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    在宅勤務しやすいIT業種|公的データで読む6つの内訳

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    「もう一度、家で働ける場所に戻りたい」——そう感じているITエンジニアの方が、いま増えています。

    コロナ禍を経て出社回帰の流れが強まったといわれる一方、情報通信業のテレワーク導入率は依然94.3%(総務省・令和6年通信利用動向調査)※2。全産業平均の47.3%と比べて倍近い水準が維持されている事実は、意外と知られていません。ただし「IT業種」と一口に言っても、受託開発・自社サービス・SaaS・SIer・ITコンサル・情報通信インフラでは在宅勤務のしやすさが大きく異なります。本記事では公的統計をもとに、IT業界の内側にある6つの業種ごとの実態、必要なスキルと技術、そしてスキルレベル別の働き方まで踏み込んでいきます。

    目次

    1. 在宅勤務とIT業種——いま何が起きているのか

    IT業種の在宅勤務動向——業種別テレワーク導入率の比較を示す図解

    在宅勤務とは、ICT(情報通信技術)を活用して勤務先に出勤せず自宅で仕事を行う働き方です。国土交通省「令和6年度テレワーク人口実態調査」※1によれば、令和6年(2024年)の雇用型テレワーカー割合は24.6%。その中で、企業のテレワーク導入率は情報通信業が94.3%と突出しています※2

    ITの業務は成果物の多くがデジタルデータで完結します。ソースコード・設計書・テストレポート・ドキュメント。物理的な現場を必要としないため、通信環境が整っていればオフィスでも自宅でも生産性に大きな差は出にくい構造です。総務省「令和7年版情報通信白書」も、テレワーク導入が進む業種として情報通信業と金融・保険業の2業種を明確に挙げています※3

    業種 雇用型テレワーカー比率
    情報通信業 72.8%
    学術研究、専門・技術サービス業 54.5%
    金融業、保険業 約43%台
    全産業平均 24%前後
    宿泊業、飲食サービス業 約7%台
    医療、福祉 5.8%

    情報通信業の72.8%という数値は、医療・福祉(5.8%)と比較すると67.0ポイントの差があります。出社回帰の報道のイメージほど、情報通信業の数字は急減していないという点が重要なポイントです。

    出典:国土交通省「令和5年度テレワーク人口実態調査」※4の業種別データから抜粋。企業のテレワーク導入率(94.3%)は総務省「令和6年通信利用動向調査」※2より。

    2. IT業種は6つに分けて見る——内訳ごとの在宅勤務適合度

    総務省「日本標準産業分類」の「G 情報通信業」を実務感覚で分けると、IT業種は大きく6つに分類できます。

    📋 IT業種の6つの内訳と在宅勤務との特徴

    • SaaS・クラウドサービス事業者:プロダクト自体がインターネット経由で利用される設計のため、開発・運用も場所に依存しません。在宅勤務が「例外」ではなく「前提」になっている企業が多く存在します
    • 自社サービス(Webサービス運営):プロダクトの仕様を自社で決められるため、開発体制も比較的自由に設計できます。社内システムの開発・運用は在宅勤務と親和性が高い領域です
    • 受託開発(Web系):設計・実装・テストのすべてがクラウド環境で完結するため、物理的な出社の必要が少ない傾向があります
    • ITコンサルティング:提案フェーズではクライアント先での会議が多く、在宅勤務との両立はプロジェクト段階に依存します。要件定義以降の実行フェーズに入ると在宅勤務率が上がる傾向があります
    • 受託開発(業務系)・SIer:クライアント先の常駐を求められる案件が一定数残ります。顧客対応・本番リリース時の対応で出社が必要になる場面があります
    • 情報通信インフラ(通信キャリア・データセンター運用):ネットワーク監視や障害対応など物理的な現場対応が必要な業務が含まれるため、IT業種の中でも在宅勤務の比率は相対的に低くなります
    IT業種 在宅勤務適合度 主な制約要因
    SaaS・クラウドサービス 非常に高い ほぼなし
    自社サービス(Webサービス運営) 高い プロダクト方針に依存
    受託開発(Web系) 高い クライアントの方針に依存
    ITコンサルティング 中〜高 プロジェクト段階に依存
    受託開発(業務系) 常駐案件の有無
    SIer(大手) 顧客対応・本番対応で出社
    情報通信インフラ 中〜低 物理現場対応

    SaaS・クラウドサービスが最も高く、情報通信インフラが相対的に低い傾向にあります。なお、ここで示した適合度は業種としての一般的傾向であり、個別の企業や案件ごとの制度設計によって実態は異なります。業務委託(フリーランス)形態では、業種そのものよりも案件単位でリモート条件が決まるため、職務範囲の選び方が在宅勤務率を左右します。

    出典:編集部の独自分析。個別の企業・案件によって実態は異なります。

    3. 在宅勤務に必要なスキルと技術——3つの土台

    在宅勤務に必要な3つのスキルの土台を示す図解

    在宅勤務をこなすために必要な要素は、技術スキルだけではありません。厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」※5や総務省「テレワークセキュリティガイドライン第5版」※6を踏まえると、在宅勤務には3つの土台が求められます。

    📋 在宅勤務に必要な3つの土台

    • ① 技術スキル(職種ごとの専門スキル):経済産業省が策定・IPA管理の「ITスキル標準(ITSS)」※7では、IT領域の職種を11種類に分類し専門スキルが体系化されています。在宅勤務案件ではクラウドサービスの利用が前提となるケースが多く、クラウドネイティブな技術選択が広がっています
    • ② コミュニケーション・自己管理スキル:非同期コミュニケーション能力(Slack・Teams等でのテキスト伝達)・ドキュメント化能力(Confluence・Notion・Markdownでの仕様共有)・自己管理能力(勤務時間・タスク優先度・集中時間の確保)の3要素が必要です。技術力と同等以上に「書く力」「読み解く力」が在宅勤務の成果を左右します
    • ③ セキュリティ知識:総務省「テレワークセキュリティガイドライン第5版」※6が示す通り、多要素認証(MFA)の設定・端末の暗号化・VPN/ゼロトラストの理解・公共Wi-Fiリスクの認識・機密情報の取り扱いルールが求められます
    職種 在宅勤務で頻出する技術要素
    アプリケーションエンジニア(Web系) JavaScript/TypeScript・React・Vue・Next.js・Node.js・Ruby on Rails等
    バックエンドエンジニア Java・Go・Python・PHP・SQL・API設計
    インフラ・SREエンジニア AWS/GCP/Azure・Docker・Kubernetes・Terraform
    データエンジニア・データサイエンティスト SQL・Python・BigQuery・dbt・機械学習基盤
    QA・テストエンジニア テスト自動化(Selenium・Playwright等)・CI/CD
    プロジェクトマネージャー プロジェクト管理ツール(Jira・Asana等)・進捗・課題管理

    出典:ITスキル標準(ITSS)※7の職種分類を参考に、在宅勤務との親和性が高い職種で頻出する技術要素を編集部が整理。技術は流動的に変化するため、ここに示した技術はあくまで代表例です。

    4. スキルレベル別の働き方——初級からエキスパートまで

    🟢 初級(経験1年未満/ITSSレベル1〜2相当)

    在宅勤務の現実:ハイブリッドが基本(出社2〜3日/在宅2〜3日)

    先輩エンジニアの指導のもとでコードレビューを受けながら開発・テスト・ドキュメント整備等を担当。完全在宅は推奨されにくい段階です。対面でしか伝わりにくい暗黙知の吸収機会がキャリア初期に特に重要なためです。磨くこと:基本的なプログラミング言語・Git操作・テストの書き方・質問の仕方

    🔵 中級(経験1〜3年/ITSSレベル3相当)

    在宅勤務の現実:週3〜5日の在宅勤務が選択肢に入る

    要件定義の一部・設計・実装・テスト・運用を一通り担当。チームへの貢献が安定してきたタイミングで、フルリモート案件への参画も検討可能です。経験年数3年は業務委託案件の選択肢が広がる目安です。磨くこと:設計力・コードレビューの質・非同期コミュニケーション・業務領域の理解

    🟡 上級(経験3〜5年/ITSSレベル4相当)

    在宅勤務の現実:フルリモート可の案件・企業を選びやすい

    チームリード・設計の主担当・技術選定・後進育成を担当。フルリモート前提のSaaS企業・Web系受託開発企業・業務委託案件のいずれも現実的な選択肢です。このレベルから「どこで働きたいか」から仕事を選べる段階に入ります。磨くこと:アーキテクチャ設計力・ステークホルダーマネジメント・リモート環境でのチームビルディング

    🔴 エキスパート(経験5年以上/ITSSレベル5〜7相当)

    在宅勤務の現実:完全フルリモート・地方移住・海外居住も視野

    技術戦略の策定・複数プロジェクトの統括・組織横断の技術課題解決。場所の制約はほぼ消えます。海外拠点との時差調整がむしろ主要課題です。磨くこと:事業との接続力・技術発信力・組織への影響力・後進育成のスケール

    レベル 経験年数の目安 ITSS相当 在宅勤務の現実 案件参画の選択肢
    初級 1年未満 レベル1〜2 ハイブリッドが基本 主に正社員・研修中心
    中級 1〜3年 レベル3 週3〜5日在宅も可能 正社員+業務委託の検討開始
    上級 3〜5年 レベル4 フルリモート選択可 正社員・業務委託のいずれも現実的
    エキスパート 5年以上 レベル5〜7 場所の制約はほぼ消える 業務委託・複数案件並走も視野

    注目すべきは、「在宅勤務の自由度」と「スキルレベル」が相関している点です。スキルが上がるほど、勤務形態の選択肢が広がる構造になっています。

    出典:経済産業省策定・IPA管理「ITスキル標準(ITSS)」※7のレベル定義を参考に編集部が整理。経験年数とITSSレベルの対応は一般的な目安であり、個人のスキル習熟度によって前後します。

    5. 雇用形態が在宅勤務率を左右する——正社員と業務委託の違い

    総務省「令和6年通信利用動向調査」※2によれば、従業者規模2,000人以上の企業ではテレワーク導入率82.1%と高い水準です。一方、業務委託(フリーランス)という選択肢もあります。国土交通省「令和6年度テレワーク人口実態調査」※1では、自営型テレワーカーの比率が27.9%と、雇用型の24.6%を上回っています。フリーランス・業務委託の働き方は、もともとリモートとの親和性が高いことを示すデータです。

    業務委託の場合、所属企業ではなく案件単位でリモート条件が決まります。同じIT業種でも、案件ごとに「フルリモート」「ハイブリッド」「常駐」の選択肢を比較できる点が、雇用型との大きな違いです。

    6. 在宅勤務をIT業種で実現する——3つのアプローチ

    IT業種で在宅勤務を実現する3つのアプローチを示す図
    アプローチ リモート実現の確実性 移行コスト 報酬水準の変動
    現職での制度活用 制度次第 低い 変動なし
    在宅対応のIT業種へ転職 高い 中程度 変動あり
    業務委託として案件参画 案件次第で非常に高い 中〜高 経験スキル次第で上昇余地あり

    現職の制度活用が最も移行コストが低い一方、リモート実現の確実性は所属企業の制度設計に依存します。業務委託への切り替えは移行コストが伴うものの、案件単位で条件を選べる点では在宅勤務の確実性という観点で最も柔軟性が高い選択肢です。いずれのアプローチも個別の状況によって最適解は異なります。経験年数・スキルセット・家庭環境・地域などの要素を踏まえて選び取ることが大切です。

    出典:編集部整理。

    7. まとめ

    「IT業種だから在宅勤務できる」という大づかみな理解から、「IT業種のどこで、どのスキルレベルで、どの形態で、どの程度の在宅勤務が可能か」という解像度に進むことで、自分の選択肢がはっきり見えてきます。

    📋 この記事のポイント

    • 情報通信業のテレワーク導入率は94.3%(総務省・令和6年通信利用動向調査)と、全産業平均47.3%の約2倍に達します※2
    • IT業種は6つの内訳に分けて見る必要があり、SaaS・クラウドサービス、自社サービス、Web系受託開発が在宅勤務適合度の高い業種です
    • 在宅勤務には技術スキル・非技術スキル・セキュリティ知識という3つの土台が必要です
    • スキルレベルが上がるほど在宅勤務の自由度が広がる構造です。ITSSのレベル3を超えると、フルリモートの選択肢が現実的になります※7
    • 自営型テレワーカー比率(27.9%)は雇用型(24.6%)を上回っており、業務委託は在宅勤務との親和性が高い形態です※1

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    8. よくある質問(FAQ)

    Q1. 在宅勤務がしやすいIT業種は具体的にどこですか?

    総務省「令和6年通信利用動向調査」※2では情報通信業のテレワーク導入率が94.3%と最も高い数値です。IT業界の内訳では、SaaS・クラウドサービス、自社サービス、Web系受託開発が在宅勤務適合度の高い業種として挙げられます。

    Q2. 在宅勤務に必要なスキルは何ですか?

    3つの土台があります。①職種ごとの技術スキル(ITスキル標準/ITSSで定義された専門分野の能力)※7、②コミュニケーション・自己管理スキル(非同期での意思疎通、テキスト中心の業務遂行)、③セキュリティ知識(総務省「テレワークセキュリティガイドライン第5版」が示す対策の理解)※6です。

    Q3. 経験年数が少ない段階でも在宅勤務は可能ですか?

    可能ではありますが、キャリア初期はハイブリッド勤務が一般的です。ITSSSのレベル1〜2相当に位置づけられる段階では、対面での暗黙知吸収が成長に大きく寄与します。経験年数3年程度を経てから、フルリモートの選択肢が広がる傾向にあります。

    Q4. 業務委託(フリーランス)と正社員、どちらが在宅勤務しやすいですか?

    国土交通省「令和6年度テレワーク人口実態調査」※1では、自営型テレワーカー比率27.9%、雇用型テレワーカー比率24.6%です。業務委託の方が在宅勤務との親和性は高い傾向にあります。案件単位でリモート条件を選べる点も、業務委託形態の特徴です。

    Q5. 出社回帰の流れは在宅勤務に影響していますか?

    国土交通省「令和6年度テレワーク人口実態調査」※1は、コロナ禍からのより戻しが見られるものの、全国平均では従前よりは高い水準にあり、定着傾向にあると分析しています。週1〜4日テレワーク(ハイブリッドワーク)が定着しているとされ、完全な100%出社への回帰ではない実態が読み取れます。

    出典・参考情報

    ※1 国土交通省「令和6年度テレワーク人口実態調査」(2025年3月公表)
    ※2 総務省「令和6年通信利用動向調査」(2025年5月公表)
    ※3 総務省「令和7年版 情報通信白書」(2025年公表)
    ※4 国土交通省「令和5年度テレワーク人口実態調査」(2024年3月公表)
    ※5 厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」
    ※6 総務省「テレワークセキュリティガイドライン 第5版」(2021年5月公表)
    ※7 経済産業省策定・独立行政法人情報処理推進機構(IPA)管理「ITスキル標準(ITSS)」