を満たしたデータは、安心して活用に回せる資産になります。
出典:個人情報保護委員会『個人情報保護法ガイドライン(仮名加工情報・匿名加工情報編)』をもとに作成
【表3:設計で確かめておきたい観点】識別行為の禁止と匿名加工の要件は、条文の言葉だけを読んでも、実際の設計にどう落とすかがつかみにくい領域です。次の表は、案件で設計に関わる際に、自分の作業がルールに沿っているかを確かめる観点を整理したものです。担当する工程に応じて、当てはまるものから確認してください。
| 確認する観点 | 確認する内容 |
|---|---|
| 照合を目的とした処理の有無 | 本人を識別する目的で仮名加工情報を他のデータと結合していないか |
| 権限とルールの分離 | 結合できる権限を持つ人が、照合してよい人と同じとは限らないことを設計に反映しているか |
| 加工手法の妥当性 | 用いている加工手法が一般的な水準に照らして妥当と説明できるか |
| 復元不可の設計確認 | 通常想定される方法で元のデータに戻せない設計になっているか |
識別行為の禁止と匿名加工の要件を押さえたら、加工したデータを実際にどう活用へつなげていくかが次のテーマになります。加工と管理だけで終わらせず、活用まで見据えた設計を見ていきましょう。
4. データ活用のパイプラインと運用
加工から活用までのパイプライン
個人情報を扱う案件は、加工の設計だけで完結しません。原データを加工し、安全管理措置を講じ、そのうえで分析やレポート、他の基盤への連携といった活用につなげる、一連のパイプラインとして設計する必要があります。加工の工程だけを切り出して考えると、活用の段階で想定外の使われ方をされ、せっかくの加工が意味を持たなくなる場合があります。
加工のロジックを書くことよりも、加工したデータがどこへ流れ、誰が触れるのかという全体の設計を描けることのほうが、案件では重宝されます。データ基盤の構築やパイプラインの整備に携わってきたエンジニアであれば、この全体設計こそが強みを発揮できる領域です。
分析やレポートに使う経路と、他の基盤へ連携する経路を同じ扱いにしてしまうと、片方の用途では許される使い方が、もう片方では踏み込みすぎになる場面が出てきます。用途ごとに経路を分けて設計しておくと、後から利用範囲を広げたいときにも、加工のやり直しではなく経路の追加だけで対応できるようになります。
アクセス制御と運用
パイプラインを組み終えた後も、運用は続きます。誰がどのデータに、どの範囲でアクセスできるかを継続的に見直し、ログを残し、必要に応じて権限を見直す。この繰り返しが、加工した情報を安全に活用し続けるための土台になります。
一度作った権限設計をそのまま使い続けるよりも、案件の進行に合わせて見直し続けるほうが、実際のリスクには対応しやすくなります。メンバーの入れ替わりやチームの変化があるたびに権限を棚卸しする運用は、地味に見えて、識別行為の禁止という運用ルールを支える土台そのものです。こうした継続的な運用の設計は、リモートで進める案件でも十分に成立する領域です。次の章では、実際にどのような関わり方があるのかを見ていきます。
図の作成:Remogu編集部。加工から活用までの流れを整理したもので、統計データではありません
5. 案件への関わり方と、選ぶ観点
データ基盤・アクセス制御・データパイプラインの経験が効く
ここまで見てきたように、個人情報を扱う案件は、法令の条文だけを知っていれば務まるものではありません。加工の設計、削除情報等の分離管理、アクセス制御、パイプラインの構築と、いずれも普段からデータ基盤や権限設計に携わってきたエンジニアの経験が直接活きる領域です。
「法令に詳しいこと」よりも「権限とデータの流れを設計できること」のほうが、実際の案件では求められる場面が多くなります。積み上げてきたデータ基盤やアクセス制御の経験を、個人情報の取り扱いという切り口で言い換えられれば、これまで意識していなかった案件にも関われる可能性が広がります。テーブル設計や権限管理を「セキュリティの仕事」としてではなく、「個人情報の加工と管理を支える仕事」として説明し直せるかどうかが、参画時の会話を左右します。
リモート中心でも関われるか
個人情報を扱う案件と聞くと、常駐が前提だと感じるかもしれません。ですが、加工の設計やパイプラインの構築、権限設計といった作業の多くは、リモートでも十分に進められる性質のものです。Remoguが扱う案件の90%以上がフルリモート可能です7。場所に縛られずに、こうした設計の経験を積める案件を探せる環境が整ってきています。
案件を1件ずつ見比べて条件を確かめるよりも、まず自分の経験に合う案件がどれくらいあるかを知るほうが、次の一歩を踏み出しやすくなります。まずは登録して、自分の経験がどの案件に活きるのかを確かめてみるのも一つの進め方です。
データ基盤・アクセス制御の経験を活かせるリモート案件を見る →
6. まとめ
仮名加工情報は他の情報と照合しない限り識別できない状態、匿名加工情報は通常の方法では元に戻せない状態と、目指す強度が異なります。加工した後は、削除情報等の分離管理と識別行為の禁止という運用のルールが続き、最終的には分析や連携といった活用のパイプラインへとつながっていきます。
この一連の流れは、法令の知識だけでなく、データ基盤やアクセス制御、パイプライン設計の経験があってこそ形にできるものです。積み上げてきた経験を、個人情報の取り扱いという新しい切り口で見直してみると、これまで気づかなかった案件が視野に入ってきます。まずは登録して、自分の経験に合う案件がどれくらいあるかを確かめてみてはいかがでしょうか。
7. よくある質問
個人情報を扱う案件で、エンジニアは何を設計しますか
主に、どの項目をどう加工するかという加工そのものの設計と、削除情報等をどう分離して安全に管理するかという運用の設計、そして誰がどこまでアクセスできるかという権限の設計です。加工を1回行って終わりではなく、継続的な運用まで見据えて設計する案件がほとんどです。担当する工程は案件によって異なり、加工そのものを担うこともあれば、周辺のパイプラインや権限まわりだけを担うこともあります。
仮名加工情報と匿名加工情報の違いは何ですか
仮名加工情報は他の情報と照合しない限り特定の個人を識別できない状態、匿名加工情報は通常の方法では元の個人情報に戻すことができない状態です1。仮名加工情報のほうが社内での活用を想定しており、匿名加工情報のほうがより強い加工を求められる場面で使われます。
データ基盤やアクセス制御の経験は活きますか
活きます。加工の設計そのものだけでなく、削除情報等の分離管理、権限設計、ログによる追跡といった部分は、データ基盤やアクセス制御の経験があるエンジニアの強みが直接発揮できる領域です。法令の細部よりも、設計と運用の力が問われます。
こうした案件はリモートでも関われますか
関われます。加工の設計やパイプラインの構築、権限設計といった作業の多くはリモートで進めやすい性質のものです。場所に縛られずに、こうした経験を積める案件を探すことができます。
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Remoguは、株式会社LASSICが運営するITエンジニア・デザイナー専門のリモートワーク案件紹介サービスです。フルリモート・ハイブリッドの案件から、スキルに合うものを探せます。
個人情報を扱う案件は、仮名加工や匿名加工といった加工の設計から、削除情報等の安全管理措置、識別行為を避ける運用まで関わり方が幅広くあります。まずはデータ活用やデータ基盤のリモート案件が、いまどんな条件で並んでいるかを見てみてください。
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※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 個人情報保護委員会「個人情報保護法ガイドライン(仮名加工情報・匿名加工情報編)」(2024年12月)
*2 個人情報保護委員会「個人情報保護法ガイドライン(仮名加工情報・匿名加工情報編)」(2024年12月)
*3 個人情報保護委員会「個人情報保護法ガイドライン(仮名加工情報・匿名加工情報編)」(2024年12月)
*4 個人情報保護委員会「個人情報保護法ガイドライン(仮名加工情報・匿名加工情報編)」(2024年12月)
*5 個人情報保護委員会「個人情報保護法ガイドライン(仮名加工情報・匿名加工情報編)」(2024年12月)
*6 個人情報保護委員会「個人情報保護法ガイドライン(仮名加工情報・匿名加工情報編)」(2024年12月)
*7 Remogu(株式会社LASSIC運営)公開情報:扱う案件の90%以上がフルリモート可能