内製化支援の案件|コアと外注を線引きする判断基準と関わり方を解説

📘 この記事でわかること
- コア領域も外部委託が最多という日本の現状と、内製化の進み方が国によって異なる背景
- 全部内製でも全部外注でもない考え方と、コアは内製・ノンコアはSaaSや外注に任せる線引きの基準
- リモートで内製化支援に関わるときの進め方と、任される案件かどうかを事前に見極めるための視点
内製化支援の案件に関わるようになると、任される範囲が案件ごとに大きく違うことに気づきます。ある案件ではコアの設計判断まで踏み込めても、別の案件では要件の整理だけで関与が終わることもあります。差を生んでいるのは、クライアント側が「どこまでを内製に残し、どこを任せるか」をどれだけ言葉にできているかという線引きです。この記事では、その線引きの考え方と、関われる案件をどう見極めるかを整理します。
1. 内製化支援の案件で、いま何が起きているか
内製化支援の案件とは
内製化支援の案件とは、外部に委託していたシステム開発や運用の一部を、クライアント企業が自分たちの手に引き戻す過程に伴走する仕事です。要件定義や設計の判断を社内に残すための整理、既存の外部委託の切り分け、内製チームの立ち上げに関わる場面まで幅があります。範囲が案件によって大きく違うのは、クライアント側の準備の進み方が一様ではないためです。
参画する側から見ると、この幅の広さは機会であり判断材料でもあります。設計の判断ごと相談される案件と、既存の仕組みをなぞるだけの案件では、積み上げてきた経験の活かし方がまるで違います。まず押さえておきたいのは、内製化支援がいま置かれている状況です。
実際の現場では、開発の一部を外部委託に残しながら、要件定義や仕様の判断だけを社内に引き戻す、という中間的な体制を設計する場面も増えています。全か無かではなく、どこまでを社内の判断に含めるかという線を描く仕事だと捉えると、案件ごとの違いも見えやすくなります。
日本はコアも外部委託が多い
独立行政法人情報処理推進機構の調査によると、コア事業や競争領域にあたるシステム開発について、日本では「外部委託による開発」と答えた企業が最も多くなっています1。競争力の源泉になるはずの領域まで外に出している企業が目立つ、という現状です。
内製化の進み具合を国際的に見ても、差は明らかです。システム開発の内製化を「進めている」と答えた割合は米国が最も高く、日本とドイツは同程度にとどまります2。日本企業のDXの取組割合は約8割まで広がっている一方で5、コアの内製化はその広がりに追いついていません。DXが進むことと、コアを内製に引き戻すことは、同じ速さでは進んでいないのです。
出典:IPA「DX動向2025」データ集をもとに作成
コアの内製化が広がりにくい背景には、判断を積み重ねる時間や体制がまだ社内に整っていない、という事情があります。外部委託のほうが早く形になるため、気づかないうちにコアの判断まで委ねてしまう構図です。
だから、内製化支援の案件でまず問われるのは「進めるかどうか」ではなく「どこを内製にするか」という線引きです。次の章では、線引きをしないまま進めるとどうなるのかを見ていきます。
2. 「全部内製」でも「全部外注」でもない
内製化の線引きが定まっていない
「必要な部分は内製化済みなので現在は進めていない」と答えた企業の割合は、日本が米国やドイツの半分以下にとどまります3。裏を返せば、日本の企業では、どこまでを内製にすれば十分なのかという線引きそのものが、まだ決まっていないということです。
線引きが無いまま内製化を進めると、範囲は際限なく広がっていきます。反対に線引きを避けて外部委託に頼り続けると、判断の材料が社内に残らなくなります。どちらの方向にも寄りすぎないための軸が必要です。
内製化支援に関わる立場からすると、この「まだ決まっていない」という状況は、線引きを一緒に設計する余地が残っているとも読めます。決まった線をなぞるより、線を描く段階から関われる案件のほうが、経験を活かせる幅は広くなります。
線引きを誤ると負担か依存になる
全部を内製にしようとすると、ノンコアの定型業務までチームで抱え込み、コアの判断に使う時間が削られていきます。人を増やしても、増えた分がノンコアの維持に吸われてしまう構図です。
反対に全部を外部委託に頼ると、判断の根拠が委託元の事業者の中にとどまり、クライアント企業の側には結果だけが残ります。コアの設計判断を任せきりにするより、判断の過程を社内に残しておくほうが、後から方向を変えやすくなります。負担を避けたはずが、次は依存という形で同じ問題が戻ってきます。
どちらの失敗も、最初に線引きを決めなかったことが原因です。範囲を先に決めておけば、抱え込みも任せきりも避けやすくなります。次に見ていくのは、その線をどこに引くかという判断の軸です。
図の作成:Remogu編集部。線引きの考え方を整理したもので、統計データではありません
では、どこで線を引けばよいのでしょうか。次の章で、コアとノンコアを分ける判断の軸を整理します。
3. コアとノンコアをどう線引きするか
コアは内製に引き戻す
コアの目安は、事業の競争力に直結する設計や仕様の判断が含まれているかどうかです。他社と同じ仕組みでは差がつかない領域、顧客への提供価値を直接左右する領域は、判断ごと内製に引き戻す対象になります。
引き戻すといっても、開発のすべてを社内の要員だけで完結させる必要はありません。判断の根拠と結果を社内に残し、次の変更を自分たちで決められる状態を作ることが目的です。作業を持つことより、判断を持つことのほうが、コアを内製にする本来の狙いに近くなります。
コアかどうかを見分ける具体的な問いは、「この判断を外部委託の事業者に渡したら、次に方向を変えるとき困らないか」です。困ると答えが出るなら、その判断は内製に残しておく対象になります。
この問いは、クライアントの担当者だけで答えを出しにくい場面もあります。外部の視点から「ここは外に出しても後で困りませんか」と問い直せることが、内製化支援に伴走する側の価値になります。
ノンコアはSaaSや外注に任せる
ノンコアは、他社と同じ仕組みで足りる領域です。新技術のうちSaaSは、日本で「全社的に活用している」と答えた割合が最も高くなっています4。定型的な業務システムや汎用性の高い機能は、自前で作り込むより、整った仕組みに任せたほうが早く安定します。
SaaSの活用が広がっているのは、ノンコアの判断まで社内で背負い続けるより、外の仕組みに委ねたほうが結果として早く整うと、企業側の実感が向いているからです。内製化支援に関わる側も、この流れを前提に線引きを描く必要があります。
ノンコアをSaaSや外部委託に任せることは、任せきりにして終わりという意味ではありません。任せる範囲と、任せた結果をどう検証するかを決めてから渡すという手順を踏むことで、コアに割ける時間と判断の余力が生まれます。
この線引きを、案件に入る前に自分の手で一度描いてみると、任される範囲の見え方が変わります。誰かが決めた線をなぞるより、自分で線を引いた案件のほうが、関与の実感を持ちやすくなります。
SaaSへの置き換えは、機能を減らす後ろ向きの選択ではありません。汎用性の高い機能を整った仕組みに任せることで、コアの判断に割ける時間を確保する、前向きな線引きです。任せた後にどう検証するかまで含めて設計しておくと、判断の質も保ちやすくなります。
出典:IPA「DX動向2025」データ集をもとに作成(新技術の活用状況について)
線引きの考え方を、領域別に整理すると次のようになります。コアかノンコアかがはっきりしない過渡期の領域や、新技術を試す段階の扱いまで含めて見ておくと、案件の中で判断が割れにくくなります。
| 領域 | 内製化の判断 | 任せ方の例 |
|---|---|---|
| コア(競争力に直結する設計・仕様の判断) | 内製に引き戻す | 判断の根拠を残しながら伴走する |
| ノンコア(保守運用・定型的な業務システム) | 外に任せる | SaaSの導入や外部委託の活用 |
| コアかノンコアか未確定な過渡期の領域 | 判断を保留しない | 期間を決めて内製と外注を並走させる |
| 新技術の検証段階(試作・検証など) | 小さく内製で試す | 検証後にコアかノンコアかを見直す |
表に整理した4つの領域は、どれも一度決めたら固定というものではありません。事業の状況が変われば、コアだった領域がノンコアに移ることもあります。線引きは、決めて終わりではなく、見直し続ける前提で設計しておくものです。
リモートで内製化支援に関わる場合、この線引きを言葉にして残しておくことが、対面で進める以上に効いてきます。次の章で、リモートでの進め方を見ていきます。
4. リモート・フリーランスで内製化支援に関わるときの進め方
伴走しながら判断の型を残す
内製化支援では、一度の提案で終わらず、判断の型ができるまで伴走する場面が増えていきます。線引きを決めたあとも、新しい機能が出てくるたびに「これはコアか、ノンコアか」を判断する必要が出てくるためです。
個人が一人目のメンバーとして参画し、判断の型や手順書としてどう知識を残すかについては、別記事「内製化支援の案件で、一人目の外部エンジニアが置いていくもの」で詳しく扱っています。この記事では、組織側がコアとノンコアをどう線引きするかという設計の視点に絞ります。
伴走の期間は、線引きが一度決まれば終わりというものではありません。新しい機能や体制の変化に合わせて、線を引き直す場面が繰り返し出てきます。その都度クライアントと一緒に判断できる関係を築けるかどうかが、関与の深さを左右します。
責任範囲は協議で決める
リモートで内製化支援に関わるときは、責任範囲をクライアントと協議して先に言葉にしておくことが欠かせません。空気で伝わる前提に頼れない分、決めたことを文書に残す手間は増えますが、後から範囲がずれる心配は減ります。
対面で進める場合は、その場の会話で合意を積み重ねられます。非同期で進める場合は、判断の根拠を先に文書化しておくほうが、あとから確認できます。どちらが優れているという話ではなく、進め方の型が違うだけです。
非同期の進め方に慣れていないクライアントに対しては、最初の案件で判断ログの残し方を一緒に決めてしまうと、その後の伴走がスムーズになります。型を渡すこと自体も、内製化支援の一部だと考えられます。
タスク管理や議事録の共有場所を最初に決めておくだけでも、非同期の関与はぐっと進めやすくなります。ツールの種類そのものより、判断の根拠がどこに残るかを揃えることのほうが重要です。
対面前提の進め方と、非同期・リモートでの進め方を並べると、次のような違いになります。判断の合意形成や進捗の共有、権限移譲の範囲や引き継ぎの仕方まで、進め方の型を変えるだけで、対面と同じ密度の関与を保てます。
| 観点 | 対面前提の進め方 | 非同期・リモートでの進め方 |
|---|---|---|
| 判断の合意形成 | 会議でその場で確認する | 判断の根拠を文書化し非同期で承認を得る |
| 進捗の可視化 | 口頭やその場の報告に頼る | タスク管理や議事録で状態を共有する |
| 権限移譲の範囲 | 空気で伝わる前提で進む | 責任範囲を文書化し協議で明確にする |
| 引き継ぎ・知識の移転 | 同席して手元を見せる | 手順書や判断ログとして残す |
内製化支援に関わる案件の条件を見る →
進め方の型を整えれば、リモートでも内製化支援に深く関わることは可能です。あとは、関われる案件かどうかを事前に見分ける視点が必要になります。
5. 内製化支援に関われる案件かを、どこで見極めるか
コアの定義に関われるか
案件の説明を読むだけでは、コアとノンコアの線引きがどこまで決まっているか分かりにくいことがあります。目安になるのは、コアの定義そのものを一緒に考える余地があるかどうかです。要件がすでに固まっていて実装だけを求められる案件より、定義から関われる案件のほうが、経験を活かせる範囲は広くなります。
面談の場で「どこまでをコアとして扱っていますか」と尋ねてみると、クライアント側の準備の進み具合が見えてきます。答えが具体的であるほど、線引きの議論が進んでいる案件だと判断できます。
反対に、答えが漠然としている場合は、線引きの議論そのものがこれから始まる案件かもしれません。その分、コアの定義づくりから関われる余地は大きく、経験を積んだ立場ほど価値を発揮しやすい局面です。
募集の文面に「要件定義から」「仕様の見直しから」といった表現があるかどうかも、分かりやすい手がかりになります。実装工程だけを切り出した表現が並ぶ案件は、コアの定義がすでに固まっている可能性が高くなります。
権限移譲の意思がある体制か
もう一つの目安は、判断の権限をどこまで渡す意思があるかです。決裁者と直接話せる体制か、進め方を変える余地があるかを確認すると、任される範囲を事前につかみやすくなります。
権限移譲の意思がある案件では、コアの判断ごと相談される場面が増え、関与度は自然に上がっていきます。既存の外部委託をなぞるだけの案件では、説明を求められる場面が増え、関与できる範囲は狭くなります。
面談で確認しやすい質問としては、「仕様の変更は誰の承認で決まりますか」「今の外部委託先との契約はどう見直す予定ですか」などがあります。答えの具体性が、権限移譲の進み具合をそのまま映し出します。
図の作成:Remogu編集部。案件を見極める視点を整理したもので、統計データではありません
見極めの視点を、案件の特徴と関与度の見込みで整理すると、次のようになります。決裁者との距離や、対象範囲がコアに触れているかどうかを見るだけでも、事前につかめる情報は増えます。
| 案件の特徴 | 関与度の見込み | 見極めのポイント |
|---|---|---|
| コアの定義から議論に参加できる | 高い | 要件定義や仕様判断に関われるか |
| 既存の外部委託を前提に置き換えるだけ | 低い | 進め方を変える権限があるか |
| 権限移譲の意思がクライアント側にある | 高い | 決裁者と直接協議できる体制か |
| 情報システム部門から定型業務の延長で依頼 | 中程度 | 対象範囲がノンコアに閉じているか |
自分に合う関与度の案件を確かめる →
同じように線引きを整理して案件を選ぶフリーランスも増えています。まず候補を確認してみることが、判断の第一歩になります。
6. まとめ
内製化支援の案件で任される範囲は、クライアント企業がコアとノンコアの線引きをどこまで決めているかで大きく変わります。全部内製にすることも、全部を外部委託に任せることも、どちらも設計としては未完成です。ここまでの内容を整理します。
- 日本はコア領域の開発でも外部委託が最多という現状があります1。
- 内製化の進み方には国ごとの差があります2。線引きが定まっていない企業も一定数あります3。
- コアは判断ごと内製に引き戻し、ノンコアはSaaSや外部委託に任せる線引きが軸になります4。
- リモートで関わるときは、責任範囲を協議して文書に残す進め方が効いてきます。
- 関われる案件かどうかは、コアの定義への関与と権限移譲の意思で見極められます。
線引きを設計する視点を持てれば、内製化支援の上流に関わる機会は広がります。場所に縛られずコアの判断に関わりたいなら、まずは案件の条件を見て、自分の経験がどの関与度に合うかを確かめてみてください。関与度の高い案件を一度でも経験すると、次の案件を選ぶときの基準もはっきりしてきます。Remoguが扱う案件の90%以上がフルリモート可能です6。まず登録して、条件を見比べてみましょう。
7. よくある質問
内製化は全部を社内で進めた方がよいのですか
いいえ。コアは内製に引き戻し、ノンコアはSaaSや外部委託に任せる線引きが軸になります4。すべてを社内に抱え込むと、コアの判断に使う時間や労力が削られてしまいます。
内製化支援の経験が浅くても案件に関われますか
関われる案件はあります。設計や開発の経験を、判断の根拠を残す形で伝えられれば、内製化支援の入口として関与できる案件は見つかります。案件によって求められる関与度は異なるため、条件を見比べて自分の経験に合うものを選ぶことが大切です。ノンコアの整理やSaaS導入の伴走から始め、徐々にコアの判断に関わる案件へ広げていく進み方もあります。
リモートでも内製化支援に深く関わることはできますか
可能です。責任範囲を協議して文書に残す進め方に切り替えれば、対面と同等の関与を保てます。Remoguが扱う案件の90%以上がフルリモート可能です6。内製化支援に関わる案件も対象になります。
内製化支援に関わると報酬は上がりますか
関与度が上がるほど、求められる判断の重さも増えるため、報酬の条件は案件ごとの協議で決まります。具体的な水準は案件によって異なるため、まずは条件を確認しながら、自分の経験に合う関与度の案件を探してみましょう。コアの判断に関わる案件かどうかを見極める視点を持てているだけで、条件を協議するときの材料は増えます。
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※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2025」(2025-06-26)
*2 独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2025」(2025-06-26)
*3 独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2025」(2025-06-26)
*4 独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2025」(2025-06-26)
*5 独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2025」(2025-06-26)
*6 Remogu(株式会社LASSIC運営)公開情報:扱う案件の90%以上がフルリモート可能