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    知らないと損する「商流」とは?IT多重下請けで月数万円変わる仕組みとエンジニアの対策

    商流の流れを表すフロー図のイメージ

    案件を選ぶとき、月額報酬や使用言語ばかり見ていませんか。同じスキル、同じ現場でも、手元に残る報酬が、月数万円から十数万円単位で変わることもあります。

    その差を生むのが「商流」です。もともとは物流の世界で生まれた言葉ですが、いまIT業界では、エンジニアの報酬と働き方を左右するキーワードになっています。この記事では、商流の意味から、知っておきたい多重下請け構造、2026年の法改正までを公的データで整理します。

    この記事でわかること

    • 商流の基本的な意味と、物流・金流・情報流との違いがわかります
    • IT業界で「商流」が多重下請け構造を指す理由と、報酬への影響がわかります
    • 2026年1月施行の取適法やフリーランス新法が、商流と報酬にどう関わるかがわかります
    • エンジニアが商流の深さを見抜き、より浅い商流へ近づくための判断基準がわかります
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    目次

    商流とは?意味と物流・金流・情報流との違い

    商流・物流・金流・情報流の違い

    商流(しょうりゅう)とは、商品やサービスの取引において、所有権や受発注が売買を通じて移っていく流れのことです。物が物理的に動く「物流」に対して、商流は取引上の流れ、つまり所有権の移動に着目した考え方を指します。IT業界では、発注元のクライアントからエンジニアに仕事が届くまでに何社が介在するかという「契約の連なり」を表す言葉としても使われます。介在する企業の数が、エンジニアの報酬に影響します。

    商流の基本的な意味|所有権と取引の流れ

    流通の世界では、商品が生産者から消費者に届くまでに、生産者・卸売業者・小売業者・消費者といった関係者の間を渡っていきます。このとき、商品の所有権が売買契約によって次々と移っていく流れが商流です。「商的流通」を略した言葉で、「取引流通」と呼ばれることもあります。

    商流を理解する出発点は、物流との区別です。たとえばメーカーが工場から自社の倉庫へ商品を運んだ場合、所有権はメーカーから移っていないため商流は発生しませんが、物は動いているので物流は発生しています。このように、取引の形によって商流と物流は一致することも、片方だけ発生することもあります。

    流通を支える4つの流れ|商流・物流・金流・情報流

    流通は一般に、商流・物流・金流・情報流という4つの機能で説明されます。商流が取引・所有権の流れ、物流がモノの流れ、金流がお金の流れ、情報流が受発注や在庫などの情報の流れです。この4分類を押さえておくと、IT業界の商流が「お金やモノではなく、契約と仕事の発注がどう連なっているか」を指していることが理解しやすくなります。

    流れの種類着目する対象具体例
    商流(商的流通)所有権・取引の移動売買契約の成立、受発注、所有権の移転
    物流(物的流通)モノの移動輸送、保管、荷役、在庫管理
    金流お金の移動代金の支払い、請求、決済
    情報流情報の移動受発注データ、在庫情報、仕様の共有

    4つの流れを区別できると、自分が関わる取引のどこに価値が生まれ、どこにコストが発生しているかが見えてきます。では、この「商流」という考え方をIT業界に当てはめると、何が見えてくるのでしょうか。

    IT業界における商流|多重下請け構造とは

    IT業界の多重下請け構造と商流の階層

    IT業界で「商流」と言うとき、それはクライアントからエンジニアに仕事が届くまでに介在する企業の連なりを指します。発注元のエンド企業から、元請け、二次請け、三次請けへと業務が再委託されていく構造です。介在する企業が多いほど「商流が深い」、少ないほど「商流が浅い」と表現します。

    エンド企業から現場のエンジニアまでの階層

    階層主な担い手主な役割
    エンド企業システムを利用する発注元予算の確保、要件の提示
    元請け(一次請け)大手のSIer・コンサル要件定義・設計、全体管理、契約窓口
    二次請け中堅IT企業開発の分担、要員の取りまとめ
    三次請け以降中小IT企業・SES企業実装・テスト、要員の供給
    現場のエンジニア所属企業のエンジニア・フリーランス実際の開発・運用作業

    多重下請けが生まれる背景|IT人材の不足

    多重下請けが続く背景には、IT人材の慢性的な不足があります。経済産業省「IT人材需給に関する調査」は、2030年のIT人材の需給ギャップを試算しています(2019年公表)。不足は中位シナリオで約45万人、需要の伸びが大きい高位シナリオで約79万人に達する見込みです1。必要な時期に必要なスキルのエンジニアを集めるため、元請けは多数の協力会社のネットワークに頼らざるを得ず、商流が深くなりやすいのです。

    IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「DX動向2024」によると、DXを推進する人材の「量」が「大幅に不足している」と回答した企業は62.1%でした2。これは2021年度の30.6%から上昇しています。需要が供給を上回る状況が、多重下請け構造の温存につながっているのです。

    商流の深さが報酬・働き方に与える影響

    商流の深さと報酬・働き方への影響

    商流が深くなると、エンジニアには主に3つの影響が生じやすくなります。1つ目は報酬の目減り、2つ目は裁量や上流工程への関与の制限、3つ目は情報伝達の遅れです。いずれも「介在する企業が増える」ことに起因します。

    中間マージンと手元に残る報酬

    商流に企業が介在するたびに、契約金額の一部が中間マージン(仲介の手数料)として各社の取り分になります。これは要員調達や契約管理の対価でもあり、それ自体が不正というわけではありません。ただし階層が増えるほど取り分が積み重なるため、末端のエンジニアに届く原資は、仕組みのうえで小さくなりやすくなります。同じスキルで同じ現場に入っても、商流の深さが違うだけで手元の報酬が変わるのは、このためです。

    比較項目商流が浅い案件(エンド直・元請け直)商流が深い案件(多重下請け)
    手元に残る報酬中間コストが少なく、原資が残りやすい各階層の取り分が重なり、目減りしやすい
    担当できる工程要件定義・設計など上流に関わりやすい実装・テストなど特定工程に限られやすい
    情報伝達の速さ意思決定者との距離が近く、伝達が速い経由する企業が多く、伝達が遅れやすい
    契約の透明性金額や役割が把握しやすい金額や各社の役割が見えにくい

    裁量・上流工程・情報伝達への影響

    商流の深さは、報酬以外にもエンジニアのキャリアに関わります。商流が深いと、上流工程は元請けが担い、下層では実装やテストなど限られた工程を任されやすくなります。要件定義や設計に関わる機会が減ると、市場価値の高い経験を積みにくくなる可能性があります。

    情報伝達の面でも影響が出ます。クライアントの仕様変更や重要な判断が、複数の企業を経由してエンジニアに届くため、伝達が遅れがちです。報酬・裁量・情報という3つの観点から、商流の深さは働き方の質に関わるのです。

    2026年の動向|フリーランス新法と取適法が商流に与える影響

    2024年から2026年にかけて、商流と中間マージンのあり方に関わる法整備が相次いで施行されました。フリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス新法)と、下請法を改正した取適法(中小受託取引適正化法)です。いずれも、取引の透明化と適正な対価の確保を目的としており、商流の下層で働くエンジニアの保護につながる動きとして注目されています。

    フリーランス新法(2024年11月施行)

    フリーランス新法は、正式名称を「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」といい、2024年11月1日に施行されました3。人を雇わない個人や一人法人に業務を委託する事業者に、いくつかの義務を課しています。取引条件を書面などで明示すること、報酬の支払期日を発注物の受領日から原則60日以内に設定することなどです。報酬の不当な減額や受領拒否といった行為も禁止されています。

    この法律は、商流の下層に位置するフリーランスエンジニアにとって意味があります。契約条件が曖昧なまま参画し、後から報酬を一方的に下げられるといったトラブルに対し、行政が関与する仕組みが整えられたためです。契約や仕事上のトラブルについては、厚生労働省が無料の相談窓口「フリーランス・トラブル110番」を設けています3

    取適法(2026年1月施行)と価格転嫁

    2026年1月1日からは、これまでの下請法が大きく改正され、「中小受託取引適正化法」、通称「取適法」として施行されました4。労務費や原材料費の上昇が続くなか、取引の適正化と、サプライチェーン全体で適切な価格転嫁を定着させることを目的としています。

    改正では、適用対象の判断に従業員数に関する基準が加わり、これまで資本金規模の要件から外れていた取引も規制の対象に含まれるようになりました4。公正取引委員会は2022年に「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書」を公表しており5、報酬の不当な減額や仕様変更への無償対応の要求といった取引上の問題が懸念されると指摘されています。法整備は商流の透明化を後押ししますが、自分の案件がどの商流に位置するかを見極める力は、エンジニア自身に求められます。

    エンジニアが商流を見抜き、浅くする方法

    商流の深さを見抜くチェックポイント

    案件の説明を受けるとき、次の点を確認すると商流の深さを推測しやすくなります。担当者に率直に尋ねてみることが、透明性の高い取引につながります。

    • クライアントは「エンド直」か「元請け直」か、それとも間に複数社が入るか
    • 契約形態は業務委託(準委任・請負)か。指揮命令の関係が曖昧でないか
    • 実際に作業する現場の企業名と、契約上の所属が一致しているか
    • 仕様変更や重要な判断が、誰を経由して届くのか
    • 中間マージンや報酬の内訳について、説明を受けられるか

    これらは、商流が深いほど答えが曖昧になりやすい項目です。明確に答えられる案件ほど、商流が浅く透明性が高い傾向があります。

    より浅い商流に近づく選択肢

    商流を浅くする現実的な方法のひとつが、エンド直や元請け直の案件を扱うエージェントを通じて参画することです。間に入る企業が少ないほど、中間コストが抑えられ、エンジニア側に残る原資が大きくなりやすくなります。リモートワーク中心の案件であれば、住んでいる地域に縛られず、都市圏の上流案件にも参画しやすくなります。

    Remogu(リモグ)は、株式会社LASSICが運営する、リモートワーク案件に特化したエンジニア向けのマッチングサービスです。フルリモート・シフト(移行)型・ハイブリッド型という3種類の働き方から案件を選べます6。IT業界やエンジニアの業務に精通したコーディネーターが、スキルや経験を踏まえて案件を提案し、クライアントとの条件についても相談しながら進められます。

    まとめ:商流の深さが報酬と働き方を左右する

    • 商流とは取引・所有権の流れであり、物流・金流・情報流と並ぶ流通の機能のひとつです
    • IT業界の商流は、エンド企業から元請け・二次請けへと連なる多重下請け構造を指します
    • 商流が深いほど、報酬は目減りしやすく、上流工程への関与や情報伝達にも影響が出る傾向があります
    • 2024年のフリーランス新法、2026年の取適法は、取引の透明化と適正な対価を後押しする動きです
    • 契約前のチェックと、エンド直・元請け直の案件を選ぶことで、商流を浅く保つ手がかりになります

    商流は、案件を選ぶときの新しいものさしです。単価や言語だけでなく、その仕事が「どんな商流の上にあるか」を一度のぞいてみませんか。見え方が変われば、選び方が変わります。

    Remogu(リモグ)は、株式会社LASSICが運営する、リモートワーク案件に特化したエンジニア向けのマッチングサービスです。フルリモート・シフト(移行)型・ハイブリッド型という3つの働き方から案件を選べ、専任のコーディネーターが案件選びから条件の相談まで伴走します。商流の深さや報酬の内訳に不安があるなら、まずはどんな案件があるかをのぞいてみませんか。

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    よくある質問(FAQ)

    商流と物流の違いは何ですか?

    商流は所有権や取引の流れを指し、物流はモノの物理的な移動を指します。商品の売買契約が成立して所有権が移れば商流、商品そのものが運ばれれば物流が発生します。両者は同時に進行することも、片方だけ発生することもあります。

    商流が深いと、なぜ報酬が下がりやすいのですか?

    商流に企業が介在するたびに、契約金額の一部が中間マージンとして各社の取り分になるためです。階層が増えるほど取り分が積み重なり、末端のエンジニアに届く原資は小さくなりやすくなります。

    商流を浅くするにはどうすればよいですか?

    エンド直や元請け直の案件を扱うエージェントを通じて参画する方法があります。間に入る企業が少ないほど中間コストが抑えられます。契約前に、クライアントとの距離や契約形態、報酬の内訳を確認することも有効です。

    「エンド直」とはどういう意味ですか?

    エンド直とは、システムを利用する発注元であるエンド企業と直接、または元請けを介してすぐの位置で契約・参画することを指します。間に入る企業が少ないため、商流が浅く、報酬や情報伝達の面で有利になりやすい状態です。

    出典・参考情報

    1 経済産業省「IT人材需給に関する調査 調査報告書」(2019年公表)
    2 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX動向2024」(2024年)
    3 政府広報オンライン「フリーランスが安心して働ける環境づくりのための法律、2024年11月からスタート!」
    4 政府広報オンライン「2026年1月から下請法が『取適法』に!委託取引のルールが大きく変わります」
    5 公正取引委員会「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書について」(2022年)
    6 Remogu(株式会社LASSIC運営)公式サイト
    7 日経クロステック「IT業界の摘発強化へ動く公取委、根深い中抜き・買いたたき生む多重下請けにメス」(2022年)